アリエナクナイ科学ノ教科書:第28回 フィクションのためのネットリテラシー

もはや水道や電気と同じくらいに当たり前になったネット環境。
今やLINEやFacebook、TwitterなどのSNSを使わない人の方が少ないくらいになっていますね。

恋愛ドラマでもLINEでのやりとりが描かれるようになって久しいですし、漫画の中でもSNS内のいじめやYouTubeでのバズりなどがトピックとして描かれるようになって、学校の連絡網さえSNSで伝えられるのが当たり前になりつつあります。

そんな当たり前すぎるネットワークも、そのサービスがどこからきて、どうやって使われているのか、携帯という無線デバイスだとより「ネットはどこからきてるの?」というのを意識しなくなりました。
自分の家の水道の水、コンセントに来ている電気もどこから来てるのか誰も調べないのと同じで、便利になった反面、そうした描写をフィクションで行う際に、あまりに当たり前なので、未開のジャングルから生放送したり、無人島でGoogle Mapsを開く・・・文明崩壊後の世界なのに携帯で連絡みたいな描写を行ってしまうかもしれません。
もちろんちゃんとした理由があれば、そうした描写も間違いではないのですが、そうした携帯から始まるネットが一体どこからきて、どこにつながっているのか? そもそもインターネットってなんなんじゃ? というネットワーク系の超基礎おさらいをしておこうと思います。

ハッキングに関しては以前の記事とリンクするところもあるので、併せて読むと理解が深まるかもしれません。
>>アリエナクナイ科学ノ教科書:第7回 HACK! HACK! ハッカーって何やってるの?

●スマホからインターネットまでのデータの旅

まずスマホの電波について知っておきましょう。
電波というのはラジオと同じで空中を伝わってくる電磁波です。
電磁波・・・というと謎な感じを受ける人もいるかもしれませんが、光です。光のうち人間が見ることができるのが400~800nmという波の大きさの差によるもので、(紫 青 緑 緑 黄 橙 赤)みたいに虹がでているときに我々人間が認識できる色の領域なだけ。
紫より小さい波長を紫外線(さらに小さい波長がガンマ線やX線)、赤より長い波長を赤外線(1〜10μmがヒーターとか調理に使われる赤外線)そして波長が1mmとか肉眼サイズの波(もちろん人間の目には見えないのですが)なってくると電波と呼ばれる波長になります。この辺は「アリエナイ理科ノ教科書」でも説明した通りです。

電磁波は距離の2乗に比例して減衰する性質がある。ようするに電球の1センチ横と2センチ横では明るさ半分ではなく1/4、3センチでは1/8と減衰していきます。なので電波塔は目に見えないだけでかなり強力な電波を出しており、およそ数kmくらいは届く計算になっています。しかし携帯からも電波を出して電波塔と交信しなくては通話もデータ通信もできませんから低速通信でも2km程度しか届きません。また電波は金属やコンクリートなどの堅いモノには反射してしまう(ガラスなどは光と同じように通過する)他、他の電波と干渉して精度が落ちるとかで実際には町中の至る所に電波塔がたっています。
これが携帯電話のインフラ施設であり、その電気代や設備維持費、新しいアンテナを立てる費用なんかにみんなの携帯代が使われているということです。

では電車とか新幹線で移動中もどうして通話や通信ができるのかというと、交換機同士が次に今使ってるやつがそっちにいくのでよろしく・・とアンテナ同士は有線でつながっているので、その情報を伝えることで、リレー方式で担当アンテナが変わっていくので通信できているというわけです。

故に、電波の入りにくい山なんかに行くと携帯は近くの電波塔を探すために最大出力になります。そうなると電池の消耗がめっちゃ激しいので、携帯の通じない山に行く人は電源を切っておいたほうがいいわけです。また災害時などもアンテナが大きく被害をうけるので生きてるアンテナが激減するので、アンテナの電波強度が低い(アンテナ本数が少ない)ときはこまめに電源オフにする方が長く使える可能性大です。

ちなみにラジオが災害に強いのはこの電波が届く距離が長いからで、また夜になると電離層に反射してとんでもない長距離を飛ぶ上に、受信側は非常に少ないエネルギーで聞くことができるという利点があるからです。じゃあラジオの電波で携帯を作れば良いじゃん・・・って思いそうですが、それだと通信速度がゴミすぎて何も出来ない上に大量の発信には向いていないなど、周波数ごとの用途にあった使い道があるわけです。

●わたしのスマホで動画をみるという遙かなる旅

作図:Kjerstin Körberg(https://kjerstinworks.net/)

この図を見てください。
ISPというのはプロバイダのことです。緑の四角はサーバーなどのネットサービスだと考えてください。それぞれをつないでいくととんでもなく見にくいのでイメージ的にこんな感じですという雰囲気です。

携帯、スマートフォンから見るネットというのは携帯という無線デバイスからのスタートしているのでなおさらネットという世界がわかりにくいですが、なんのことはないバキバキの有線で構成されている広大なインターネットという世界に、近くの携帯キャリアのアンテナから繋がっているということを説明しました。

じゃあその いんたぁねっと はどこで何をどうやってデータのやりとりをしてるのでしょう?

インターネットというのは多くのサーバーやデータセンターなどが相互に複雑に繋がっており、1カ所が停電や事故があったとしても、別の経路でデータを転送することで、データを迂回して取り出すことができるシステムです。それが果てしなく遠くても・・・現在の光通信ではかなりのデータの光速やりとりが可能なわけです。

例えば夕食後のんびりとソファでくつろぎながらYouTubeでお気に入りの動画を見ているとしましょう。

携帯キャリアからの通信だと、家の近くに立っているアンテナと通信をしてそこから有線でNTTとかが全国に敷設したネットワークに接続。

家に無線LANがある家なら無線LANからルーター、モデム・・・ここまでが家の中にあり、あとは電線を伝ってNTTとかが全国に敷設したネットワークに接続。

この全国に敷設したネットワークに接続・・・まずはプロバイダにつながります、これはだいたい2次プロバイダーと呼ばれるもので、みんなのアカウントを管理して、コイツがこのIPでこのデータが欲しいと言ってますよ!と次に伝える係です。アカウントと住所も紐付けで管理しているので悪事を働くと、警察がここに「このIPは誰じゃ!」と怒鳴り込んで行って「コイツっす」と言われてと逮捕されるわけです。

2次プロバイダは他の2次プロバイダーなどと繋がっており、それぞれのプロバイダーにサービスを提供するサーバーにつながっています。サーバーといっても個人が立てたチャットサーバ、ゲーム用サーバ、もしくは国内だとニコニコ動画やZOZOTOWNやメルカリといった大型サービスを行っているサーバーなどにそれぞれつながっています。国内で動画をみたり買い物をする場合はだいたい国内通話で終わってるわけです。
図でいうところの緑の四角がこれにあたります。

しかしこれではまだアメリカ、ノースカロライナ州にあるデータセンターにあるといわれているYouTubeの動画はみれません。そして2次プロバイダーを束ねる形で1次プロバイダーというものがあり、そこを経由してIX(インターネットエクスチェンジ)に繋がります。

IXはいわば国内のインターネットの根幹施設で、日本には数カ所〜10カ所程度あると言われています。ここからバキバキの極太海底ケーブルで海外のIXに繋がっています。アメリカに行くには太平洋の海底にケーブルが何本も張り巡らされていて世界中をつないでいます。最初の海底ケーブルは1851年、英仏海峡に敷設されたものが始まりで、今や世界中の海底に繋がっています。IX同士が繋がり合ってDNSという住民台帳みたいなものを共有しネットの住所を共有しています。例えば、本来はIPアドレスという数字の羅列だと使いにくい、わかりにくいのでDNSというところで共有し「discoverychannel.jp」という文字はここの番地(IP)だよと場所を伝えているわけです。

そして例えば貴方のスマホからプロバイダ、そしてIXと行き、ついに貴方の「動画みたい」信号は海を渡り、アメリカのIXに入ります。アメリカのIXからはまた逆の1次プロバイダー、2次プロバイダー、そしてサーバーという形でようやくノースカロライナ州にあるデータセンターにたどり着き、そこにうずたかく積み上げられたサーバールームのハードディスクがカリカリと読み出され保管された動画データが、また遙か彼方の貴方のスマホまで逆走して届けられる・・・・YouTubeで動画をみるだけにも実はこれだけのロマンの旅があるのです。

(実際のところは人気の動画は国内のサーバがキャッシュしてるとか、インチキはいっぱいありますが(笑))

逆に言えば、IXは日本の国内ネットと海外のネット、インターネットという存在そのもの。
国内のネットの根幹であり、複数から出ているといっても、非常に数は少ないので、ここが例えばテロなどで同時に落とされると日本のネットは海外と途絶します。

もちろん衛星回線という最後の頼みの綱もありますが、衛星回線はもっと根幹部分がよわいので、IXを全部落とすことが出来る組織がいたら造作もなく落とされるでしょう(笑)。
そうすれば日本はインターネットという世界で鎖国が完成します。

まぁそれで何が起こるのか? 意味はあるのか? というところがフィクション作品の面白くしどころではないでしょうか・・・ということで丸投げします(笑)

くられ

*Discovery認定コントリビューター

サイエンスライター、Youtuber、大学講師第など幅広く活躍。「アリエナクナイ科学ノ教科書」(ソシム)日本SF大会主催 49回 星雲賞ノンフィクションを受賞。近著は化学の生化学の入門を楽しいキャラで学べる「毒物ずかん」(化学同人)、アリエナイ理科ノ大事典(三才ブックス)薬理凶室名義 などがある。現在週刊少年ジャンプ連載中の「Dr.STONE」では科学監修を務める。

https://www.cl20.jp/portal/

タイトルイラスト:夢路キリコ https://www.yumejikiriko.com//