自分の意志で動きまわる「植物サイボーグ」誕生!DIYキットも販売予定?

常にナナメ上を行く独創的な研究で知られる米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボが、このたび「植物サイボーグ」を開発して話題を呼んでいる。

植物サイボーグとは、植物そのものが営む電気化学的なメカニズムをデジタルインターフェースにつなげることで、植物が意図するままに動き回れる「Elowan」。ロボットが植物を制御しているのではなく、植物自体の営みが指令となってロボットに伝わりアクションを起こす。

Elowanの場合、それは車輪がついた台車を乗りまわすアンスリウムに具現化されている。ツヤツヤしていかにもやんちゃそうなアンスリウムの鉢には銀の電極が何本か取り付けられており、それを伝わる電気信号が電子信号に増幅・変換されてロボットを動かしている。植物は常に光のある方向へ生長するので、鉢自体が光源に寄っていく。

ちなみに「Elowan」とはケルト語で「光ある」という意味だそうだ。

 

サイボーグ植物学

Credit: Harpreet Sareen

Elowanの開発者はハルプリート・サリーン氏(Harpreet Sareen)。現在はパーソンズ美術大学にてインタラクションデザインの助教授職に就いているサリーン氏に開発のきっかけを伺ったところ、もともと人間が人間のためだけに開発するアプリには限界を感じていたとメールで応じてくれた。

ならば植物や動物のためにデジタルなデバイスを開発したらどうなるか?と想像してみたのが出発点で、やがて「サイボーグ植物学」というコンセプトにたどりついたそうだ。

サリーン氏は植物のセンサーとしての能力に注目した。植物は電気信号と化学物質というふたつの伝達メカニズムを通じて光・重力・湿度・温度・接触や受傷(攻撃)に対して反応する。これらのセンサーが、人間が作り出すデバイスと同じはたらきをしていると気づいたのだそうだ。たとえば人間は土の中の湿度を知るために湿度計を使うが、植物は湿度をそのまま自然に感知しているといった具合だ。

Credit: Harpreet Sareen

 

進化を加速させる

人間は自然に生えていた植物を栽培することによりその植物の持つ好ましい特徴を伸ばしたり、逆に人間にとっては不必要な部分を削いだりしてきた。

観葉植物であれ、農作物であれ、それらの植物はもともと自生していた場所から切り離されて室内や田畑へ移され、激変した環境を生き抜いてきた。そして人間は、栽培種の育成のためにテクノロジーを駆使して微気候(マイクロクライメイト)を作り出すことに苦心してきた。

Credit: Harpreet Sareen

しかし、テクノロジーを駆使して環境に適応させるのは人間中心の考え方だ。植物中心、自然中心の考え方で捉えた場合、もともとセンサーが備わっている植物を人間の持つテクノロジーとつないだら自然の進化を加速できるのではないか?

そう考えたサリーン氏は、もともと植物が持っている能力をデジタルな機械で拡張するElowanを開発した。

「植物は自己出力、自己再生、自己制御できる生物。人間が作り出す工業的なデジタルデバイスには決して超えられないものを持っている」とサリーン氏。「Elowanを開発したのは、植物の能力を拡張したらどうなるのかを世間一般に広く知ってもらうのが目的」だとも語った。

いずれはDIYキットとしてElowanを販売する予定もあるという。

Credit: Harpreet Sareen

そして植物のサイボーグ化は今後もどんどん進めていくそうだ。植物のセンサーを通じて光の量や湿度をモニタリングする新たなシステムや、植物を通じて印刷するシステムなどを構想中で、ゆくゆくは植物とデジタルなマシンが両方向でコミュニケーションを取れる「サイボーグガーデン」も開発するという。

未来のサイボーグガーデンには、光を求めてあっちこっちを行き交う植物たちの姿があるのだろうか。もし植物たちがデジタルデバイスを通じて人間に話しかけてきたら、なんというのだろうか。まったく新しいインタラクションデザインの幕開けとなりそうだ。

 

山田 ちとら

*Discovery認定コントリビューター

日英バイリンガルライター。主に自然科学系の記事を執筆するかたわら、幅広いテーマの取材やインタビューにも挑戦中。根っからの植物好き。マリモをElowan化したら面白いかもと思っている。 https://chitrayamada.com/