牛も壁もクリスマスを祝え!クリスマスの装飾を発案した聖人の思いとは

12月に入ると、町はクリスマスの光が満ちて気分も高揚してくる。

クリスマスツリーやイルミネーションは、キリスト教徒ならずとも日本でももはや12月の風物詩となっている。

クリスマスに、独特の飾りつけをしてイエスの誕生を祝うことを思いついたのは、13世紀の聖人アッシジのフランチェスコである。現法王フランシスコは、彼にちなんで法王名を選択した。アッシジの聖フランチェスコは、ヨーロッパでは最も人気がある聖人である。理由は、その人間的な温かみにあるのだが、クリスマスの飾りつけもその彼の性格を表す一事であるかもしれない。

 

祝日の中の祝日」、それがクリスマス!

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中世の冬は、暗く寒いものであった。冬至を数日過ぎ、わずかに日が伸びる12月25日は、キリスト教徒にとっては主の生誕を祝うのに力がこもったのは当然であっただろう。飢餓と隣り合わせにあった中世の人々にとって、「祝日の中の祝日」のクリスマスの特別なことといえば、お腹を存分に満たすことであった。

クリスマスの12月25日、肉の消費が格段に多かったのは中世からの伝統である。キリスト教会でさえ、クリスマスに肉を食べることを奨励していた。カトリックの国では、現代でもクリスマスイブの12月24日には肉を食べないという風習が残る。これは、翌日に肉を食べるための準備なのだ。

 

1223年から始まったクリスマスの飾り「プレゼーピオ」

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クリスマスの装飾といえば、クリスマスツリーがもっとも知られている。しかし、キリスト教の国々では、クリスマスツリーに加えて、イエス降誕のシーンを模型で再現した「プレゼーピオ」を目にすることが多い。24日から25日に変わる夜に置かれる赤子のイエス、聖母マリア、その夫ヨセフ、家族を囲む牛やロバなどの動物の置物を、各地で目にする。今年は、バチカンのサン・ピエトロ広場のプレゼーピオが、砂で造形されて話題になっている。

これは、「祝日の中の祝日」を心から祝いたいと熱望していた聖フランチェスコが、ベツレヘム訪問後に刺激を受け、法王ホノリウス三世に特に願って1223年のクリスマスから開始した。この風習は、またたくまにヨーロッパ各地に普及する。それからおよそ800年、この伝統は連綿と続いてきた。

 

動物も壁も腹を満たせ!

聖フランチェスコは、清貧をモットーとした人であったから、食べ物には恬淡としていた。その彼でも、クリスマスだけは別であった。それは、ただひたすらイエスの誕生を祝いたいという純な思いがあったためである。

人間だけではない。小鳥に説教したことでも有名な聖フランチェスコは、動物を心から愛し、クリスマスには牛やロバやヒバリもいつもよりお腹を満たして幸福感に浸るべきだと考え、実際に実践したという。聖フランチェスコの伝記を書いたチェラーノのトマスによれば、聖フランチェスコは弟子に「私は、壁でさえも主の生誕を祝うために、ごちそうを食べるべきだと考える。せめて、壁に肉をこすりつけてその思いを伝えたい」と語ったという。

聖痕を受けるほどイエスへの思いが強かった聖フランチェスコだからこそ、たどり着いた思いなのかもしれない。

 

クリスマスの飾りを早めにする=幸福な人 現代の心理学者の研究

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ところで、最近の研究では「クリスマスの飾りを早めに行う人は幸福である」という結果がニュースになった。

英国の心理学者スティーヴ・マッキーオンの主張するところによると、ハロウィンが終わってすぐにクリスマスの飾りつけをしたいと望む人は、幸福感が人よりも高いのだという。これは特に、幼少期に幸せなクリスマスを過ごした人に多く見られる兆候で、ストレスと不安に満ちた生活の中で、幸福な思い出と直結するクリスマスへの思い入れが、早めの飾りつけという行為に現れるのだとか。

光あふれる現代も、暗黒といわれる中世も、クリスマスに感じる人間の高揚感は変わらないのかもしれない。

Sachiko Izawa

*Discovery認定コントリビューター

イタリア在住ライター。執筆分野は、アート、歴史、食文化、サイエンスなどなど。装丁が気に入った本は、とりあえず手に入れないと気持ちが落ち着かない書籍マニア。最近のひとめぼれは、『ルーカ・パチョーリの算数ゲーム』。@cucciola1007