アリエナクナイ科学ノ教科書:第22回 この世は物質 物質世界! 万物全てを構成する物質の世界 後編

今回のお題は前回に引き続き、当たり前だけど僕たちが認識していない「物質世界」。
なんとも地味で、なんとも曖昧で、なんとも唆らない話題でしたが、少し興味が出てきましたか?

そういうわけで、この世界を構成するのは、元素と呼ばれる単位(炭素とか窒素とか酸素とか)の組み合わせで構成されています。もちろんもっと細かく見ることもできるのですが、「化学」の世界はここを最小単位とする学問です。言わば化学と物理の分岐点もここにあるわけです。ちなみに、「生物」は元素をつなげてできる「分子」とさらに積み重なりまくった「タンパク質」あたりを最小単位として、より大きなものを見ています。
さらに動植物、鉱物を最小単位にしていくと「地学」というように理科の教科はスケールアップしていく関係にあります。

●原子番号と原子の重さと放射能

分子の話に行く前に、前回、水銀を金に変える話をしたと思うけど、それを思い出してもらいつつ、原子ってなんなのかって話をしてみましょう。

元素には原子番号という重さの順番に約250種類くらいの物質が割り当てられていて、周期表に並べられている。全ての物質はこの周期表の中にある物質の組み替えである・・・・と学校で習うはずなんだけど、実は若干の嘘が含まれています。

この話を聞くと、「なんか元素って250種類くらいあって、それが組み替えであらゆる物質が構成されている・・・・」ように思えます。いや、なんか水銀の中に重さの違うレア水銀があって、そのレア水銀に中性子をあてまくると金に変わるって話でした。レア水銀ってなんでしょか?

再度前の復習をしてみます。

水銀を金にかえるときも、外から無理矢理なパワー注入をすると、1粒当たり金と同じ重さの水銀が出来上がってしまいます。この謎の水銀は余分な陽子を1個吐き出します。すると、当然原子の性質が変わってしまいますから。レア水銀は「俺、もう水銀やめるわ」と金にジョブチェンジするわけです。

このジョブチェンジ中の状態は放射線という形でベータ線として電子やアルファ線としてアルファ粒子(陽子2個・中性子2個からなるヘリウムと同じ原子核:このセットが出しやすい)、さらにガンマ線やX線は光と同じ電磁波です。こういう余分な部分を外に放出中の元素を放射性元素と呼ぶわけです。
原子力発電では、核分裂を起こしてそこから熱エネルギーをとるので、分裂したあとのマジ不安定なアレコレが山盛り出るので、廃棄にバチクソ困るわけです。

原子番号というのは陽子の数で決められます。陽子というのは電子をひきつける性質があるので、陽子の数にあわせて電子の数も揃うという仕組みです。これが原子の基本的な形です。

一方、陽子にたいして中性子は重さは陽子とだいたい同じだけど名前の通り、電気的な影響力がないので電子の数にはイタズラしません。なので電子の数に影響を与えず、ただ重さだけが変わるわけです。
陽子と中性子はお互いに「中間子」と呼ばれる素粒子を交換しながら結びついて原子の安定性を保つためにいろいろ仕事をしてるんですが、物理の話になっていくので今のところ考えなくてOKです。

このように実は、原子の重さってのは一定ではなくて、実は何種類もあるんです。身近な炭素でさえ、代表的なのは3種類あります。

なんか数字が一杯出てきましたが大半の炭素原子の1粒の重さが12のものと、13のもの、そして14というものがあるという事実だけ知っていれば十分で、炭素14は炭素のなかでもめっちゃレア、ウルトラ激レアな存在で、しかも放射線をだしながら勝手に分解して今度は窒素になります。自然物の中にさえ、不安定な元素がいて、それは宇宙や星が誕生するような地球が爆裂するようなエネルギーが生じるといろんな原子が合体や分裂をして、周期表にある250種くらいにだいたい安定していく・・・という話です。

ウルトラ激レアの炭素14は炭素1兆個を並べたときに1個だけ存在する、ガチャだとまず出ないガチャ爆死確定確率で存在する本当に爆裂レアな存在です。
でも、原子というものは超小さい粒ですから、1兆個なんかわりとすぐに集まります。そしてその分布確率は等しく均等なのです。
例えば、空気中では、炭素は二酸化炭素という形で、酸素2個で挟み込んだ物質として、ぼくらの身の回りを飛び回っています。当然 私たちの体からも排出されている二酸化炭素も例外ではありません。

その空気中の1兆分の1個が炭素14です。炭素14は、長い年月、5730年もの時間をかけて半分の量が窒素になってしまうことが知られています。

なんかすごいどうでもいい話をしてるような気がしませんか?

しかしこれ、掘ってきた化石なんかが一体何時のモノなのかを知ることができる、放射性炭素年代測定に欠かせない情報なのです。

「放射性炭素年代測定」なんかニュースなんかで一度くらいはしれっと聞いたことがある人もいるかもしれませんが、実はこれ、化石の中に含まれている炭素を調べて、1兆分の1の確率で入っているはずの炭素14の数を調べることなのです。

例えば、カイワレを想像してみてください。スーパーで売ってるアレです。
カイワレは植物ですから空気中の二酸化炭素を吸い込んで光合成という形で炭素固定をします。つまり、空気中の1兆文の1の炭素14も1兆個ごとに1個ずつ取り込むわけです。

カイワレ1本に含まれている炭素14が仮に100個だったとします(本当はもっと多いです)、そして、裏の畑を掘っていたら謎の地層が現れ化石化したカイワレが発見されます。
そこに含まれている炭素14の数が半分の半分の25個だったとしましょう。

つまり、そのカイワレは、5730年×2=11460年もの時間をかけて炭素14は窒素へ変わったことがわかる=11460年前の化石である・・・と分かります。

炭素14の動きを追えば、何年たったものなのかを調べることができるわけです。

●分子の動きと熱の正体

化学らしい話を始める前に、そもそもの話「熱」ってなんなのか話をしておきましょう。

熱。温度。温度が高い低いで物体の状態が変わることはよく知られています。

例えば、水を例に考えると、水は0℃で凍ります。つまり0℃以下は固体として存在するということです。100℃だと今度は沸騰して水蒸気、つまり気体になることは知ってますね。

まぁ「℃」=「摂氏」=「セルシウス度」は水を基準にした単位であって、絶対零度である0K(ケルビン)は-273.15 ℃という感じになっています。

ここで気になるのは高い温度は100℃どころじゃなくて、200℃とか500℃、太陽とか何万という温度です。それに対して絶対零度は-273.15 ℃以下がないらしいのです。ー1億℃とかウルトラ低温は存在しないのでしょうか?

これに関しては絶対零度以下は熱力学第三法則によれば到達不可能とされています(近年、それ以下の温度もあるという研究もあるが、化学においては今のところナシと考えておい他方が良い感じ)

なんでこんな物理めいた話になっているのかというと。化学において大事な化学反応。麻薬や爆薬を合成するのも化学反応ですが、それ以前に水に塩や砂糖を溶かすのもまた化学反応です。そして、経験的に、熱いお湯のほうがいろいろなものを溶かしやすいことを知っています。

ここと熱の正体はすごく大事なのでもう少し掘り下げていきます。

実は熱・・・というのは、分子や原子がどれだけ振動してるか、ブルブルしているかをマクロにみているだけのものです。分子や原子同士がぶつかると余計に衝突によってエネルギーが増します。これをわざとやって温度をあげるのが電子レンジですね。鍋やフラスコで煮るのも、熱源から赤外線という電磁波が出て、そのエネルギーを受けてブルブルパワーが増しているわけです。

本連載の元になっている「アリエナクナイ科学ノ教科書」の図版の再利用ですが、この図版を見ると、固体と液体、気体の差はあくまで分子や原子の距離の話でしかないことを表現しています。

コップに入った液体の水も実は活発に動き回っていて、その動き回っている空間というのは真空です。つまり固体は隣が近いのでロクに動けないから固いわけです。液体はそこそこ距離があるのでトローリと自由に動けるわけです。

水は100℃で沸騰しますが、別に100℃でなくても冬場も夏場も蒸発していきますよね。つまりこれは、分子自体のエネルギーが高い(超ブルブル動いてる)状態だと、空気と液体では境目を突破することは実はそんなに大変ではないので、出て行ってしまうことです。
液体から空気中に脱走しやすさは、例えばアルコールと水では違いますよね。これを蒸気圧が高い(脱走しやすい)蒸気圧が低い(脱走しにくい)みたいに分子ごとに性質が変わるわけです。
逆に、空気中の二酸化炭素がそのまま液体の水に飛び込んできてそのまま溶けることもあります。

固体・液体・気体 の状態も実はエネルギーの具合次第でおとなしくしてるか、イケイケになっているかの差で、イケイケには制限が甘いので、分子が保てなくなるまでは温度は上がり続けるわけです。

原子が組み合わさってできる分子、分子と分子が特定の場所でくっつく化学反応も、分子1つ1つの粒の距離であり、そこに分子自体の運動力を外部からのエネルギーチャージでパワーアップする。
これがフラスコをヒーターで加熱して化学反応を促進している理由なわけです。

化学において「物質」を「物質」として改めて見直す今回の特殊な試みはいかがだったでしょうか?

皆さんのまわりの物質がどうしてこうなるのか・・・接着剤が固まるのはどうしてなのか、冷えたご飯がボソボソなのはどうしてか? すべては分子のイケイケ度であることが分かったわけです。

今後はコーヒーを飲むときも、たまには目に見えないこの小さい世界に思いをはせてみてもいかがでしょうか?

くられ

*Discovery認定コントリビューター

サイエンスライター、Youtuber、大学講師第など幅広く活躍。「アリエナクナイ科学ノ教科書」(ソシム)日本SF大会主催 49回 星雲賞ノンフィクションを受賞。近著は化学の生化学の入門を楽しいキャラで学べる「毒物ずかん」(化学同人)、アリエナイ理科ノ大事典(三才ブックス)薬理凶室名義 などがある。現在週刊少年ジャンプ連載中の「Dr.STONE」では科学監修を務める。

https://www.cl20.jp/portal/

タイトルイラスト:夢路キリコ http://www.yumejikiriko.com/