たくさんの小さな穴にゾッとするのはナゼ?謎の不安感「トライポフォビア」の正体

「トライポフォビア」とは、不規則かつ密集した穴や近い形状に対する恐怖症のことだ。

たとえば蓮の実や蜂の巣といった穴が集合した形状のものを見た時に、ゾッとする感覚をおぼえたことはないだろうか。

こういった症状は正式には病気に分類されてはいないが、調査データでは、最大で10%の人が不安な感情に陥ったり、吐き気やゾッとする感覚を経験しているという。

一体、この感覚の正体は何なのだろうか。

トライポフォビアという名称は、2005年にオンラインフォーラムに投稿された造語であるが、命名者は不明とされる。だが、2005年よりも以前からこういった心理状態はあったと研究者たちは説明している。

Credit: Creative Commons

英国立エセックス大学の心理学者であるアーノルド・ウィルキンズ氏は、人は自分を傷つける可能性があるものを本能的に避ける傾向があり、それが作用しているのではないかという。Psychological Scienceに掲載された、ウィルキンズらによるトライポフォビアに関する論文では、症状を誘発する画像と、有毒動物の類似性を指摘している。トライポフォビアを抱くものと同様の形状やコントラストを持つ有毒動物が存在することから、人が進化の段階で得た有毒動物への危機回避能力なのではないかと推測した。

だが、2018年にCognition and Emotionに発表された研究では、有毒動物への反応ではなく、伝染病を回避する反応ではないかとしている。穴の集合体のような形状は、天然痘の感染などによって皮膚に現れる膿疱に似ているからだ。論文では、人の進化の中で、感染症を持つ者を避ける能力が進化的優位を与えていたのではないかとしている。

この研究者たちはトライポフォビアを引き起こす画像に関し、多くの人が「恐怖」ではなく「嫌悪感」を引き起こしていることを指摘。例えば毒ヘビと出会った場合、人は交感神経系による「戦うか逃げるか反応」に移行し、「恐怖」という感情が生まれる。一方で、病気や腐敗している食べ物を見た際は、副交感神経系の作用によって「嫌悪感」を引き起こすのである。

どちらの説もまだまだ研究を重ねないと答えはでないようだ。どちらにしろ、あのゾッとする感覚は、人が進化の段階で手に入れた危険回避能力であることは間違いなさそうだ。