アリエナクナイ科学ノ教科書:第18回  貴方がみている世界を私はみている ザ・メタ世界観

フィクションの登場人物が、その世界のフィクション性に気がついている。
その世界の成り立ちに気がついてしまったが故に神となる、読者・プレイヤーに語りかけてくる・・フィクションのタイプとしては、かなり異質ななりたちの世界で、創作物とそれを見ている、プレイしている人たちとの境界を曖昧にしていく、そうした雰囲気がメタフィクションと呼ばれているものです。

メタとはギリシャ語の「より次元の高い~」「より高みの~」といった接頭語で、フィクション(虚構)を踏み越えて現実に手をかける感じから、メタフィクションと言われるようになってます。
このメタフィクション的表現を略して「メタ発言」「メタ世界」、作品の受け手側から「メタ推測」「メタプレイ」などという言葉で使います。

「メタ発言」というのは、ゲームなどでよく見られるもので「会話が長いなと思って飛ばしたい時はAボタンを押すんじゃよ」とか、漫画の中で「これはアニメ化されたときに表現できないだろ!」みたいな台詞がそれにあたります。また、読者に向かって「さて、この中に犯人がいます、貴方は誰が怪しいと思いますか?」といった感じで語りかけてくるものもメタ台詞です。

逆にプレイヤー・読者視点でメタ視点で見ると、このキャラクターは役に立たないモブのくせに大物声優なので、おそらくこいつが裏切ってラスボスになる・・・とか、この尺ではこのキャラが犯人だと展開的におかしいので、ミスリード3回としてこいつが犯人・・・・といった制作サイドの都合を読み取ってしまう俗に言う「シラケる」楽しみ方の1つです。

寝ているときに見る「夢」は最も身近な自分で作った自分のための「フィクション」です。その夢の中で「これは夢だ」と気がつくことが希にあります。これは明晰夢と呼ばれるもので、うまくコントロールすると夢の世界なので自分の思い通りになんでも可能になります。

今回は、そうした視聴者と制作者の垣根ではなく、作品自体がそういった「メタ世界観」を内包するモノを全般的に「メタ作品」として科学的に考えていこうと思います。

●メタ世界観とは

このように舞台となる世界の1段上を認識してしまうことで、世界そのもののルールを覆す・・・そういったものをテーマとする作品も増えてきました。古いものでは、映画「マトリックス」。
スウェーデンの哲学者、ニック・ボストロムによるこの世は実は、高次元の知性体ないしは、コンピューターによるシュミレーションにすぎない。我々はその幻影の中で生かされている・・・という考えをSFに昇華したもので、我々の世界はすでに機械によって滅ぼされており、我々はコンピューターに電力を供給するための電池として巨大なバーチャル世界で飼われている・・・という設定です。

また、近年ヒットしたゲーム、ネタバレになってしまうので作品名は伏せておきますが、ゲーム中の主人公どころか、その世界の登場人物が、メタ世界であることを認識しているという異質なゲームで、何周もすることで謎が解けていくというメタミステリーなゲームで人気を博しています。

「Final Re:Quest -ファイナルリクエスト」という漫画動画作品では、忘れられたゲームカセットの中で目を覚ました一人のキャラがバグによって滅び行く世界を旅する中、プレイヤーの存在を認識するというかつて無いメタ世界観を出して話題となりました。

謎解きとメタ世界観を凝縮したSF作品に「百万畳ラビリンス」という漫画(上下巻)があり、これは少しでも解説するとネタバレになってしまうくらい凄い作品なので、気になる人は是非読んでみてください。

さて、メタ作品。広義で考えると、未来起こることが分かっている主人公、「生まれ変わったらXXだった」や「ループ世界」といった作品も同カテゴリーでしょう。

ループ世界は、一定の時間や日にちに閉じ込められて、なんらかの脱出方法を探すまで死のうが物理的に逃げようが、リセットされるというタイプの話です。
古い作品ですが、「恋はデジャ・ブ」(原題:Groundhog Day)という映画では、1日がループし続ける中、だんだんとその閉じ込められた街のすべてを把握する人間となっていきます。
またアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」では、ループそのものが作品の大きな鍵として描かれていました。いずれも、シナリオ的には技巧的なものが多く、作者の腕の見せ所・・・といった感じもします。

●メタ世界の構築

メタ世界観を出す作品の特徴として2つの世界観を1つの創作世界に展開しなくてはいけないということです。それがフィクションー読み手(リアルワールド)といった1軸なのか、フィクションの中のフィクションを俯瞰で見る形なのか、さらにそれが上位世界に干渉する・・・という多軸(話が複雑になって読解が普通に難しくなる)といった類いの話なのかまずは世界観を決めておかないといけません。

基本的にメタ世界というのは科学とは一見無縁のものですが、同時多発的にファンタジーな設定をドカドカ入れるとご都合感が出てしまいます。
時間をループする・・・という科学的にはどうしようもないものがある以上、それ以外のファンタジー要素があるとなんでもありなご都合設定な印象になりかねません。

メタ世界は外の箱、内側の箱という2層構造であるという世界構造をちゃんと把握していないと、矛盾が起こりやすい世界観です。

前著である「アリエナクナイ科学ノ教科書」(ソシム刊)でも、「タイムマシン」ものの話は、パラレルワールドがあるのかないのか、という点でいくつかのシナリオ上での制約が発生するという話がありましたが、ループモノでも、ループしているのに、ループ中での変更を勝手にループに加えたりすると、とたんに自分で作ったルールを破ることになり、これまたご都合感が出てしまいやすくなってしまいます。

●メタ世界の理由

「メタ世界」「ループ世界」が存在するとすればどういった科学的な裏付けがあればよいのでしょうか?

現在の物理学では、時間を戻ることは不可能です。ただ、理論上は観測は可能です。例えば、1万光年という光で1万年離れた距離に、ワームホールでもなんでもいいのですが、瞬時に移動して、その1万光年離れた場所から地球を超すごい望遠鏡で見ると1万年前の光景が見えるわけです。光が届くのに1万年かかるので、光よりも早く先回りできれば過去の世界をのぞき見ることは理論上は可能なわけです。6500万後年の彼方から見れば恐竜絶滅も見れるかもしれませんね。

メタ世界がSFとして描かれる場合、それが人の夢の中や頭の中、または、脳に投影されたバーチャルな世界であるということが多くあります。映画「インセプション」はまさにそれでした。

人間の脳に投影された嘘世界だった・・・という場合は、我々の人知を超えたスーパーなテクノロジーを持ったビッグブラザーが、地球人をコントロール、ないしはそもそも創造して・・・という壮大な設定が付いてきます。

そんな人間のようなカオスなものをシュミレーションなどできるか・・・という問題に関しては、こちらも既存の技術ではもちろん無理ですが、電子1つの振る舞いのレベルまでシュミレーションできると、これまたすべて予測可能ではないか(確率で分散するので無理とする論もある)とされています。
ようするに人間の思考さえ、超演算能力の世界の中では1つの結果としてアウトプットされてしまうわけです。

そう考えると、実は記事を読んでいる貴方も、もしかしたら高次元の存在が作ったアバターにすぎず、ただのプログラム・・・ないしは水槽に浮かぶ脳だけの存在だったりするかも・・・しれませんね。

くられ

*Discovery認定コントリビューター

サイエンスライター、Youtuber、大学講師第など幅広く活躍。「アリエナクナイ科学ノ教科書」(ソシム)日本SF大会主催 49回 星雲賞ノンフィクションを受賞。近著は化学の生化学の入門を楽しいキャラで学べる「毒物ずかん」(化学同人)、アリエナイ理科ノ大事典(三才ブックス)薬理凶室名義 などがある。現在週刊少年ジャンプ連載中の「Dr.STONE」では科学監修を務める。

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タイトルイラスト:夢路キリコ http://www.yumejikiriko.com/