元祖怪魚ハンター「武石憲貴」降臨! 怪魚逸話連載「怪魚ハンターへの道」 最終話(全3回)

2013年3月、初めてオーストラリアに降り立って、僕は感激した。それまで北東アジア・東南アジア・ボルネオ島・中央アジア・ヨーロッパ・アフリカ・北米・中米・南米、世界各地を巡ってきた。あと一ヶ所残されたオーストラリア大陸を訪れたら、「世界を一周した」と言えるのではないかと思っていたからだ。

1999年に怪魚を求め旅を始めてからの日々は、果てしなく永かった…。
時に熱帯雨林に分け入り、大湿原の水路を漕ぎ進む。草原を馬で旅し、砂漠を彷徨った。1人見知らぬ国を訪れると、言葉も満足に通じなければ、地理感もない。どんな魚が生息しているのかも分らないばかりか、水辺に辿り着くのさえ一苦労である。目的をもって旅をすると、世界はまだあまりに広かった。
ワニや虎やカバに行く手を阻まれ、時にはマラリアに感染し、そして強盗や刃物を振り回して襲ってくる厄介な人々に悩まされる。
ということで、その苦労を思い返しながら、「“祝”怪魚を求めて、釣り旅世界一周!」達成としよう…。

さらに、僕はユーラシア大陸・北米大陸・南米大陸・アフリカ大陸・ オーストラリア大陸で釣りをしているので、5大陸を制覇したことに(6大陸目、南極大陸にも行きたいところだが、あそこには淡水魚はいないでしょ…)。「“祝”釣り旅5大陸制覇!!」とも言っておこう!

ところで、登山の世界では、七大陸最高峰とか、五大陸最高峰という言葉がある。各々の大陸で最も標高の高い山、例えばアジアが誇る世界最高峰・エベレストや、アフリカのキリマンジャロ、南米のアコンカグラなど、世界の大きな山々を全て登頂することは登山家にとってステータスである。

僕もチベット釣り旅の合間に、登山とはいかないまでも、トレッキングは経験している。
2000年、エベレストBC(標高約5150ⅿ)にて、世界最高峰のエベレスト山を臨む。釣りの方はスノートラウトというウグイに似た小魚が2匹釣れただけだったが…。

この最高峰という概念を淡水域の魚釣りの世界に当てはめ、世界の巨大な怪魚を紹介していこう!

先ずはユーラシア大陸(アジアエリア)から、
●ヒマンチュラチャオプラヤ(学名:Himantura chaophraya)

東南アジアのタイやカンボジア、タイ湾に注ぐ河川に生息する淡水エイ。タイ名「プラー・クラベーン」。タイの魚図鑑によると、尾の長さを含めた全長が5mになるという淡水域世界最大のエイ。僕自身も胎盤の幅2m、尾の長さを含めると4mを超えるサイズを釣っている。

お次もユーラシア大陸(ヨーロッパエリア)から、
●ヨーロッパオオナマズ(学名:Silurus glanis)

東南アジアのメコンオオナマズ・アマゾンのピライーバと並ぶ世界三大鯰のひとつ。ヨーロッパから中央アジアにかけて生息する。最大で3ⅿに成長し、過去には5mも生息していたとされる。子供が飲み込まれたなど、物騒な伝説が残るユーラシア大陸屈指の巨大淡水魚。ちなみに、僕の自己記録は220cm。

太平洋を経て、北米大陸から、
●ホワイトスタージョン(学名:Acipenser transmontanus)

カナダ・アメリカ合衆国北部、太平洋岸の河川と海域を行き来し、遥かシベリアまで移動する個体もいる。最大で4ⅿを超え、重量は400㎏に達するとされる…。現存する(今でも釣れる)大型魚の中では最大級と思われる。僕の自己記録は276cm。

もう1匹、北米大陸から、
●アリゲーターガー(学名:Atractosteus spatula)

この魚は長く、幅広の口に鋭い歯が並び、体は強固な鱗に被われている。その名の通りアリゲーター(ワニの一種)を彷彿させる。ホワイトスタージョンには及ばぬが、全長304cm体重104㎏の記録が残る。僕の自己記録は202cm。

南に向かい、南米大陸から
●ピライーバ(学名:Brachyplathystoma filamentosum)

南米最強の大鯰。最大で、全長3ⅿに達するアマゾン流域最大の魚。鯰ながら遊泳力は高く、釣り味としては最も面白い。僕の自己記録は205cm。

大西洋を経て、アフリカ大陸へ行くと、
●ナイルパーチ(学名:Lates niloticus)

日本では幻と呼ばれるアカメや、オーストラリアなどで人気のゲームフィッシュ・バラマンディと同じラテス属の魚だ。ラテス属の中で最も巨大に成長し、世界記録は230ポンド(約104㎏)。ルアーのキャスティングで狙える怪魚の中では世界最大級の淡水魚である。僕の自己記録は145cm。

最後に、オーストラリア大陸から、
●マーレイコッド(学名:Maccullochella peelii peelii)

オーストラリアの純淡水域で最重量を誇る怪魚。現在、乱獲や生息域の荒廃のため数を減らしているが、最大で150cmに迫る(過去には1.8mの記録が残る)。僕の自己記録は125cm。

ということで、“祝”「5大陸最高峰制覇!!!」とも言っておこうか! まあ、自己満足ではあるが…。

「ただ、ただ、デカい魚を、釣りあげたい!」

魚釣りの世界において、これほど単純かつ明快な目的が他にあるだろうか? 釣りの細かいテクニックだとか、釣りに関する些細なことを度外視して、ごちゃごちゃ言う暇もなく、デカい魚は美しく、僕らを前に圧倒的な存在感を保持する。デカい魚を釣ることが、「釣り人の究極の目標」だと断言する…。

武石憲貴
元祖“怪魚ハンター”。秋田県出身、広島市在住。
著書に「世界怪魚釣行記」・「新世界怪魚釣行記」(扶桑社)。主なTV・CM出演、「情熱大陸」「NHK・BSプレミアム 怪魚ハンターが行く!」「フィリップ モリス社 IQOS-Game changers」
ブログ:怪魚ハンターが行く!