アリエナクナイ科学ノ教科書:第26回 人類絶滅! 絶滅までの科学的シュミレーション

人類大絶滅。サイエンスフィクションにおいて、ドカーンと派手なだけのゾンビものから、ウイルスパニックもの、または全滅からの文明復興、映像美と感動を送る巨編など、低予算から大予算まで、我らが世界は定期的にフィクションの世界で滅んでいますが、こうした大変動は人類史に及ばず、定期的に地球に訪れてます。そういうわけで、都合良く少ない人類で世界観をリスタートしたい、未曾有の危機に相対するヒーローを描きたいなどなどの理由で多く使われる大絶滅(大量絶滅)についてまとめておきます。

●人類絶滅の原因

とりあえずざっくり人類を絶滅間近にしておきたければ、そのフィクション上の世界線に則ったものであれば何でも良いという雑な解説になってしまうのですが、大きく分けて3つくらいの絶滅理由があります。

1)天災
滅亡のシンボリックでもある、隕石、彗星衝突などの他、地球規模の地震や火山活動、地球温暖化や海面上昇、人類というより生命全体が死滅する感じの災害が起こったことで人類は絶滅に瀕するものに該当します。

まず、隕石の衝突。現代の科学力では地球人類が全員で一致団結してがんばっても、おそらくすでに落ちてくるである破滅的隕石を発見後、できることはありません。仮に6600万年前恐竜絶滅の引き金になったといわれているチクシュルーブ小惑星は直径15km程度だと最低でも、人類が今まで生み出した最大級の核兵器、ツァーリボンバをもってしても、そのエネルギー差は数十万~300万倍以上となるので、アクセル全開の暴走車に角砂糖をぶつけて軌道修正しようとするようなものです。つまり効きません。
逆に核兵器が通用するクラスの隕石なら落ちても人類絶滅・・・とまではいかないと言えます(それでも相当凄いことになるので、実際問題ナシとはいえませんが、その場合、隕石のサイズが小さすぎて対応可能なのか謎です、実際に2013年チェリャビンスク州の隕石落下はあの凄まじい威力でさえ、直径はたった数m~十数mの範囲なので隕石というもののエネルギーは人類の規格を基本的に超えています。

実際問題核兵器で倒せる隕石だとすると直径1~2km以下、ツァーリ・ボンバ級の核兵器を地中深くに埋め込み起爆することで入射角度をかえたり、数個に分割する・・・としても、それでも圧倒的エネルギー不足な感じが否めません。対消滅を狙うレベルだと直径200m程度の隕石となります。
ちなみに映画「アルマゲドン」では直径1000kmの隕石という設定ですが、なんかもうエネルギー差では、アクセル全開のプ●ウスに砂粒をぶつけるようなもので、人類の科学力ではリアルにすればするほど倒しようが無い・・・といえます(笑)。ちなみに太陽系内に地球に衝突する可能性のある小惑星は100万個以上あり、わりと結構な頻度でギリギリかすめているので、落ちてくる確率は運のようなものなので、そういう意味での説得力は問題ありません。

宇宙からくる終焉は隕石だけではなく、これまた極めて希な現象としてガンマ線バーストを受けてしまう場合です。寿命を終えた太陽ような恒星(実際、太陽よりでかい太陽のような恒星は山のようにある)が一生を終える時に極超新星爆発という現象を引き起こし、その際に中心部がブラックホール化し、ブラックホールからあらゆる原子がすり潰されたときに生じたとんでもない量の放射線がビーム的に放出される現象で、このビームが地球を近くで直撃すればもはや蒸発、かすっただけでも地球上の生物がレントゲンを数千兆回浴びてもまだ足りないくらいの凄まじい放射線でDNAは消し飛び死滅するレベルといわれています。
そんなことがそうそうあるわけが無い・・・と思いきや、約4億5千万年前、シルル紀末の大量絶滅の原因はガンマ線バーストによって引き起こされたことを示唆する研究結果がでています(2005年、NASA )。

現在オリオン座α星であるベテルギウスが数年前より、超新星爆発が観測できるのではないかと言われています。642.5光年離れているので、我々が見ているのは642年前の光なので実際はすでに爆発してなくなっているでしょう。ちなみにガンマ線バーストのレンジには地球は入っていないようですが、何が起こるかは確実には言えないようです。
ちなみに爆発時はめちゃめちゃ明るい星にみえるらしく、月が1つ増えるレベルで明るくなるという話もあります。

2)戦争

現実的な問題として一番人類が絶滅までは行かないものの、最も起こりそうな問題がこれです。

現在、地球に存在する全ての核兵器が各国ウチ放題になったとします。しかし、隕石の際にもエネルギーという意味で地球全体で見れば、すべての核兵器を同じ場所で起爆したとしても、活断層のエネルギー(地震のエネルギーレベル)でみれば、平常時と変わらないものであり、凄まじい放射能汚染は起き、多くの生物は当然死滅しますが、地球全部が焦土となったり、地軸がずれたりといった威力はありません。

それだけ地球というものが凄まじい質量であることが分かると思います。

ただ人類の戦争として考えると、生物兵器だけはちょっと別格で絶滅クラスの被害をもたらす可能性はあると言えます。

現在、遺伝子資源の解析が進み、理論上は人種ごとの抹殺ウイルスなども作れる領域にまで、分子生物学は到達しています。
とはいえ、人類を根絶にウイルスで追い込むこともまた、かなり難しく、人間の場合であればエボラウイルスであっても致死率は高くても80%。つまり20%は耐性を持って生き残るないしは、そもそも効かない場合さえあるのです。これは実際にネズミの駆除にかつて遣われたエクトロメリアウイルスの例でも言え、このウイルスは人間でいうところの天然痘のウイルスの近縁。ネズミ以外への感染は重症化しにくい。ネズミ集団駆除のために生物農薬として使われたが、速やかに抵抗性を持つ個体群が出現し、一時的な抑制にしかならなかったことが知られています。
なんで生き物って有性生殖なんてめんどくさいことしてるんだろう・・・分裂して増えた方が早いやん・・・という話はよくありますが、多様性を失うと、単一ウイルスで滅ぶのです。

ただ人為的に徹底的に人間をターゲットにして潜伏期間が10年近い治療不可能で100%近く死に至るウイルスは製造は可能でしょうから、そうしたバイオテロが行われて人類が一掃された社会・・・なんて描写には使えるかもしれません。

3)生物的淘汰

映画「マトリックス」や「ターミネーター」では、意思を持ったコンピューターが人類を奴隷化しよう、ないしはしています。
また多くの作品で、上位人類の出現により現人類が支配される・・・淘汰される・・・ということは多く見られます。また映画「ジュピター」では、人類はそもそも管理された農作物であり、上位人類の糧である・・・みたいな形での終焉が描かれています。

また、「インディペンデンスデイ」などをはじめとした、宇宙からの侵略者というのも宇宙的な規模でみれば、「生物的な淘汰」と言うことが出来るでしょう。

このテーマはどちらかというと、敵=物語 となることが多く、その作り込みや調査の度合いが露骨に作品に反映されてしまうので、かなり綿密にスキのない設定でないと、設定ガバガバと言われかねないところが怖いともいえます。
逆に言えば、それがしっかりしていれば、骨太のストーリーとなり、そこに肉付けされたドラマをより一層、魅力的なものにしてくれます。

また映画「ザ・ミスト」では、米軍の実験により別の次元の地球へのゲートができてしまい、そちらの動植物がなだれ込んだ・・・というイベントが設定で遣われています。
我々の世界自体が、数多の平行世界のどれかであり、平行世界は多元宇宙論ではよく遣われる言葉で、宇宙的な超遠方に我々と同じ世界がいくつも存在する確率が宇宙の無限の広さでは起こりうる・・・という解釈であったり、そもそもこの世界自体が、そもそも重なり合った存在で波動関数の収束の場所が違うだけで重なり合った世界が同時に存在している・・・いずれも答えの無い理論上の話ですが、そうした異世界設定があり、そこと今の世界が繋がることで、異世界に転生してチートするの逆、異世界から来た魔物がこの世界でチートするということもありえるわけです。

●ビッグファイブからビッグシックスへ・・・

さて、大絶滅というテーマで話をまとめましたが、こうした大絶滅、過去に例がないわけではありません。

地球規模の大絶滅。先にも話題にでましたが、これは現在分かっている範囲で実はすでに5回ほど起こっているとされていて、地質的な大変化がそれぞれ観測されています。多細胞生物が生まれる前の原生代には細菌による「光合成」の発明により、酸素が急増、温室効果ガスである二酸化炭素が急激に減ったため、全球凍結という地球全部が凍るという事態などがあったということが分かっています。

その後、多細胞生物が増えても度々大絶滅が起こり、4億年前のオルドビス紀末の大絶滅(海面上昇が原因と言われている)、デボン紀末、ペルム紀末、三畳紀末、そして恐竜の大絶滅である6500万年前の隕石衝突(白亜紀末の大絶滅)・・・そして現在は、6度目の大絶滅の真っ最中である。

原因はご存じ、我々人類の繁栄のし過ぎであり、そしてこの大量絶滅が続けば、人類は当然地球で生活が維持できなくなるが、脱出するほどの科学力には達しないので一緒に絶滅エンド・・・に向かってます。
当然それを避けることもできるのも人類の科学なので、科学で発展した我々が科学で破滅から逃れなければならないわけです。科学を捨てることはただの放火魔がマッチを捨てても火は消えない理論なので、ただの責任放棄であって、自然保護の過激派がたまに提唱してる原始回帰主義の科学=悪は間違いで科学=技術 であるので、善し悪しもないのです。

くられ

*Discovery認定コントリビューター

サイエンスライター、Youtuber、大学講師第など幅広く活躍。「アリエナクナイ科学ノ教科書」(ソシム)日本SF大会主催 49回 星雲賞ノンフィクションを受賞。近著は化学の生化学の入門を楽しいキャラで学べる「毒物ずかん」(化学同人)、アリエナイ理科ノ大事典(三才ブックス)薬理凶室名義 などがある。現在週刊少年ジャンプ連載中の「Dr.STONE」では科学監修を務める。

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タイトルイラスト:夢路キリコ http://www.yumejikiriko.com/