生涯のインフルエンザウイルスへの抵抗力は、子どもの頃の感染で決定されるかも

今年もインフルエンザが流行の兆しをみせている。

毎年罹る人もいれば、数年に1回、もしくは罹ったことがないという人もいるだろう。

実は近年の研究で、子どもの頃に初めて罹ったインフルエンザのタイプが、その後のインフルエンザに対する抵抗力を決める可能性が示唆されている。

 

なぜインフルエンザは人生で何回も罹るのか?

インフルエンザウイルスは表面に、ノイラミニダーゼ(N)とヘマグルチニン(H)という2種類の突起をもつ。インフルエンザのタイプはこのNとHを組み合わせて示されている(例:N1H1)。これら突起がウイルスの目印ともなるのだが、厄介なことにインフルエンザウイルスは毎年この構造を微妙に変化させる。

いわゆる免疫ができ、1度しか罹らないような感染症の場合は、ウイルスの構造を体内の免疫細胞が覚え、予め備えてくことで、2回目以降にウイルスが体内に入った際には、症状がでるまでに免疫細胞によりウイルスが抹殺されてしまうのだ。

しかしながら、インフルエンザウイルスの場合は上述したように、目印が変わってしまう為、体内の免疫細胞は即座に対応することができず何度も感染を繰り返してしまう。

Credit : Creative Commons

子どもの頃のインフルエンザ感染がその後の抵抗力を決める理由とは!?

残念ながら、その詳細な分子メカニズムは明らかにはなっていない。

しかしながら、子どもの頃に初めて罹ったインフルエンザのタイプがその後の免疫力を決めることは以下の調査より示唆されている。

・H5N1とH7N9のインフルエンザウイルスを調べたところ、1968年以降に生まれた年齢層はH5N1に罹りやすかったのに対して、1967年以前に生まれた年齢層はH7N9に罹りやすいことがわかった。

→1968年以前に流行したインフルエンザのタイプはH5N1と類似、1968年以降に流行したインフルエンザのタイプはH7N9と類似していた。

→子どもの頃に流行したタイプと同じタイプには罹りにくく、異なるタイプに罹りやすいことが示唆された。

・1918年に生じたスペイン風邪と呼ばれる世界的インフルエンザの流行の際、若い成人層のインフエンザ罹患者の割合が他の年齢層と比較して明らかに高かった。

・2009年のインフルエンザの世界的流行の際、高齢者の罹患者の割合が他の年齢層として明らかに低かった。

→上記調査と同様に、子どもの頃に流行していたタイプと異なるインフルエンザの種類が流行した際にはインフルエンザに罹りやすく、同一の場合は罹りにくいことが示唆された。

アメリカ国立アレルギー・感染症研究所は、500万USドル(約5億5千万円)を投じて、小児期のインフルエンザウイルスに対する免疫が生涯のインフルエンザへの抵抗力にどのような影響を与えるかの研究を行うことを決定しており、詳細が注目されている。

スペイン風邪流行時の写真 Credit: courtesy of the National Museum of Health and Medicine, Armed Forces Institute of Pathology, Washington, D.C., United States.
https://doi.org/10.1371/journal.pbio.0040050.g003

 

今まで、免疫ができないと思われていたインフルエンザ。今後さらなる調査により、インフルエンザ予防・治療に関する新たな知見が期待される。

しかしながら、現段階での一番の予防は規則正しい生活と手洗いうがいである。そして自らが罹った際には広めないように、医師の許可が下りるまで自宅で安静にすることも重要である。

みんなが安心して日々を過ごせるよう、まずは基本を心がけていきたいものである。

池田あやか

*Discovery認定コントリビューター

大学では薬学を専攻。科学の面白さを伝えようと、見て楽しい・触って楽しい科学イベントやサイエンスライターをしている。最近のお気に入りはモルフォ蝶の羽の構造色を利用したピアス。