1秒の長さは走ると遅くなる…実は身近な「時空の歪み」

1秒の長さは、走ると遅くなる。その事実をご存知だろうか?

僅かな時間の変動をも測定する光格子時計をご紹介しよう。

1秒とは?

元々1秒の長さは地球の自転をもと定められており、地球が1回転する時間を24時間として、その86,400分の1(1 day/24 hr×1 hr/60 min×1 min/60 sec)を1秒としていた。

その後、地球の公転をもとに1秒が定められた時期もあったが、自転周期や公転周期は、僅かではあるものの変動することがわかり、より普遍的な基準をもとに時間の定めることになった。

現在では、世界の1秒はセシウム原子時計を基に定められている。

この時計は、絶対零度(-273.15℃)環境でセシウム原子が吸収するマイクロ波の振動数を基準としており、3000万年に1秒程のずれしか生じないとされている。

一方、光格子時計の精度は300億年に1秒の誤差といわれており、非常に精度が高い時計であることが分かる。

因みに、宇宙の年齢を138億年とされていることから、格子時計が1秒の誤差を示す頃には地球は存在しないかもしれない。

Credit : Creative Commons

変化する1秒の長さ。伸び縮みする時間とは?

ではなぜこれ程にまで精度の高い時計が求められるのだろうか?

通常の生活では、走っている時と歩いている時、山頂と時と梺で時間が変化しているとは感じない。

しかしながら、アインシュタインの特殊相対性理論よると、動いている物体は時間の流れが緩やかになるという。また、一般相対性理論によると重力がより強いところでも時間の流れは緩やかになるという。

従来のセシウム原子時計では、人が歩くスピードや1cm程度の高低差での時間のズレを測定することは困難であるが、光格子時計の精度を用いると、この様な僅かな日常生活で生じる時間のズレを評価することができるのだ。

光格子時計は、時間を知るための時計ではなく時間のズレを基に、物質の状態を確かめるための検出器的役割を持つ時計なのだ。

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新たな光格子時計がもたらす未来とは?

光格子時計は、東京大学香取秀俊教授により提唱され、今日では世界中で研究が行われている。

今年11月にWilliam McGrewたちの研究グループにより発見された新たな光格子時計は、時空の重力歪みを、地球の表面全体にわたって現在の方法より正確に測定できるという。

重力の歪みをよみとることで、マグマや海面の変動により変化を感知することができ、気象現象の変動を予測精度向上に貢献することが考えられる。

さらには、2016年にノーベル物理学賞を受賞した重力波の検出、一般相対性理論の検証や暗黒物質の探索に利用できるとされており、宇宙の解明に寄与することが期待される。

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時計はもはや時刻を知るだけのものではないようだ。

慌ただしい年末。時計の時刻に追われるだけでなく、立ち止まり時間の不思議についてふと考えてみるのも良いかもしれない。

 

池田あやか

*Discovery認定コントリビューター

大学では薬学を専攻。科学の面白さを伝えようと、見て楽しい・触って楽しい科学イベントやサイエンスライターをしている。最近のお気に入りはモルフォ蝶の羽の構造色を利用したピアス。