「悪夢」を回避する方法とは…現実が影響する怖い夢の正体

睡眠中、本人の意思とは無関係にみてしまう恐ろしい夢「悪夢」。

悪夢は、その恐怖心で目を覚ましてしまったり、しばらく寝れなくなってしまうなど、生活に支障をきたしてしまう場合もある厄介なものだ。

最も身近な恐怖体験とも言える「悪夢」だが、なぜ人は睡眠中にみてしまうのだろうか。悪夢が生まれるメカニズムと、回避する方法を紹介しよう。

 

悪夢のメカニズム

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悪夢は、脳が覚醒する準備段階で発現しやすいとされる夢だ。この状態の脳は、記憶と記憶の統合を行なっているため、悪夢の映像を鮮明に記憶してしまうことも少なくない。

ハーバード大学医学大学院の心理学研究者、ディアドラ・バレット(Deirdre Barrett)は、「悪夢」は、人間が進化する過程で危険回避のために手に入れた能力だと説明する。かつて、悪夢は潜在的な危険性、つまり野生動物や他の部族からの襲撃の予測や警戒に役立っていたとみられている。

現在は、3歳から6歳の子供が特に悪夢をみやすいのだそうだ。大人よりも脅威に多く晒される子供の脆弱性が、部分的に反映されていることが理由とされる。

だが、現在社会における人間には、この進化の過程で手に入れた「悪夢」という危険回避能力はあまり役に立たなくなっているとバレットは指摘する。大昔の野生動物などの危険性に比べ、火事や交通事故、強盗といった危険性は、野獣の襲撃のように定期的に繰り返されるものではないからだ。本来は環境に適応するためのメカニズムだった悪夢だが、現在はうまく機能していない状態となっている。

 

症状としての悪夢

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心的外傷後ストレス障害(PTSD)を持つ患者は、より頻繁に悪夢をみることがわかっている。アメリカでは、悪夢をどれだけみるかがPTSDの診断の基準の1つとされている。

PTSDの患者が見る夢は通常の悪夢とは異なり、自分のトラウマとなった出来事を正確に再現するような内容が多いのだそうだ。こういった症状は、本来は、潜在的な脅威の特定や恐怖を感じることに関わる、脳の奥深くにある領域が過剰に活動してしまっていることが原因だとみられている。

また、「悪夢」と混同されがちである、3歳〜6歳までの児童が夜中に恐怖によってパニックを起こしてしまう「夜驚症」は睡眠障害となる。

夜驚症は、睡眠が始まって2~3時間後に始まる睡眠段階から別の睡眠段階へ移行する際に起こる反応。部分的覚醒状態で引き起こされるため、恐怖で叫んだり激しく体を動かしたりするが、本人が自覚していないことも多いとされる。

 

悪夢を回避する方法

同じ悪夢に悩まされる場合は、別の結末を常に想像しておくことで「恐怖」から回避できることがあるとバレットは説明する。

人によって、襲ってくる何かを撃退することで安心することもあれば、他の人に助けられることで安心する人もいる。他にも、現実的な解決策を望む人もいれば、比喩的な解決策の方がより安心できる場合もある。

そういった、自分が安心できる結末を思いついたら、目が覚めている間と就寝時にイメージしておくことで、実際の夢の中でも同様のシチュエーションを招くことができるとされる。夢の中の惨事を回避することで、悪夢では無い普通の夢に変えてしまうというわけだ。

 

文化の中の悪夢

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ネイティブアメリカンの文化では、重大な判断を夢や悪夢に頼る場合がある。研究では、スリナムの先住民族とオーストラリアの先住民族がみる悪夢は、生活の中で経験したことや、予期していた重要な出来事としばしば相関関係があることが分かっており、悪夢に判断を託す行動は、単純な迷信ではないことが示唆されている。

悪夢は通常の睡眠の一部であり、その頻度は人によって異なっている。短期間に悪夢を多くみるのは悪い兆候であるように感じるかもしれないが、豊かな経験が反映されているとも言えそうだ。

 

悪夢とは向き合う必要がある

自分がみている悪夢の本当の意味を理解することも大事であるとバレットは語る。悪夢の内容を理解することは、日頃の悩みの原因を探る助けにもなるからだ。

また、頻繁な悪夢は、睡眠不足など生活に支障をきたす場合もあるため、状況によっては医師に相談し、適切な治療を受けた方が良いと説明している。