ニュージーランド・オークランド西部の森で、ゾンビのように死ぬことがないカウリ木が発見された。この木は植物が生きる上で必要となる葉を持っていないにも関わらず、枯れることはないのだという。
これは、7月25日、オークランド工科大学の研究チームがiScienceに発表した研究で明らかにされたもの。研究を主導する准教授セバスチャン・レウジンガーは、ハイキング中に同僚のマーティン・ベイダーとともにこの奇妙なカウリの木を発見したという。

カウリの木(Agathis australis)は、世界でもニュージーランドの一部の地域でしか見ることができない希少な木だ。現在確認されている最も大きな個体は樹齢2500年にもなると言われ、先住民のマオリ族の間では森の神とされている。また、カウリは、恐竜が生きていた約1億5千万年前から生き残ってきた種でもある。
今回発見された個体は、根から上の大部分を失いながらも、決して枯れることがない状態だった。本来、木は光合成を行うための葉を持たなければ枯れてしまうのだが、この木は通常とは異なる何らかの方法によって生き続けているのではないかとレウジンガーらは推測した。

研究の結果、この枯れないカウリの木は、周囲の木から養分を得て生かされていることが判明した。近くの同種の木から養分を交換可能とする根接ぎの状態となっていただ。根接ぎしていたのは同じカウリの木ではあったが、遺伝子的に異なった個体同士なのだという。
レウジンガーによると、これは個々の木としてではなく、この森林生態系自体が「超個体」に変異しているといえるのだという。超個体とは、一つの個体のように見えるが、実際は多数の個体から形成されている生物の集団だ。よく知られるのが、集団でありながら個体のような生き方をしている蟻であろう。
この発見は、これまでの森林生態系の認識を覆すものになるかもしれないとレウジンガーは語っている。