5分でわかる!花粉症シーズンをできる限り快適に過ごすための豆知識

「花粉」と聞くと鼻がムズムズしてしまうそこのあなた。いまや日本人の約4割を苦しめている「花粉症」は初期療法が肝心なのをご存知だろうか?

風邪とは異なり、花粉が舞い始める少なくとも2週間前から適切な対策を取っておけば症状を軽減できるそうだ。

2019年の予報では早ければ九州・四国などで2月上旬から、近畿・東海・関東地方では2月中旬からスギ花粉が飛来する(『花粉症ナビ』より)。花粉シーズン到来前に、大事なポイントをつかんで備えておこう。

目次

  • 花粉症の原因
  • 花粉症の症状を訴える人は増えている
  • 春先だけとは限らない!
  • 花粉が飛びやすい気候と時間帯
  • 初期療法が肝心!
  • 信じる者は救われる?代替医療の数々
  • 将来的には食べて治せるかも?「花粉症治療米」

 

花粉症の原因

正式には「季節性アレルギー性鼻炎(鼻結膜炎)」と呼ばれる花粉症は、植物の花粉が原因となって起こるアレルギー疾患だ。

アレルギー疾患とは、体に入ってくるものに対して免疫作用、すなわち体を守る作用が必要以上に働くことによって起こる。花粉症の場合は本来なら無害であるはずの花粉に対して免疫作用が働いてしまう。なぜなのか。

かたち・サイズもさまざまな花粉 Credit: skeeze / Pixabay

スギ花粉が空気中に漂っているとしよう。鼻から吸い込まれたスギ花粉は体に「異物」と判断され、それに対抗するために免疫作用が働いて「IgE抗体」が作られる。免疫の働きを担う細胞の表面に抗体が付着すると「感作」が起き、いつでも異物と戦える準備が整う。

この時点ではまだアレルギー反応は起こっていないが、再びスギ花粉が体の中に侵入してくると免疫細胞が攻撃を開始し、ヒスタミンなどの化学物質を使って必死にスギ花粉を外に追い出そうとする。くしゃみ、鼻みず、かゆみ、咳などの症状が現れるのはこのヒスタミンなどの化学物質のせいだ。

低年齢のうちに花粉症を発症する子どもが増えている Credit: sweetlouise / Pixabay

よく許容量以上の花粉を吸ってしまうと必ず花粉症になるという『コップ説』を耳にするが、あながち間違ってはいない。花粉に対するIgE抗体を持っていても、花粉症を発症するかどうかは人それぞれの体質によるからだ。

許容量が大きい人はアレルギーを発症しにくい。ただし、花粉以外にも偏った食生活・寝不足・運動不足・ストレス・大気汚染などの要因が重なると許容量をオーバーして花粉症を発症しやすくなってしまうそうなので気をつけよう。

 

花粉症の症状を訴える人は増えている

花粉症は1963年に初めて報告された新しい病気だ。高度成長期に症状を訴える患者が増え始め、子どもの有病率もこの20年間で10倍以上に激増している。

空気中に漂うスギ花粉 Credit: Free-Photos / Pixabay

花粉症に悩む人が増えている理由はいくつかあるが、まずは戦後に行われた大規模なスギ・ヒノキの植林が挙げられる。日本の国土の12%、森林面積のじつに18%がスギ林と化したが、安価な木材が輸入されるようになったため伐採されずに残った。

手つかずのスギは適齢期を迎えて花粉を大量放出している。スギよりも成長が遅いヒノキが今後適齢期を迎えると、さらに花粉の量が増えることも懸念されている。

地球温暖化の影響でスギ花粉の飛散量が増えているとの研究結果もある。気候が植物の分布や生態に変化をもたらしているうえに、暑い夏はスギにとって花粉をたくさん作るために好都合らしい。

その他にも、食生活の変化や不規則な生活リズムなどが花粉症を発症しやすくしているのは前述したとおりだ。

 

春先だけとは限らない!

日本ではスギとヒノキの花粉に対するアレルギー反応が一番多いが、ほかにもハンノキ・シラカンバ(白樺)・オオバヤシャブシ・コナラ・クリ・オリーブ・ケヤキ・イチョウ・アカマツ・ネズ…とアレルギーの原因になりかねない植物は枚挙にいとまがない。それぞれ花粉を飛ばす時期が違うので、春先以降も花粉症の症状が改善しない場合は医療機関で検査をしたほうがいいだろう。

アカマツの花粉 Credit: adriankirby / Pixabay

上記はすべて木本(もくほん)植物だが、その他にもイネ科やキク科などの草本(そうほん)植物も花粉症を引き起こす要因となる。ブタクサ・カモガヤ・オオアワガエリなどがその主だった例だ。

日本には牧草として渡来したカモガヤ Credit: Free-Photos / Pixabay

スギ、ブタクサ(キク科)、カモガヤ(イネ科)は世界三大花粉症の悪名を連ねている。アメリカではブタクサ、ヨーロッパではイネ科の植物の花粉症が多い。

花粉症の英訳にあたる “hay fever” は「枯草熱」とも訳され、かつて欧米でサイロに干し草を入れる時にくしゃみ、鼻みずなどの花粉症の症状が出たのが語源だ。

 

花粉が飛びやすい気候と時間帯

主に花粉症の原因となるのは風媒花、すなわち風に頼って受粉する植物だ。その性質上、風に運ばれて宙に舞う。そのため、

  • 晴れて気温が高い
  • 空気が乾燥している
  • 風が強い
  • 雨上がりの翌日

上記のような状況が整った場合、花粉の飛散量は多くなる。

時間帯だが、お昼前後がピークだ。日が昇り気温が上昇してくるとともにスギ花粉も上昇し、風に運ばれやすくなる。風に乗った花粉が数時間かけて市街地に到達する頃にはお昼になっている。

意外な落とし穴は日没後と雨の日。日没後は気温が低下するとともに花粉も落下してくるために、地上付近の花粉密度が高くなるそうだ。雨の日に花粉は飛ばないと思い込んでいる人も多いのだがじつはそうでもない。雨つぶと一緒に花粉が地面からはね返されるので、やはり地上付近の花粉密度が高くなる。

 

初期療法が肝心!

先手必勝。花粉症に関しては花粉症シーズンの始まる前にアレルギー科を受診して薬を処方してもらうのがベストな対応だ。アレルギー症状を抑える薬の多くは効果が出てくるまでに1~2週間かかるからだ。

早めの薬物療法は花粉症の症状が出るのを遅らせたり、症状が出てしまっても軽減できたり、結果的に使う薬の総量を減らすなどの効果が期待できる。加えて、医師に処方してもらう薬の大半は第2世代抗ヒスタミン薬。眠気などの副作用が起こりにくいとされているので、仕事の一環で運転したり重機を操作したりする人には必須だろう。

ほかに長期的な治療法として「舌下免疫療法(または減感作療法)」もある。花粉を少しずつ体内に吸収させることでアレルギー反応を弱めていくものだが、アレルギー反応が完全に消えるケースは1~2割に留まるそうだ。

 

信じる者は救われる?代替医療の数々

「花粉症に効く」と言われているものは処方薬意外にもいろいろあるが、どれも科学的な根拠が確立されているわけではないようだ。ただ、毎日ヨーグルトを食べて腸内環境を整えるなどのセルフメンテナンスは花粉症に関わらず健康維持に有用なのでぜひ取り入れてみたい。

乳酸菌のほかに花粉症にいいとされている食品や療法をここにご紹介しておく。

甜茶・べにふうき茶・ドクダミ茶・柿の葉茶・ギムマネ茶・シジュウム茶・霊芝・羅漢果・シソジュース・小青竜湯(漢方薬)・ミント(ガム、アロマオイルなど)・プロポリス・クロレラ・青汁・アロエ・花粉グミ・スギ花粉飴・針灸・気功・温泉療法・鼻スチーム療法

(厚生労働省のウェブサイトより)

 

将来的には食べて治せるかも?「花粉症治療米」

アレルギー疾患はいったん発症すると治せないと考えられてきた。ところが、最近になってこの考え方を根本から覆す大発見があった。

体が戦うべき侵入者(アレルゲン)に対して抗体を作り、再度そのアレルゲンに触れることで感作が起きて免疫作用が働くことは冒頭で説明したとおりだが、その免疫作用を食い止める働きをする細胞の存在が明らかになったのだ。

ノーベル賞級の発見と名高いこの「制御性T細胞(Regulatory T Cell)」、通称「Tレグ細胞」を発見したのは大阪大学免疫学フロンティア研究センターの坂口志文教授だ。坂口教授の研究により、Tレグ細胞が体内に多ければ多いほどアレルギー反応が起こりにくくなることがわかった。したがって、スギ花粉に特化した免疫作用を止める働きをするTレグ細胞を多く体に取りこめば、花粉症自体を治せるようになると期待が高まっている。

Credit: zcf428526 / Pixabay

現段階ではまだ実用には至っていないが、イネに遺伝子操作を行いスギ花粉の成分を注入した「花粉症治療米」も開発中だ。これを炊いて食べるだけで、花粉成分が腸から吸収されて体内でTレグ細胞が作られるそうだ。Tレグが多くなればなるほど花粉に対しての免疫作用にストップがかかる。

恒久的に、しかも美味しく、花粉症を治せるという夢のような話。どうかはやく実現してほしい。

 

 

山田 ちとら

*Discovery認定コントリビューター

日英バイリンガルライター。主に自然科学系の記事を執筆するかたわら、幅広いテーマの取材やインタビューにも挑戦中。根っからの植物好き。植物好きなだけに、花粉症が疎ましくてしょうがない…。 https://chitrayamada.com/