植物にも感情はあるのか…実験が明らかにした事実とは

植物に話しかけたり音楽を聴かせたりするとよく育つらしい。小松菜やイチゴなどの農作物にクラシック音楽を聴かせる農家さんは実際いるし、ひもすがら植物の手入れに余念がないご近所さんの庭は青々と茂って見るからに元気そうだ。

「お水をたっぷりあげるね」、「きれいだね」――やさしく話しかけられた観葉植物は、まるで励まされたかのようにグンと伸びたり大輪の花を咲かせたりすることもあるようだ。植物の気持ちやことばがわかると自負する人さえいる。

これらの事象を総合して考えると、あたかも植物はこちらの気持ちや意図を理解する心を持っているかのようにも思えてくる。それどころか、目はなくとも見、耳はなくとも聞きながら、こちらの様子を伺っているのだとも…。

はたして、植物は感情や知性を持ち合わせているのだろうか。

長い間議論されてきたこの問題は1960年代のアメリカに発端した。バクスター博士のポリグラフ検査である。

 

バクスター博士の不思議な実験

クリーブ・バクスター(Cleve Backster)氏はアメリカ中央情報局(CIA)の元技術者。被疑者を取調べる際「ウソ発見器(ポリグラフ)」の使用を導入した功績で知られる。心のブレを波形グラフに記録し、欺瞞や焦燥を赤裸々にするという。

バクスター氏がポリグラフ検査を行った対象は人間に限らなかった。自分のオフィスを彩っていた観葉植物にポリグラフの電極を取りつけ、葉を湯に浸す・火をつけるような仕草をする…など、植物に乱暴を働いたところ、ポリグラフの針が大きく振れたという。

バクスター氏が実験に使った観葉植物、ドラセナ(イメージ)。Credit: Henry & Co. / Unsplash

植物のポリグラフ検査からはこんなことがわかったそうだ。

  • 植物には目がないけれどよく見える
  • 植物はひどいことをされる(またはされると感じる)とおびえる
  • 植物は死んだふりをしたり、気を失うことがある
  • 植物は感じ、考え、そしてそれらのことを覚えている。

バクスター氏は、植物には「primary perception」とでも呼ぶべき基礎的な感じる力が備わっていると結論づけた。さらに、人間もこの基礎的な感じる力を持ってはいるものの五感に邪魔されて感じられなくなっているとまで考えた。

 

再現不可能

興味深い発見だったが、残念ながらバクスター氏の実験は科学界から拒絶された。彼の実験には科学の鉄則である再現性がなかったのだ。多くの人がバクスター氏の実験を再現したが同じ結果を得ることはできなかった。

2006年には米ディスカバリーチャンネルの人気テレビ番組『怪しい伝説(原題:Myth Busters)』でも取り上げられた。番組ではグラント・キャリー・トリーの三人組が植物にいろいろとヒドイことをしたが、ポリグラフ(とより精密なEEG)に芳しい反応は見られないままに終わった。

Credit: Foundry / Pixabay

 

植物的コミュニケーション

では植物は感情を持ち合わせていないのだろうか。

たしかに、植物には見るための目もなければ考えたり覚えたりする脳も持ち合わせていない。しかし動物のような臓器を持たないからといって、自らの身を守るための知恵やコミュニケーション能力を持っていないと考えるのは短絡的ではないだろうか?

植物と動物はおよそ15億年前に共通の祖先から分岐して別々の進化の道を歩んできた。むしろ、その間に植物は独自の進化を遂げ、動物には理解できないコミュニケーション法を確立したと考えるほうが理にかなっていると筆者は考える。

地に根を下ろして動かない植物は一見受け身で無反応のように見える。しかし、動けないからこそ、植物は自分が置かれた環境に対して能動的にはたらきかけていることが最近の科学研究で明らかになりつつあるのだ。

今までわかっているだけでも、植物は音と化学物質を使って人間には感知できない方法で仲間に危険を知らせたり、植物同士で根の先から栄養素をやり取りしている。その植物間の交流が人間の「感情」に価するものなのか、それともまったく別のものなのか。

15億年分の進化の隔たりはとてつもなく大きい。わたしたちはまだまだ植物について知らないことが多すぎる。

Credit: Andrew Seaman / Unsplash

 

山田 ちとら

*Discovery認定コントリビューター

日英バイリンガルライター。主に自然科学系の記事を執筆するかたわら、幅広いテーマの取材やインタビューにも挑戦中。根っからの植物好き。つい観葉植物に話しかけるクセが…。 https://chitrayamada.com/