人類が初めて撮影に成功したブラックホール…もしあなたが吸い込まれてしまったら、物理法則の乱れによって2人に分裂する?

アルベルト・アインシュタインが唱えた一般相対性理論や観測データから、その存在が示唆されていたブラックホールだが、2019年4月10日、世界で初めて撮影に成功した。

今回撮影されたブラックホールはM87という銀河で発見されたもので、その大きさは太陽系全体よりも大きいとされる。

ようやく実物を撮影できるまで至ることができたブラックホールは、まだまだわからないことだらけだ。もしブラックホールに吸い込まれたらどうなるのか、また、地球の近くに出現したらどうなるのかについて、人類はどこまで解明しているのだろうか。

 

目次

  • ブラックホールとは
  • ブラックホールを捉えた画像
  • 2014年の映画が描いていたリアルなブラックホール
  • ブラックホールに人間が吸い込まれたら
  • もし地球の近くにあったら?

 

ブラックホールとは

1915年から1916年にかけて発表されたアルベルト・アインシュタインの一般相対性理論。それを受け、ドイツの天文・天体物理学者カール・シュバルツシルがブラックホール理論を導き出したことから、宇宙にはブラックホールが存在すると広く知られるようになった。

それから100年あまり、世界中の天文台が力を合わすことによって実際の姿の撮影が実現したのである。

ブラックホールは、太陽の20倍を超える大きさの惑星が寿命で超新星爆発を起こした場合、中心核が自らの重力に耐えきれずに極限まで潰れていくとされる。その極限まで潰れて密度が大きい天体がブラックホールと呼ばれるものとなるのだ。

重力があまりに強く、光さえ出られないブラックホールは、真っ暗な存在であるが周辺の星や発光するガスなどによってその存在を見つけることができるのである。

 

ブラックホールを捉えた画像

Credit: NASA/CXC/Villanova University/J. Neilsen

2019年4月10日に発表されたブラックホールの画像の撮影は、世界中の約200人の科学者と8つの電波望遠鏡をつなげることで実現した国際的なプロジェクトによって成し遂げたものだった。

相対性理論における「事象の地平面(Event Horizon)」を冠とした、「EHT(イベントホライゾンテレスコープ)」プロジェクトは、各国にある巨大な電波望遠鏡が収集したブラックホールの観測データを持ち寄り、同期処理することで擬似的に地球規模の超巨大電波望遠鏡で観測を行なった状態と同じにするプロジェクトである。

この際のデータはあまりに大容量であったため、インターネットなどによって送信するのではなく、データが記録された物理ハードディスクを、プロジェクト・ディレクターのシェパード・ドールマンが所属する米マサチューセッツ工科大学のヘイスタック天文台などに直接持ち寄るという方法が取られている。

それらデータを、多数のコンピューターをネットワーク接続することでひとつのコンピューティングシステムとするグリッド・コンピューター用いてデータ統合が施され、発表された画像を浮かび上がらせたのである。

 

2014年の映画が描いていたリアルなブラックホール

Credit: NASA GSFC/J. Schnittman

2014年に公開されたクリストファー・ノーラン監督の映画『インターステラー』では、それまでのブラックホールに関する研究を全て詰め込まれた、限りなく本物に近いとされる映像化が行われていた。この映画のブラックホールは、ただのサイエンスフィクション映画のアートワークとしてではなく、コンピューターによって可能な限り現実に即した姿をシミュレーションした映像であったのだ。

実際の映像の制作には、アインシュタインの一般相対性理論の方程式を4万行にも及ぶプログラム言語化したソフトウェアが使用された。そして、4Kよりもはるかに高い解像度を持つIMAXシアター用の映像として、CPUを32,000コアを使って1000フレーム(およそ41秒のシーン)の書き出し作業が行われた。

そうやって完成した、当時の最も現実に即して作られたブラックホールの映像だが、実際のブラックホールの撮影に成功した現在、ブラックホール を囲むように存在する明るく発光するガスや漆黒の中心部など、如何に忠実であったかが示された。(撮影に成功したブラックホールを異なる角度から見た場合に映画のブラックホールと同じ見え方になるという)同時に、アインシュタインの一般相対性理論が間違っていなかったことも証明されたのである。

 

ブラックホールに人間が吸い込まれたら

前述の『インターステラー』の中では、ブラックホールに突入した主人公がある者たちの思惑によって3次元空間を内包した4次元空間へとたどり着くという描かれかたがされた。他のSF作品でも、例えば時空を超えたり、結晶生物と同化してホワイトホールから放出されたりと、色々な可能性が想像されてきていた。

実際にブラックホールに人間が吸い込まれた場合、どうなるとされているのだろうか。

実は、一般相対性理論と量子力学を組み合わせると、ブラックホールに吸い込まれた人は2人に分裂しないとおかしくなると言われている。要するに、この2つの理論の組み合わせは、通常の物理法則が通じないブラックホールの中に同じ人物が2人存在しないと成立しなくなってしまうのである。これは「ブラックホールの情報パラドックス」と呼ばれる。

この「ブラックホールの情報パラドックス」だが、スタンフォード大学の物理学者レオナルド・サスキンドはこのようなパラドックスは起こりえないと証明できるとして、スティーブン・ホーキング博士と論争になっている。

結局、このブラックホールに人間が入るとどうなるかというのは現在も多くの研究者が研究中であり、パラドックスに関する完璧な解も存在していない。

ブラックホールに人が吸い込まれるとどうなるか、それは「まだわからない」が正解であるようだ。

 

もし地球の近くにあったら?

Credit: NASA/CXC/M.Weiss

ブラックホールが地球に迫ってくるというSF作品は、小松左京の『さよならジュピター』をはじめ数多く存在しているが、実際にそうなってしまったら地球はどうなるのだろうか。

JAXAによると、ブラックホールの大きさや距離によって地球に影響が出るか分かれるのだとという。例えば、月を0.1mまで圧縮するとブラックホールとなるが、それでは潮の満ち引きを始め、地球に影響はないそうだ。だが、月の位置に太陽と同じ大きさのブラックホールが出現すると、強力な重力によって地球は卵のように簡単に割れ、粉々になってしまうという。

例えばブラックホールが木星の位置にあったとしても、地球の起動が大きく乱れ、太陽と衝突したり衛星軌道からはずれて宇宙のどこかへ行ってしまうこともあり得るのだそうだ。

 

ようやく実物の撮影にたどり着いたブラックホール。人類が探究心を失わない限り、何年後、もしくは何百年後かわからないが、肉眼で観測できる日が来るのかもしれない。