2018年12月13日、米ヴァージン・ギャラクティックの宇宙船「スペースシップツー」が、試験飛行で宇宙空間に到達した。
同社は、宇宙旅行の実現に向けて長らく試験を続けてきたが、はたして民間企業による宇宙旅行は、どれだけ現実的なのだろうか。
航空機から分離する宇宙船

宇宙旅行と聞くと、ロケットによる打ち上げを想像する人も多いだろう。しかしヴァージン・ギャラクティックの宇宙船「スペースシップツー」は、別の方式を採用している。
まず、スペースシップツーは母艦となる航空機「ホワイトナイトツー」によって、高度15kmまで輸送される。そして母艦から切り離された後は、搭載されたロケットエンジンによって高度100kmを目指すのだ。
そして宇宙空間に到達したスペースシップツーは、地上の空港へと翼を使い滑空して帰還する。宇宙船の中からは青い宇宙を眺めたり、微重力(無重力)を体験することも可能だ。
高度100kmでなくても宇宙?

ところで、今回スペースシップツーが到達したのは高度82.7kmだ。これは、通常「宇宙空間」と言及される100kmよりも低いものだ。
実は、宇宙空間がどこから始まるかという定義は一つではない。確かに国際航空連盟(FAI)は100km以上を宇宙だと定義しているが、NASAや米空軍は80km(約50マイル)以上が宇宙空間だと言及するケースもある。
また今回機内から撮影された動画からもわかるように、高度80kmからでも宇宙の漆黒や丸い地平線を眺めることができる。乗客からすれば、どちらの高度でも「宇宙旅行」が楽しめるといえるだろう。
初の宇宙旅行はいつ始まる?

ヴァージン・ギャラクティックは宇宙旅行のチケットをすでに25万ドル(約2800万円)で販売しており、1年以内の商用運行の実現を目指している。
一方、米アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が率いる米ブルー・オリジンも、離着陸が可能なロケット「ニュー・シェパード」による宇宙旅行を計画している。こちらのチケットは価格は明かされていないが、来年にも販売が介される予定だ。
さらに米スペースXも、巨大ロケット「スターシップ(旧:BFR)」を使用した月旅行を発表。こちらにはZOZOTOWN率いる前澤友作氏と複数人のアーティストが乗り込む予定だ。
かつてはSF映画や小説の中だけの話だった、宇宙旅行。しかしもう何年もしないうちに、宇宙へ行って帰ってくる旅行が当たり前のものになるはずだ。
塚本直樹
*Discovery認定コントリビューター
IT・宇宙・ドローンジャーナリスト/翻訳ライター。フリーランスとしてドイツを中心にヨーロッパにて活動しつつ、日本でのラジオ出演やテレビ、雑誌での解説も。 @tsukamoto_naoki