ポケットの中のスマホが振動していると錯覚する「幻想振動症候群」…今すぐできる回避方法とは

私たちの生活において、もはや必需品と言えるスマートフォン。

通話はもちろん、メールやSNSを使った連絡からゲームにいたるまで、多くの人が公私ともに活用している。仕事先や大事な友人からの連絡がないか、常にチェックしてしまう人も多いのではないだろうか。

ポケットに入るスマートフォンが広く普及をはじめてから、ある現象が多く報告されるようになった。

それは、着信がなかったのにも関わらず、ズボンのポケットの中でスマートフォンのバイブレーション機能が作動したと感じる錯覚、「幻想振動症候群(ファントム・バイブレーション・シンドローム)」だ。

この現象は一体なぜ起こるのだろうか。そして錯覚を起こさなくする方法はあるのだろうか。

 

目次

  • 幻想振動症候群とは
  • 振動の錯覚はスマホ依存症のサイン?
  • 幻想振動症候群と同じような症状は他にあるのか
  • 幻想振動症候群を回避する方法

 

幻想振動症候群(ファントム・バイブレーション・シンドローム)とは

Credit: freestocks

1990年代からビジネスユーザーを中心に普及しはじめた携帯電話とポケットベルは、1999年になるとインターネットを活用した携帯向け複合サービスが日本ではじまるなどし、あらゆる世代に浸透していった。2000年代に入ると小型化した携帯電話は誰もが持っているものになった。

バイブレーション機能を有していた携帯電話の普及とともに、実際は着信や通知はないのに振動していると錯覚する「幻想振動症候群」を報告する人も増えていったのである。

「幻想振動症候群/ ファントム・バイブレーション・シンドローム(Phantom Vibration Syndrome)」という言葉が最初に使われたのは、2003年に米・ペンシルバニア州の地方新聞「ニュー・ピッツバーグ・クーリエ」に掲載された記事だと言われている。

 

振動の錯覚はスマホ依存症のサイン?

Credit: Gaelle Marcel on Unsplash

アメリカで行われた研究では、調査に参加した大学生の80%が幻想振動症候群の症状を一度は体験していることがわかっている。だが、1日に1回以上、頻繁に発生している場合は、スマホ依存症のサインかもしれない。

スマホ依存症とは、端的に言えば常にスマートフォンの通知などを気にかけ、画面をチェックしていないと不安になってしまう状態である。

2000年始めから半ばにかけて登場した、MySpaceやFacebookなどのSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)によって、インターネットを通じたコミュニケーションが爆発的に広がった。当初はPCが主流であったSNSだが、2000年代後半のスマートフォンの台頭によっていつでもどこでもリアルタイムで行えるものとなり、手元の端末には通話やメールの着信に加え、SNSなどからのプッシュ通知が頻繁に届くようにもなった。

Credit: William Iven on Unsplash

「誰かから連絡がきているかもしれない」「自分の書き込みに誰かが反応しているかもしれない」といった思いからスマートフォンをついついチェックしてしまい、やがてチェックをしていないと不安になる「スマホ依存症」に発展してしまうことがあるとされる。

カリフォルニア州立大学の研究チームが163人の大学生を対象に実施した調査では、携帯/スマートフォンユーザーが持つ「不安」によって、幻想振動症候群の症状が発生することが示唆されている。特に、スマートフォンのヘビーユーザーになるほど起こりやすいとされる。同大学の名誉教授ラリー・D・ローゼンは、不安に関する神経伝達物質によって、ズボンが擦れる際の振動といったあらゆる状況が、スマートフォンから来るバイブレーションだと脳が予想してしまうために起こるのではないかとしている。

 

幻想振動症候群と同じような症状は他にあるのか

Credit: Craig Cameron on Unsplash

動いていないものが動いていると錯覚する現象は、スマートフォン以外でも発生する。

よく知られているのが、船からおりた後に陸の上でも揺れている感覚が続く「下船病」という症状だろう。これは健康であっても起こる症状で、通常は数分から数時間、長くても数日でこの感覚はなくなっていく。

だが稀に、揺れている感覚がずっと続いてしまうことがある。人によっては数ヶ月、長いと数年も続くという。こうなると、日常生活にも大きな支障が出てしまうだろう。こういった長期にわたる症状は、電車での通勤やマンション内で地震に遭遇した際、水族館での勤務中に発症してしまった患者が報告されている。

「下船病」自体は15世紀の大航海時代から広く知られてはずだが、その発症原因は未だに不明のままだ。この症状には薬物やリハビリはあまり効果がないという。

幻影振動症候群とは発症の状況等が大きく異なるが、動いていないはずなのに動いているように脳が錯覚するという点では何か共通点があるのかもしれない。

 

幻影振動症候群を回避する方法

Credit: Brooke Cagle on Unsplash

幻ラリー・D・ローゼンは、幻想振動症候群はいつ通知かくるのかという「不安」から起こるものだとしている。この症状から抜け出すには、スマートフォンが起因する「不安」を解消することが効果的ではないかと説明する。

「不安」の解消方法はシンプルだ。90分から2時間おきに10分だけ外に出て、公園を歩いたり、瞑想をしたり、運動をしたり、音楽を聴いたり、歌ったりすれば良い。少しの間、スマートフォンをはじめとするテクノロジーから離れ、脳を落ち着かせることが、不安のレベルを大きく下げることに効果的だという。

他にも、SNSやメッセージ、スマートフォンの通知などをチェックする時間をきっちりと定めておくことで、幻の通知を受けることは少なくなるそうだ。