【野良山伏 連載】第11回 ヘビの食べ方

坂本大三郎です。山形の出羽三山を拠点にしている山伏です。でも生まれも育ちも千葉県で、とくに先祖が山伏であったというわけではありません。そのあたりの詳しいことはおいおい触れさせていただきたいと思っていますが、僕が山形で暮らすようになったのは、山形に残っている山伏の文化や狩猟採集文化など、自然の中で生きる知恵や技術を学びたいと思ったからでした。山伏になっておよそ10年。この連載では、そんな山暮らしで得た知恵や技術のいくつかを紹介して行こうと思います。

Credit: Yohta Kataoka

ヘビといえば気持ち悪いとか怖いという、悪いイメージを持っている人が少なくないと思います。普段はどんな崖でも平気で登っていってしまうような、熊のような知り合いの山男も、山でヘビを見つけると「きゃあ」と甲高い声を出して怖がります。その少女チックな驚きように僕の方が驚く思いですが、ヘビを怖がる心は人類がまだ猿だった時代にヘビが天敵だったため、恐怖心が本能に刷り込まれたのだという説を聞いたことがあります。

ヘビを怖がる心が本能によるものなのかは古くから議論されていますが、専門家ではない僕には判断はつきません。ただ、ヘビと人との関わりはとても古い時代から続き、世界各地で畏れと崇拝の対象となり、日本列島の文化の中でも土器などにヘビのモチーフが見られることから、縄文時代には聖なる存在として認識されていたのだと推測することができます。

出羽三山周辺ではかなりの頻度でヘビと出会います。ヘビは湿気が多くて温かい場所が大好きなので、温泉に行って、露天風呂の周辺を探してみれば、高確率で茂みや物陰にヘビを見つけることができます。冬は冬眠しているので見かけませんが、暖かい時期には活発に活動して、道路で轢かれていることもあります。

これまでの連載でも書いてきましたが、僕は獣が轢かれていたら、とりあえずピックアップしたくなるので、当然ヘビも持って帰り、新鮮であれば食用にします。

ヘビのさばき方は意外と簡単で、首を一周するように刃物で切れ込みを入れ、そのまま力をいれて皮を尻尾の方に引っ張れば、ツツーっと皮が剥がれます。皮を剥いで内臓を取り出せば、あとは骨と肉だけになります。

ヘビはとても小骨が多い生き物で、丁寧に骨から肉を分離しようとするとかなり手間がかかります。以前、そうやって取り分けた肉を焼いて、塩コショウで味付けして食べたことがありましたが、焼き鳥のような風味で美味しかったです。でもすごく面倒だったので、もうやりたくないと思いました。

知り合いの猟師から教えてもらった食べ方は、皮を剥いで内臓を取ったら、トンカチで肉と骨を細かく潰して、味噌と混ぜて焼く方法です。小骨が気にならないくらい叩き潰すのも面倒な作業でしたが、ヘビと味噌の相性は抜群で、とても美味しかったです。

また、ヘビの皮も何かに利用できないかと思って、保管してあるのですが、個人的にヘビ柄があまり好きではないので、うまく活用できずにいます。そしてヘビ皮は処理するときにきちんと滑りを取って乾燥させなければ、衝撃的に臭くなるので注意が必要です。

僕がよく見かけるヘビの種類はアオダイショウやシマヘビが多く、稀にマムシやヤマカガシがあらわれます。

マムシは精力剤としてよく知られており、干物にしたり黒焼きにしたり焼酎に漬け込んだり重宝されますが、古くはシマヘビの方が漢方や民間薬としてありがたがられる時代があったのだそうです。マムシに比べシマヘビは毒もなく地味なタイプなので、そんなところが個人的には哀愁を感じるところです。

余談ですが、ヘビとの関わりということでは、今年の夏に山で1メートル以上ある大きなヘビの抜け殻を見つけました。参拝者を山案内しているときに月山から湯殿山へ続く登山道脇の草薮の中で、体を草に引っ掛けて脱皮したものに気がついたのでした。20年ほど前に、好きな漫画家の楳図かずおさんの展覧会に行った際、宝物としてヘビの抜け殻が展示されており、僕もいつか大きな抜け殻を見つけてみたいものだと思っていたので、20年越しの願いが叶った嬉しい出来事でした。

Illustration: Daizaburo Sakamoto

Credit: Yohta Kataoka

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