「サイレントディスコ」とはヘッドホンをつけた人々が同じ音楽を共有しながら踊りまくるパーティーのことで、ヘッドホンをつけていない人からしてみたら無音状態なのでこの名がついた。
90年代に始まったとされているが、ワイヤレステクノロジーの普及で自由度が飛躍的に高まり、最近ではメジャーな音楽フェスなどでも夜間の野外イベントでサイレントディスコ形式を取る傾向が高まってきている。
ところが、いざサイレントディスコが街に繰り出したとたん、まったくサイレントではなくなってしまう事例がイギリス・スコットランドの首都、エジンバラで問題になっているようだ。
ご覧のとおり、ノリノリの連帯感と野外の解放感も相まって、サイレントのつもりがついつい大声で歌い出してしまう人が続出している模様。
大好きな音楽を共有しながらエジンバラの美しい街並みを練り歩く――なんだかとても楽しそうだし健康的なのだが、地元住民の反応は二極化している。
ぜんぜんサイレントじゃない
「サイレントディスコはサイレントではない」と語るのはエジンバラ市議会議員のジョー・モワット(Jo Mowat)氏。
Edinburgh Evening Newsのインタビューに「叫び声を上げたり騒いだりする人が多い」ほか、「サイレントディスコの団体が歩道を占領してしまったらほかの通行人が道路に降りて危険な目に遭わざるをえない」とも指摘している。地元住民や自治体からモワット氏ら市議会議員に寄せられる苦情は後を絶たず、議会は対応を迫られている。
他方、サイレントディスコ・ツアーの人気はうなぎ登りだ。国内外からサイレントディスコDJが集って数多くのツアーを開催しており、大勢の客が連日街並みを賑わせている。なかには車道に出て交通に影響を与えたり、同じ家の同じ窓に向かって同じ曲を一日何回もシャウトしているツアーもあるとか…。
サイレントディスコ禁止令も
あまりの苦情の多さからサイレントディスコを禁止した都市もある。2014年にはオーストリアのザルツブルク、2015年にはスイスのローザンヌにてサイレントディスコ禁止令が出された。いずれも夜通し野外で行われたサイレントディスコに対しての厳しい措置だった。
エジンバラ市議会がサイレントディスコを全面的に禁止するつもりはないという。それどころか、エジンバラ市自体が大みそかにサイレントディスコを企画中なのだそうだから、今後もしばらくディスコフィーバーは続きそうだ。
山田 ちとら
*Discovery認定コントリビューター
日英バイリンガルライター。主に自然科学系の記事を執筆するかたわら、幅広いテーマの取材やインタビューにも挑戦中。根っからの植物好き。たま~に音楽にノリすぎて、イヤホンを入れたまま屋外でついつい口ずさんでしまうことも…。 https://chitrayamada.com/