人はなぜ超常現象を信じてしまうのか…科学と心理学から紐解くその仕組み

この世界には、エビデンスが示す「科学」を信じる者と、科学では説明できないと言われる「超自然的な力」を信じる者がいる。

スピリチュアルな物事や人の心を読んだり未来を予知するなどの超能力を「ある」もしくは「持っている」と主張する人の多くは、その存在の立証はできていない。にも関わらず、そういった不思議な力を信じている人は少なくない状況にある。

なぜ確かな根拠がないにも関わらず、人は超常現象を信じてしまうのだろうか。最新の研究や心理学からその「信じる心」を紐解いてみよう。

 

人が超常現象を信じてしまう理由

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1980年代、神の声を聞くことができ、病を治癒できるとしてテレビを賑わせたピーター・ポポフという人物がいた。

彼は神の声によって、知らないはずの観客の情報を知ることができるとしていた。後に、彼の妻がワイヤレスの送信機を使ってイヤホンを付けたポポフに教えていたことが判明する。トリックが明かされるまで、ポポフは神の声を聞くことができる奇跡の人として皆に信じられていた。

アメリカでは、奇跡の力を持つと自称する人間は幾度となく現れ、それがトリックであったり、詐欺であったことが証明されても、現在も多くの人が不思議な力の存在を信じているという。国内の3人に1人は神秘的な体験を信じ、女性の半数以上が超常現象を信じているとの調査結果も出ている。

シカゴ大学の心理学部教授デビッド・ギャロらによる研究では、人はなぜスピリチュアルなものや超能力を信じてしまうのかを調査している。この研究では、同等の教育を受けた、超常現象を信じる人のグループと懐疑的な人のグループを対象に実験が行われた。その結果、超常現象を信じやすい人のグループは、懐疑的なグループと比較して、論理的に考えることが少ないということがわかった。個人の主観的な観点から世界を解釈しやすく、情報が正しいか間違っていかの精査を行わない傾向が強かったとされる。

 

人の心理とバーナム効果

「バーナム効果」という言葉を知っているだろうか。

1950年代に心理学者のポール・ミールによって提唱された心理学の現象で、人は曖昧でどのようにも捉えられる説明を聞くと、自分自身のこととして受け止めやすい傾向を指す。

バーナム効果の名称は、「私たちはどんな人でも気に入るものを持っている(we’ve got something for everyone)」という言葉を残した、19世紀の興行師フィニアス・テイラー・バーナムの名前からとられている。

実際の「予知」や「予言」と呼ばれるものはどうだろうか。ミシェル・ノストラダムスやジーン・ディクソンをはじめ、世界で知られる事件や災害を予知したとされる人物の言葉は、どのようにでも捉えることができる曖昧なものがほとんどだ。具体的に日時や事象を言い当てたという公的な記録は現在のところ存在していない。

曖昧な言葉による予知/予言は、自分が知っている物事と結びつけてしまうという効果を生みやすいのである。

 

超常現象を信じる根拠になっている、科学者による肯定的な研究

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超常現象を信じてしまう要因の1つに、立場のある科学者らによる肯定的な研究がある。超常現象が本物である根拠として出されることがあるが、これらの研究は実際には他の科学者によって批判を受けていること、立証に必要となる「第三者による再現」ができていないことが無視されやすい。「再現性」があることが「科学」の条件であるのにも関わらず、発表された内容だけが一人歩きしてしまっているのである。

例えば、透視能力を持つとされ、「サイキックドリーマー」として英国の警察に協力していたクリス・ロビンソンは、テロや災害、有名人の死を予知してきたと主張していた。そして、アリゾナ大学の心理学者、ゲイリー・シュワイツらによって、ロビンソンの能力は本物であるとする研究報告が出されたのだが、この報告内容は第三者によって再現することができなかった。

他にも、世界的に著名な学術誌「Journal of Personality and Social Psychology」に掲載された、社会心理学者ダリル・ベムによる「予知」の存在を肯定する論文についても、世界中のどの研究者もその内容を再現できてはいない。

だが、「超常現象が存在する」ことの証明が難しいように、「超常現象が存在しない」ことの証明が難しいのも、科学の世界では確かな事実である。