南極で新たに発見されたペンギンパラダイス、紀元前から人知れず栄えていた

今年の3月、南極の最北端に位置するデンジャー諸島でアデリーペンギンの「スーパーコロニー」が発見され、世界中の生物学者が歓喜した。

なにしろアデリーペンギンの数は過去40年間減少し続けてきており、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストにも載ってしまうほど憂慮すべき状況。今回発見されたスーパーコロニーにはおよそ150万羽が暮らしていると推定され、いままで南極で確認されていたアデリーペンギンすべてを合わせたよりも多い数が新たに発見されたことになる。

下記の動画はアデリーペンギンでひしめき合うデンジャー諸島・ヘロイナ島の様子をドローンが撮影したもの。黒いゴマ粒のような影すべてがアデリーペンギンだ。なお、トライポフォビアを自覚している方は閲覧に注意していただきたい。

 

いないはずの場所に…

なぜこれだけの数のアデリーペンギンが今まで発見されなかったのか。

理由のひとつにデンジャー諸島の地形が挙げられる。「デンジャー(危険)」の名のとおり、この島々周辺の海域はほぼ一年中厚い海氷に閉ざされるため、上陸が極端に困難なうえに島影を見つけられないことすらあるそうだ。おまけにデンジャー諸島の島々は地図にのらないことも多いぐらいに小さい。

もうひとつは人間の思い込みだ。当初「デンジャー諸島にいるはずがない」とニューヨーク州立大学ストーニーブルック校所属の生態学者・リンチ准教授(Heather Lynch)を含む発見者たちは思っていたという。この人間の思い込みをくつがえしたのは、コンピューターアルゴリズムだった。

Credit: Giuseppe Zibordi and Michael Van Woert / NOAA NESDIS, ORA

 

ヒントは「フン」

発見の発端は2017年。リンチ准教授らはアデリーペンギンの生息状況を調べるために南極大陸を写し出した衛星写真をピクセルのようにつなぎ合わせてアデリーペンギンの姿をくまなく探し始めた。画像データの量は膨大で、作業は10カ月にも及んだという。

そこで、チームの一員だったNASAの科学者がアルゴリズムを開発してペンギンに関係すると思われる画像を自動検出できるようにしたところ、デンジャー諸島の写真が次々とフラグされ始めたのだ。

アデリーペンギンたちの居場所を割り出すのに役立ったのは「フン」。アデリーペンギンのフンの堆積物は主食であるオキアミの色を反映して巣のまわり一帯をピンク色に染める。このピンク色は衛星写真からでも確認できる。

リンチ准教授らは、アルゴリズムがフラグした衛星写真をたよりに実際デンジャー諸島に上陸し、現地調査を行った。そして新たな大発見を今月11月に発表した。

Credit: Brent J. Sinclair / Wikimedia Commons

それでもペンギンの数は減っている

チームの一員であるルイジアナ州立大学の海洋学者・ポリート助教授(Michael Polito)はヘロイナ島の地質学調査を行い、地中に埋まっていたペンギンの骨や卵のかけらなどを放射性炭素年代測定法で分析した。すると、デンジャー諸島のペンギンパラダイスは少なくとも2,800年前から栄えていたことが判明したそうだ。

2,800年前というと紀元前8世紀。人類が南極大陸の存在すら知らなかった時代だ。

さらに、1990年代をピークにデンジャー諸島のアデリーペンギンの数が減ってきていることもわかった。10~20%の緩やかな減少傾向だそうだが、人間の活動がほぼゼロに等しい孤島においてなぜ?

どうやら気候変動が原因のようだ。WWFによれば、温暖化の影響を受けるとジェンツーペンギンは繁栄する反面、アデリーペンギンのコロニーは衰退することもわかっている。

Credit: derdento / Pixabay

自然の生物を保護するには人間が干渉しないことが一番。しかし、気候変動のように制御しきれない人為的な現象が、地球の果てでひっそりと暮らす自然の生物たちをもおびやかしていることをデンジャー諸島は物語っている。

 

山田 ちとら

*Discovery認定コントリビューター

日英バイリンガルライター。主に自然科学系の記事を執筆するかたわら、幅広いテーマの取材やインタビューにも挑戦中。根っからの植物好き。アデリーペンギンが主役の『ながいながいペンギンの話』(いぬいとみこ 作・山田三郎 絵)は子どもの読み聞かせにおすすめ。 https://chitrayamada.com/