Credit : NASA, ESA and the Hubble Heritage Team (STScI/AURA)

目に見えないレアなレーザーを放つアリ星雲…ハーシェル宇宙望遠鏡により発見

「アリ星雲」こと惑星状星雲Mz 3は、丸みを帯びた明るい塊、そして両側に伸びた線の様子が昆虫のアリのように見えるためこの愛称を持つ。このアリ星雲がESAのハーシェル宇宙望遠鏡で観測されたところ、このアリは目に見えないレーザーを放っていることが判明した。

 

アリの放つ目に見えないレーザー

1920年代にアメリカの天文学者ドナルド・メンゼルにより発見されたMz 3(これも彼の名字メンゼル/Menzelからとられており、Mz 3はMenzel 3の略だ)。我々の太陽程度の質量を持つ恒星がその寿命を終えるときに、密度が高い白色矮星となる。この過程で外層のガスや塵が吹き飛ばされ、これがこのような美しい惑星状星雲となる。

これをハーシェル宇宙望遠鏡の持つ幅広く高感度な波長センサーで観測し、惑星状星雲のガスと塵の構成要素を探ろうとした天文学者たちは、意外なものを発見した。これまでのハッブル宇宙望遠鏡などでの可視光画像では見られなかったレーザー放出だ。このような放射が見られるのは希であり、このアリ星雲にはまだまだ何かが隠れているようだ。

その珍しいレーザー放出は「水素再結合線レーザー放射」(hydrogen recombination line laser emission)というもの。とても希なタイプの放射であり、一般的な惑星状星雲のもつガスの1万倍の密度という、密度がとても高いガスが恒星の近くになければできないものだ。

 

隠れた連星

Credit: ESA

しかし通常死ぬ恒星はその素材を外向きに放出するため、その近くにはほぼ何も無い状態だ。それでも恒星の近くにガスがある状態が唯一可能なのは、ガスがディスク状に恒星を周回する場合のみ。そしてこの高密度のガスのディスクもアリ星雲で観察されている。ディスクはほぼ真横になっており、この角度がレーザー信号を増幅する助けになっているようだ。

しかし放出されたガスが軌道に乗るのも難しい。これを説明するには、白色矮星に連星があると考えられる。そうであれば、連星が放出されたガスを正しい方向へと偏向することができるのだ。この存在が仮定される連星は未だに見つかってはいないが、死にゆく恒星から質量が惑星状星雲の白色矮星に捉えられてディスクを形成し、そこからレーザーが生まれていると考えられる。

化学兵器を使うアリ自爆するアリは聞いたことがあるが、まさかレーザーを放つアリまで居るとは…なんて冗談はさておき、アリ星雲の美しい姿、そして目に見えない希有なレーザーは、連星の複雑な要素が絡み合ってできているようだ。なお、ハーシェル宇宙望遠鏡による今回の観測結果はRoyal Astronomical Societyに5月16日に発表されている。

RELATED POST