キングペンギンとエンペラーペンギンの不思議な関係…似て非なる王様と皇帝と、ヒナの巨大な保育園

似ているけどちょっと違う、キングペンギンとエンペラーペンギン。

空を飛べないが、その愛くるしい姿から世界中で人気があるペンギン。その中でも、キングペンギンとエンペラーペンギンは、どちらも体が大きいことが特徴で似たような配色の羽毛も持っている。だが、なぜ一方はキング(王様)で一方はエンペラー(皇帝)なのだろうか。

この2種のペンギンの発見から命名にいたるまで、どのようなドラマがあり、どのような違いがあったのだろうか。

 

目次

  • ペンギンの王様と皇帝
  • 名前の由来
  • 実はエンペラーともう1種類しかいない南極で生涯を過ごすペンギン
  • 王様と皇帝、どっちがすごい?

 

ペンギンの王様と皇帝

キングペンギン(オウサマペンギン)とエンペラーペンギン(コウテイペンギン)は、姿や生態は似ているが、生息地が全く異なる。

Credit: Paul Carroll on Unsplash

成鳥の体長が85センチから95センチほどになる「キングペンギン」は、インド洋や南大西洋の島々に生息し、南米パタゴニアやニュージーランドでもその姿が確認されている。

その体は、エンペラーペンギンに次いで世界で2番目に大きい種類となる。成鳥は、白と黒に加え、頭部や喉に黄色のグラデーションを持つが、ヒナの時期は全身茶色のふわふわした羽毛である。

Credit: Paul Carroll on Unsplash

巣は作らずに、立ったまま足の間で卵を温めるキングペンギン。オスメス関係なく交代で卵の孵化を行う。キングペンギンのヒナの巣立ちは他のペンギンよりも遅く、生まれてから1年ほどかかるのも特徴だ。

Credit: Creative Commons

一方、大きい個体だと体長が130センチにもなる世界最大のペンギン「エンペラーペンギン」は、南極大陸周辺に生息している。繁殖は海から数十キロから100キロ以上離れた南極の内陸で行い、オオサマペンギンと同じく立ったまま卵の孵化を行う。

だが、卵を温めるのはオスの役目で、産卵のために40日間絶食状態となるメスは、卵を産むと餌を確保するために繁殖地を離れてしまう。そしてメスが帰ってくるまでの100日以上の間、オスは何も口にすることなく卵を温め続けるのである。

Credit: Paul Carroll on Unsplash

キングペンギンもエンペラーペンギンも、ヒナが一定まで成長すると、「クレイシュ」と呼ばれるグループを形成する。クレイシュ(crèche)は、フランス語で保育園を意味する。

こういったグループを形成するのは、集団になることで天敵から襲われるリスクを下げるためとされる。この期間の親ペンギンは、餌の運搬のみで外敵からヒナを守らなくなるので、ヒナたちはクレイシュでの集団生活を通して外敵への対処法を学んでいくのである。

これはキングペンギンとエンペラーペンギンだけでなく、アデリーペンギンにも見られる習性である。

 

名前の由来

Credit: パブリックドメイン

最初にキングペンギンが発見されたのは18世紀とされる。

キャプテン・クックとして知られるイギリスの海軍士官で探検家のジェームズ・クックが、太平洋横断航海を行った際の記録の中にキングペンギンが登場するのだ。

この記録は、1772年から1775年にかけて行われたキャプテン・クックの2度目の航海に参加していた、ドイツの博物学者ヨハン・ラインホルト・フォースターとその息子ゲオルグによるものだった。ヨハンのアシスタントで芸術家でもあったゲオルグは、航海の際に発見した新種の鳥の姿をスケッチしていたのである。

1775年、クックが南アフリカ経由で南ジョージア島を発見した際、フォースター親子は、大きな体で、黄色いグラデーションが入った羽毛のキングペンギンを目撃し、その特徴をスケッチとともに記録した。そして、他のペンギンよりも大きな体を持つことから「キング」の名をつけたとみられる。これが現在残されているキングペンギンの最も古い報告である。

そして1844年、南極探検隊が、ゲオルグの絵によく似たペンギンをイギリスへと持ち帰ってきた。当初、そのペンギンはキングペンギンだと思われていたが、大英博物館のジョージ・ロバート・グレイが調査した結果、キングペンギンとは異なる新種であることがわかった。

グレイは、フォースター親子が命名したキングペンギンにちなみ、そのペンギンをエンペラーペンギンと名付けたのである。

 

実はエンペラーともう1種類しかいない南極で生涯を過ごすペンギン

Credit: Hubert Neufeld on Unsplash

南極で生活するエンペラーペンギンの姿は、ドキュメンタリー映画や本などの影響で広くその姿を印象付けた。そういったこともあり、ペンギンといえば南極の氷の上で生活しているというイメージがされやすいのだが、実は極寒の南極で子供を産み、育てるのは、コウテイペンギンとアデリーペンギンの2種類しかいない。(ただ、ヒゲペンギン、ジェンツーペンギン、マカロニペンギン、イワトビペンギン、そしてキングペンギンなどは、南極大陸に遠征している姿を見ることができる。)

様々な種類のペンギンが南半球に分布しているため、南極よりもずっと暖かい地域のほうが、ペンギンが多く生息していることになる。余談ではあるが、最も暖かい地域に住むペンギンは、赤道直下のガラパゴス諸島エクアドルに生息するガラパゴスペンギンである。

 

王様と皇帝、どっちがすごい?

Credit: Creative Commons

俗説で、最も大きいと思われていたキングペンギンより後に、もっと大きなペンギンが発見されたため、キングより凄そうなエンペラーペンギンと命名された、という話がある。だが、大英博物館の記録でも、キングペンギンにちなんで命名されたという記録しか残されていないため、この説を立証するものはなさそうだ。

名前の由来について議論してみても、実際のところ、ペンギンたちにとっては人間がつけた「王様」や「皇帝」なんて名前などどうでもいいと思っているのだろう。