「やる気スイッチ」はどこにある?脳のメカニズムを理解すればある程度コントロールできるかも

「やる気」が出ないときは誰にでもあるだろう。

長期休暇明けの倦怠感で頭が働かなかったり、手が動かなかったり……。そんな時、俗にいう「やる気スイッチ」を自分でオンオフができれば効率的に動けるのではないかと考えてしまう人も少なくないだろう。

そもそも、「やる気」とはいったいどのような現象なのか。やる気を出すときに人間の体の中でどんなことが起こっているのだろう。そして「やる気スイッチ」のように、自分でコントロールできるのだろうか。

 

脳神経科学としての「やる気」

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休日明けに職場の机に座り、目の前の仕事を見てもやる気が起こらない。そんな経験をしたことがあるだろうか。

やる気が起こらない倦怠感は、仕事の進行にも悪影響を与えてしまうために笑い話で済まされない場合もある。なぜ人間にはやる気があるときとそうでないときがあるのだろうか。

「やる気」において大きな役割を果たしているのが、中枢神経系の神経伝達物質である「ドーパミン」である。脳の中で、ドーパミンの科学信号がニューロンからニューロンへと伝達され、シナプスに作用する。報酬や快感、恐怖などの感情に関係する側坐核という神経細胞のドーパミン量が増加することで「やる気」が起こると考えられている。

米ヴァンダービルト大学の研究チームによる、18歳から29歳までの「積極的に行動をする人」と「怠けグセのある人」の脳をマッピングし比較した研究では、積極的に行動する人の脳は、意思決定機能や運動機能に関係する線条体と、思考や創造性に関係する前頭前野で、より高いドーパミンレベルを持っていたことがわかった。

一方で怠けグセがある人の脳は、感情や危険の知覚に関する前部の島皮質と呼ばれる箇所のドーパミンレベルが高かった。島皮質のドーパミンが多いことが欲求の減少へとつながっているのだという。また、ドーパミンのレベルが低くても、積極性が減少するのだそうだ。

ドーパミンは、長らくポジティブな感情に主に作用していると考えられていたが、PTSD患者が強いストレスを感じた時にもドーパミンが急上昇することが確認されており、さまざまな感情に作用していたことが判明している。

 

ドーパミンから考える「やる気スイッチ」の作り方

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「やる気」は、特定の脳の箇所にドーパミンが作用することで起こることがわかったが、やる気を自在にオンオフするような「やる気スイッチ」を作り出すことは可能なのだろうか。

その答えはイエスである。が、すぐにできるわけではなく訓練が必要となるようだ。人の行動において、やりがいのある経験でドーパミンがもたらされるため、特定の環境を自分で構築し、繰り返し行うことによって、ある程度コントロールができるようになる可能性があるという。

例えば、仕事を細かく分割したやることリストを作成し、1つの作業が終わるごとにチェックをつけていく。このような小さな達成感でもドーパミンは増えるとされる。また、全体ではなく作業1つ1つに集中することもドーパミンの増加に影響するのだそうだ。ドーパミンの増加は健康状態にも左右されるため、まずは健康的な習慣で生活を送ることが大切だ。

ドーパミンとは別に、短時間の昼寝も「やる気」を促すのに良いとされるが、10分ほどの睡眠でないとその効果はないという。それ以上寝てしまうと、睡眠から覚醒状態への切り替えがうまくできなくなる「睡眠惰性」状態になりやすいため、逆に仕事の効率が落ちてしまうとされる。

上記のことを意識して行うことで、「やる気」のある状態をある程度自分でコントロールすることができるというわけだ。

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「やる気」をどんなに科学的に解析しても、本人がある程度行動しないと「やる気」を出すことはできないことがわかるだろう。どうしてもやる気を出さなければいけないとき、まずは気持ちに勢いをつけることが最も大切なのかもしれない。