NORAD「サンタクロース追跡」の意外な事実…冷戦時の軍事的PRが伝統になるまで

1955年から始まったとされる、クリスマスのNORAD(北米航空宇宙司令本部)によるサンタクロースの追跡。世界中の子供たちにプレゼントを配るサンタクロースが今どこを通過しているのかを追跡するというユニークなサービスだ。2018年は米国の政府閉鎖により政府機関の多くが閉鎖されているが、およそ1500人ものボランティアによって追跡を行うことが発表されている。

 

キャンペーンの由来

当時のシアーズの広告 Credit: パブリックドメイン

NORADによるサンタクロース追跡がはじまった由来として広く知られているのは以下のような内容である。

1955年のクリスマスイブに、シアーズ百貨店が開設したというサンタクロースへのホットラインの電話番号が新聞の広告欄に掲載された。だがその電話番号は誤って米コロラド州コロラドスプリングスにあるCONAD(中央防衛航空軍基地)のホットラインの番号になっており、多くの子供たちがそこへ電話をしてしまった。電話をとったハリー・シャウプ大佐がオペレーターに命じてサンタクロースの位置を調べ、子供たちに伝えたことからいわゆる「サンタクロース追跡」が始まった、とされるものだ。

この話は当時の新聞が報じた内容が多少形を変えて伝わったものだが、一部は事実ではない。

 

実際は軍事的なプロモーションだった当時の報道

事実はこうだ。

1955年の11月30日、シアーズの新聞広告に掲載されていたサンタクロースへのホットライン電話をしようとした子供が、間違ってCONADにかけてしまった。電話を取ったシャウプ大佐は子供からのサンタクロースについての質問に答えた。だが、間違い電話はそれ一本だった。

冷戦の真っ只中、ソビエト連邦によるミサイル攻撃の監視を目的に1954年に設立されたCONADは、組織の正当化と子供たちへのイメージアップのためにこの出来事を利用することにした。シャウプ大佐は、12月に正体不明機の追跡に用いていたボードにサンタクロースの写真を載せるパフォーマスを行うとともに、広報担当官に間違い電話の話を新聞社に知らせるよう伝えた。

それによって、CONADはミサイル防衛だけではなく、サンタクロースの追跡もしている組織であるという認識を世間へ広く浸透させようとしたのである。

ハリー・シャウプ大佐 Credit: パブリックドメイン

実際、その目論見はうまく行った。この一部作られた物語は教科書にも掲載されるようになり、CONADからNORADにその機能が受け継がれても、クリスマスシーズンになるとサンタクロースを追跡している組織として毎年話題に取り上げられるようになった。

 

伝統行事となった現在

いまや毎年恒例の行事となったサンタクロースの追跡。公式サイトやSNSでサンタクロースの現在位置がマップで確認できるほか、およそ1500人のボランティアが電話やPCを使って世界中の子供たちの質問に答えている。

はじまりがどんな理由であれ、クリスマスに子供たちを笑顔にしているキャンペーンであることは間違いないようだ。