世界で改めて注目されるアポロ11号の月面着陸…アーム・ストロングの小さな一歩までの歴史とこれからの展望

地球から最も近い天体にも関わらず、長らく未知の存在だった「月」。

1969年になって、アポロ11号の船長ニール・アームストロングが人類としてはじめて月面へと足を踏み降ろした。NASAが1961年から1972年まで実施した「アポロ計画」で月に着陸した回数は、なんと6回にも及ぶ。

それから50年経過した今、中国の月面着陸成功や、アカデミー賞スタッフらによるニール・アームストロングを主人公にした映画の制作など、世界中から改めて人類による月面着陸が注目されている。

本稿では、人類の月への憧れの歴史とこれからの展望を語ろう。

 

地球から見上げ続けた月

Image Credit: Wikimedia Commons

満ち欠けをしながらほぼ毎晩その姿を見せる月は、有史以前から私達のそばにあり続けた。

また、月は私達の文化にも大きな影響を与えた。阿倍仲麻呂の和歌「天の原 ふりさけみれば 春日なる 三笠の山に 出し月かも」を知っている方は多いだろうし、それだけでなく和歌や古典文学でも月は何度もテーマになっている。

一方その科学的な観測は、17世紀初頭から始まった。たとえば天文学者かつ物理学者のガリレオ・ガリレイは、望遠鏡を使って月を観測し、スケッチを描いた最初期の人物のうちの一人だ。

しかし、人工物や人類が月に到達するまでは、まだ数百年も待つ必要があった。

 

無人機による観測の開始

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時は流れ、1950年代の冷戦時代に入ると、アメリカと旧ソビエト連邦は宇宙開発競争でしのぎを削るようになる。

1957年に初めて宇宙に到達した人工衛星「スプートニク1号」を打ち上げた旧ソ連は、1959年に探査機「ルナ2号」を月面へと到達させる。さらに1966年には、「ルナ9号」「ルナ10号」が初の月への軟着陸と月周回軌道への投入に成功した。

一方アメリカは、ソ連に遅れながらも「レインジャー計画」にて月に探査機を送り込む。そしてそれに連なる「サーベイヤー計画」では、月への探査機の軟着陸にも成功している。

 

最初に人類が降り立った日

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そして人類による月面探査の最初のクライマックスとなったのは、アメリカによる有人宇宙飛行計画「アポロ計画」だろう。

アポロ計画で使用されたのは、フォン・ブラウン博士が開発を主導した「サターンV」ロケットだ。全長約110mのサターンVは、現在でも史上最大のロケットとなっている。そしてサターンVには宇宙飛行士が乗り込む「アポロ宇宙船」が搭載されたのである。

アポロ計画ではまず8号、9号、10号が有人飛行を実施。そして1969年に打ち上げられた「アポロ11号」では、史上初めて人類が月へと降り立った。ニール・アームストロング船長による「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」というセリフは、あまりにも有名だろう。

 

アポロ計画での月探査

Image Credit: Wikimedia Commons

 

アポロ計画では、その後も12号、14号、15号、16号、17号と立て続けに、有人月面探査に成功。月から大量の資料を持ち帰ったり、後半では月面車を利用した探査活動も実施された。

しかし1972年のアポロ17号を最後に、人類は月から遠ざかってしまう。その背景には冷戦の終焉や対費用効果への懸念など、複雑な理由がある。

月面探査から離れたアメリカは、その後に軌道上を周回する宇宙ステーション計画「スカイラブ」を1970年代に実施。さらに、国際宇宙ステーション(ISS)計画につながることになる。

 

21世紀の月面探査

Image Credit: CNSA

長らく有人月面探査から遠ざかっていた人類だが、いよいよ転機が訪れようとしている。

まず、アメリカのトランプ大統領は「アメリカ人宇宙飛行士を再び月に送り込む」と宣言。この計画を実現させるために、月近傍を周回する宇宙基地「月軌道プラットフォームゲートウェイ」や、月面基地を建設するための準備を開始した。またこの計画には、日本も何らかの形で参加する予定となっている。

一方で、国際情勢の変化も目まぐるしい。現在アメリカの宇宙開発の最大のライバルは中国で、同国は月探査機を立て続けに送り込み、昨年末には「嫦娥4号」を月裏側へと着陸させた。これは、人類史上初の試みである。

さらに中国は、将来的な月面基地の建設を示唆。同国は宇宙ステーション「天宮」の建設も予定しており、今後もアメリカと中国の宇宙開発競争は激化するものと予測される。

さらに、民間企業による月面探査計画も盛り上がっている。米グーグルがスポンサーとなった月探査レース「Google Lunar XPRIZE」は残念ながら到達チーム無しで終了してしまったが、そのうちの複数の参加チームが独自の月探査計画や輸送サービスを発表しているのだ。

冷戦をきっかけとして加熱し、そして一時は停滞した月面探査。しかし今まさに、その導火線に再び火がついているのだ。

塚本直樹

*Discovery認定コントリビューター

IT・宇宙・ドローンジャーナリスト/翻訳ライター。フリーランスとしてドイツを中心にヨーロッパにて活動しつつ、日本でのラジオ出演やテレビ、雑誌での解説も。 @tsukamoto_naoki