ガリレオからバトンタッチ!体温計が完成するまで

インフルエンザや風邪が猛威を振るう季節がやって来た。

この時期、日常生活の中に溶け込んでいる「体温計」の元祖は、17世紀初頭にこの世に登場した。「温度を測る」機械の発明には、ガリレオ・ガリレイが考案したアイデアが基礎となっている。

しかし、医学的な観点から「体温計」を作り出した医学者は、そのほかにも脈拍計や体重計など我々の生活に欠かせないものをこの世に送り出したことで知られている。

 

商品として存在する「ガリレオ温度計」

Credit : Pixabay

現在も、インテリアや雑貨の範疇で販売されている「ガリレオ温度計」。

比重測定原理を利用したこの温度計は、ガリレオのアイデアが温度計となったものである。1592年から1603年頃にガリレオが発明したといわれる温度計の元祖はしかし、外気温の測定のみが可能であった。当時のガリレオの周辺では、温度の測定の機械の発明がちょっとしたブームであったようだ。ガリレオの友人で物理学者であったジョヴァンニ・フランチェスコ・サグレードや、トスカーナ大公フランチェスコ二世も、温度計の発明に熱心であった。

「体温計」の発明者も、このガリレオのサークルから生まれるのである。

 

「体温計」の発明者は医療機器の分野に革命をもたらす

Credit : Wikimedia Commons

「体温計」を発明した医学者は、サントーリオ・サントーリオという。

医学の名門パドヴァ大学の教授であり、ポーランド王の侍医でもあった。また、温度計の基礎を作ったガリレオとは、肝胆相照らす仲であったとも伝えられている。

サントーリオが医学界に残した功績は計り知れない。体重、脈、体温、排泄物が、いかに医学の分野において重要であるかを認識していた彼は、自らを実験台にしてさまざまな試みを行い、体重計や脈拍計、そして体温計を発明した。医療現場に、数字で症状を特定する概念を持ち込んだのがサントーリオであった。

1612年に出版されたサントーリオの著作『ガレノスの医学の解説』によれば、彼は“驚嘆すべき方法”であらゆる場所の温度が測定可能となったと伝えている。この「あらゆる場所」には、人体も含まれていた。

また、1612年6月30日付で物理学者サグレードがガリレオ宛てに書いた手紙にも、「サントーリオが、首の部分が長いガラスの温度計を完成させた」記されている。

1636年に亡くなるまで、サントーリオはさまざまな温度計のモデルを設計したといわれているが、詳細はあまり残されていない。「体温計(Termometro)」という言葉が初めて登場するのは、1624年にフランスの数学者ジャン・ルルソンの著述である。

 

水銀を使用し正確さを極めた物理学者ファーレンハイト

とはいっても、サントーリオやガリレオの時代の「体温」は、測定する部位がまちまちであったようだ。ある記録によれば、心臓を病む病人の体温を「呼気」から測定したという。吐く息は、心臓から体外に排出されると信じられていたためだ。実際、サントーリオは手や口唇で体温を測定する温度計を数多く考案していた。しかし、温度計が完成に近づくのは、18世紀に入ってからである。

「華氏」という概念を生み出したドイツ人の物理学者ガブリエル・ファーレンハイトは、1714年に水銀と独自のスケールを使用した体温計を発明。これにより、より正確に体温の測定が可能になった。同時期には、オランダの医学者ヘルマン・ブールハーフェも、患者の体温の測定に成功している。

 

体温測定が医学の現場に普及するのは19世紀

Credit : Pixabay

体温計が医療の現場に普及するのは、19世紀半ばまで待たなくてはならない。

ドイツ人の医学者カール・ヴンダーリッヒによって、「発熱」や「体温測定」の科学的な解釈がなされ、医療において体温測定が不可欠なものとなった。ヴンダーリッヒが使用した体温計は長さが30センチもあったというが、彼よりも一世代後のイギリス人トーマス・オルボットによって15センチにまで小型化が進んだ。

日進月歩といわれる医学や科学であるが、高名な科学者たちの長年にわたる研究の恩恵を、我々は受け続けているのである。

 

Sachiko Izawa

*Discovery認定コントリビューター

イタリア在住ライター。執筆分野は、アート、歴史、食文化、サイエンスなどなど。装丁が気に入った本は、とりあえず手に入れないと気持ちが落ち着かない書籍マニア。最近のひとめぼれは、『ルーカ・パチョーリの算数ゲーム』。@cucciola1007