アリエナクナイ科学ノ教科書:第12回 フィクション? それとも実現可能? 特殊武器の可能性 後編

特殊武器編の後半となります。
現実世界の武器はナイフ、銃、以上! という感じです。槍や刀、弓矢などもありますが、実戦の最前線で使われている白兵戦の武器はこの2種類です。敢えて言うならこれに催涙スプレーや毒ガスなどの化学兵器、爆弾などが足される感じでしょうか。もはや武器というより破壊兵器ですが、今回は、そうした白兵武器の中でも実現可能そうなものに迫ってみます。

筆者はフィクションでしかあり得ない面白道具を実際に作ってみることも多く、写真のものは、そうした玩具の一部。大半が刃がついてそうで付いてない(笑)。

●素材系武器 ゴムロッド/特殊レイピア

さて、フィクションならではの変わりダネ武器の中には現実に存在してもおかしくないようなモノも存在する。その1つがゴムロッド。ビデオゲーム「ストリートファイター」シリーズに登場する、ロレントなる軍人キャラが振り回してる武器でさも存在しそうな武器で実在はしないようです。

ゴム製のロッドなのでゲーム中ではハイジャンプのバネにしたり、そのしなりを生かした武器として使われています。痛そうです(笑)。

ゴムは非常に種類が多いのですが、一番多いのがタイヤなどに使われる天然ゴム、輪ゴムなどの生ゴム、イオウを加えて弾性を持たせた加硫ゴム(実験器具のゴム栓など)。
イソプレンゴムのようなジエン系ゴムは屋外でさらされたり、化学薬品などの防護用に使われています。それ以外にもシリコーンゴムやフッ素系ゴム、さらには熱可塑性プラスチックの代表格であるポリエチレンの一部を塩素化した塩素化ポリエチレンなんかもゴムとして流通しています。

こうしたゴムをそのまま人間が握りやすい直径20~30mmくらいで棒状にすると、1mも長さがあると、実際は大半の素材でへなーっと重力で曲がってしまいます。これではなんとも頼りなく、逆に強度重視のゴム素材を使うとただの堅い棒となり、木刀と変わりありません。
なので、実際にこのゴムロッドを作ろうとした場合、ゴムの中心部を中空にして、いわゆる肉厚のゴムホースを作り、そこに適度に焼きの入った強力なスプリングを内蔵することで、ゴムのしなやかさと、体重をも支えられるようなバネを生かすことが出来ます。

ちなみにアメリカのナイフメーカーのColdSteel社は、ゴム武器を商品化しており、他にも馬上鞭や、鞭なんかを強化ゴム製で作っています。

ゴムのようなしなやかさに、加えて刺殺することができそうな突き属性を持った武器として描かれることが多いのが、レイピアです。

レイピアは17世紀頃のヨーロッパで決闘用の武器として作られたモノで実戦兵器ではありませんが、現在の冶金学の進歩により、わりとフィクションのものに近づけるようになっている筆頭武器かもしれません。

例えばチタンの鋼鉄の爆発圧接(爆着)複合素材などの場合、中心に鋼を入れて、そのまわりに異種金属となじまないことで有名なチタンを爆薬の爆発的エネルギーで無理矢理圧接したクラッド鋼などは使えるかもしれない。また、先端部はタングステンなどの金属でまわりはチタンかアルミニウムといった複合素材なども考えられます。

●チェーンソウが武器になる?

さて、漫画「血まみれスケバン・チェーンソー」でもメインウエポンであり、ゾンビ映画だけでなくサメ映画、それ以外でもB級モンスターパニック映画ではほぼほぼ無双状態になる超兵器・・・チェーンソウ。
実際に、木を数秒で切り倒し、氷も切り裂くことで知られているチェーンソウ。最近は電動モーターで駆動できるくらいの強力なモーターも登場してきているので、映画以上に、静かで猛烈な兵器になりそうです。

なぜあれほどまでに圧倒的破壊力を持ちながら、実際の兵器として運用されていないのでしょうか? 何かフィクション上でしか描けない問題でもあるのでしょうか?
よく言われるのが、チェーンソウは肉を絡め取ると小さい刃と刃のスキマに肉や脂が挟まり、即座に空転してしまい、入り込んだ血でモーターが故障して無用の長物になってしまうから・・・という説があります。

しかし実際は、そもそも生木はかなり水分の多いモノであり、氷像を作るのにも使われているので、血や脂ごときで壊れると言うことはありません。実際にチェーンソウの事故でも一瞬で大けがとなっていて、なによりシリアルキラーが遺体をバラバラにするのにチェーンソウを使ったという供述もあったりします。

そう考えるとチェーンソウは小型にして刀みたいにすれば、それこそ無敵ソード! になるんじゃないかと思えますね。
ただ、これは電動工具全般に言えることなのですが、電動工具はその性質から武器として致命的に使えない1点の問題があります。それは「正しく使わないと事故に遭う」ということです。
どういうことかというと、簡単で電動工具はその人類には到底固定できない凄まじいトルク(力と距離の積で純粋なパワーみ)の差があります。電動ドリルを人間の力で止めることができないように、電動の工具の前ではどんなに鍛えた人間も勝てません。

電動工具の最も注意しなくてはいけない、実際に講習などでも一番言われるのが「巻き込み防止」です。電動工具は一見おとなしく回っていても、凄まじいパワーで動いているので、そこにヒラヒラの服や、長い髪の毛などが少しでも触れるととんでもないパワーで巻き取ってしまいます。上着が巻き込まれたとおもったら上半身の皮や肉ごと機械に引きずり込まれるという労災事故は実際にあります。
対象に対してパワーが強いと同時に自分への危険性もどっこいどっこい、もしくはそれ以上あるというのが電動工具の怖さです(実際に電動工具と軍手の併用はNGで、どうしても破片が飛び散る場合は、巻き込まれたところがすぐに破断してちぎれるゴムの手袋や専用の手袋を使います)。

また、急に堅いものにぶち当たったり、角度が悪かったりすると工具自体がキックバックを起こします。
このキックバックが腕を肩より下になっていた場合、上半身まで工具が迫ってくる確率は低めで、まだふんばりが効きます。しかし、肩より上に電動工具、特に回転系電動工具を持って作業をするのは自殺行為で、キックバックが起こると人間の腕の関節の構造上腕の曲がる方向に工具が襲ってくることになるわけです。
つまりチェーンソウを振りかぶり敵にあてたときにキックバックすると自分の顔面を真っ二つにすることになってしまうわけです。

キックバックは一方方向に回転している工具に発生しやすいため、最近は電動丸鋸などでは逆向の刃がそれぞれ時計回り、逆時計回りの合わせで回転するという2枚刃式でキックバックを防止している工具なども出てきています。
また人間が手持ちしているから危険なのであって、固定が確実になる、例えばパワードスーツや強化外骨格、エクスアームといった機械補正がかかるのであれば武器化したチェーンソウは実用に耐える超兵器になるでしょう。
ただ現在の人類の戦争相手は人間なので、そうした特殊な状況が少ないので、実際に作られ使われていない・・・というだけでしょう。

武器というのは戦う相手によって作られるものなので、ある日宇宙から巨大昆虫型エイリアンが攻めてくるとか、そういった状況にでもなったら、戦闘用チェーンソウがお目見えするでしょう。

 

くられ

*Discovery認定コントリビューター

サイエンスライター、Youtuber、大学講師第など幅広く活躍。「アリエナクナイ科学ノ教科書」(ソシム)日本SF大会主催 49回 星雲賞ノンフィクションを受賞。近著は化学の生化学の入門を楽しいキャラで学べる「毒物ずかん」(化学同人)、アリエナイ理科ノ大事典(三才ブックス)薬理凶室名義 などがある。現在週刊少年ジャンプ連載中の「Dr.STONE」では科学監修を務める。

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タイトルイラスト:夢路キリコ http://www.yumejikiriko.com/