元祖怪魚ハンター「武石憲貴」降臨! 怪魚逸話連載「怪魚ハンターへの道」 第2回(全3回)

2019年、初めの海外遠征は1月のこと。冬の日本とは季節が真逆、真夏のオーストラリアへと旅だった。友人と二人で、レンタカーを借りて、自由気ままに広大な大陸を彷徨うことに…。

出発前に「目的の怪魚は何にしようか?」と考えた。オーストラリアは過去2回訪れており、この地域の代表的な怪魚はすでにこの手に抱いていた。

「マーレイコッド(学名:Maccullochella peelii peelii)」。オーストラリアの純淡水域で最重量を誇る怪魚。
現在、乱獲や生息域の荒廃のため数を減らしているが、最大で150cmに迫る
「バラマンディ(学名:Lates calcarifer)」。オーストラリアやパプアニューギニア、東南アジアまで、広範囲に生息する。ゲームフィッシュとして最も人気が高い怪魚。最大で140cm程度まで成長する。

しかし、この大陸にはまだ見ぬ怪魚が一種存在していることを思い出した。それは、オーストラリアハイギョ(英名:Queensland Lungfish 学名:Neoceratodus forsteri)、通称ネオケラと呼ばれる。

通常、魚はエラを使って水中で呼吸をするが、「ハイギョ(肺魚)」は肺に空気を吸い込んで酸素を取り込む。地球上には、アフリカや南米、オーストラリアに6種類のハイギョが生息しており、その中でオーストラリアに棲息しているのがネオケラである。太古の昔からほとんど姿を変えることなく生き続けた、まさに「生きた化石」と呼べる存在なのだ。

ネオケラは希少動物のため、政府の保護の対象とされている。商取引に関してもワシントン条約で規制され、養殖されているものについては識別チップを埋め込まれた状態で輸出されている。つまり、「釣りをすることが禁止なのだ…」。
ということで、オーストラリアに旅立つ1カ月前から特別のライセンスを手に入れることに奔走した…。そして、グーグルアースをにらみ、目ぼしそうなポイントに印をつけていき、まだ見ぬ怪魚への思いは募っていった。

旅のスタートはクイーンズランド州の州都、大都市ブリスベン。空港でレンタカーを借り、早速広大な大地に繰り出した。

地図を頼りに見知らる土地を突き進む!怪魚探索の基本。
時折現れる「コアラに注意」の道路標識。
カンガルーも路上に飛び出して来るため、スピードの出し過ぎには注意…。

ネオケラが生息するのはオーストラリア国内でも主にクイーンズランド州に限定され、一部の河川やダム湖にのみ生息している。
最大で150cm以上に成長し、信頼できる情報源によると、187cmという人間を超えるサイズまで実際に釣られている。

オーストラリアに降り立ってから約5時間後、遂にネオケラが生息すると思われる川辺に立った。餌は現地に生息するザリガニの剥き身。

8号のオモリで川底まで沈めて、あとはじっと待つだけ。川幅20mほどの水草が生い茂るのどかな流れ、静寂の中に時折小鳥の鳴き声が入り交じり、ほんの少しの緊張感と共に心地良い時間が過ぎていった。そして、ネオケラとの出会いの時はあっという間にやってきた!

竿先に「コン、コン!」という魚の反応が出て、竿を手にして本アタリに備えた。すると、その後しばらく何事もなく、突如「ドバババーン!」と水面を突き破り、何かが飛び出した。
「ネオケラだ! もう針に掛かっている!!」。
おそらく餌を食い込み、針が勝手に掛かってしまい、驚いたネオケラが暴れ始めたのであろう。初めアタリがよく分からずに、突然暴れだしたネオケラに驚かされたが、次第に冷静さを取り戻し、魚の動きに合わせ丁寧にファイトをした。何度か水面を突き破って跳躍を見せ、冷や冷やさせられたが、やがて大人しく足元に横たわった。終にこの手に抱いた! オーストラリアのハイギョ、ネオケラ。サイズは1mを少しだけ超えていた…。

そして、それから30分後に相方にもネオケラが釣れて、初日二人で5匹を手にし、旅の大方の目標は達成したかに思えた…。


しかし、それから怒濤の爆釣が始まった…。

ネオケラをすでにこの手にし、のんびり気分で翌日からも川辺を探索した。すると、ネオケラの巣ともいえる爆釣エリアを見つけることになる。

続け様に釣れたネオケラと外道のオーストラリアオオウナギ、ともにメーターオーバー。不思議なツーショット…。

あまりに釣れ続けたため、魚のサイズを計ることが面倒になっていった。しかし、何となく計ってみると111cm。僕の誕生日は1月11日(偶然にもこの旅最初の日付)、そしてネオケラの総捕獲数は22匹と、ゾロ目のなんだか嬉しい1匹…。

オーストラリア初日で大成功に思えたが、それは前夜祭過ぎなかった! この日はタバコを1本吸い終える暇もなく、次から次へと釣れ続く…。相方が120cm半ばを釣り上げる。


保護される怪魚ながら、ネオケラの楽園はまだ存在したのだ…。

おまけの、ネオケラの各部をお見せしよう! 先ずは、その「お顔」。つぶらな瞳と特徴的な「胸びれ」、オットセイなど、海生哺乳類の様で可愛い…。


「頭部」は真上から撮影すると、日本の大きな雷魚にも似たごつい形状。

おそらく川底のザリガニや、小動物の死体を漁り、すり粒して捕食していると思われる特徴的な「歯」。

全身はびっしりと「鱗」に覆われている。「日本の雷魚が、まるで鎧をまとって進化した感」がカッコいい。

ウチワの様な尾びれ。古代魚のためファイト中のパワーとスピード、遊泳力は低いが、時折ファイト中に華麗な跳躍を見せる。

背びれ・尾びれ・尻びれは合体している。ボディとヒレの比率はこんな感じである…。

日本の雷魚釣りの延長線上のずっと先、オーストラリア大陸を旅すると、こんな素敵な怪魚に出会えた! 日本で幼い頃から雷魚を愛してきた釣り人にはたまらないこの姿…。「世界には、まだまだ未知の怪魚が潜む!」と実感した…。
(つづく)

武石憲貴
元祖“怪魚ハンター”。秋田県出身、広島市在住。
著書に「世界怪魚釣行記」・「新世界怪魚釣行記」(扶桑社)。主なTV・CM出演、「情熱大陸」「NHK・BSプレミアム 怪魚ハンターが行く!」「フィリップ モリス社 IQOS-Game changers」
ブログ:怪魚ハンターが行く!