アリエナクナイ科学ノ教科書:第10回 火属性は音属性に弱い!? 氷・炎・雷! ファンタジーの属性理論 

火、水、風。火と水、そして風。これらがじゃんけんのように、それぞれに有利不利が決まっている。最近は、そこに雷、氷、闇や、光、森、土、なんて属性がゲームや漫画の設定に使われています。

森属性なので氷や水に強いけど、火に弱い。みたいな感じです。

今回はそうした「属性」を科学の目で見ていきましょう、新たな属性が見つかるかもしれませんヨ!?

●属性の由来

まずこれら属性の由来・・・・といってもゲームやファンタジーのご先祖にあたる、陰陽五行説の基本。木、火、土、金、水と、万物は5つの元素で構成されているという発想で、紀元前1900年頃の中国の皇帝「禹(う)」によって提唱されたもので、そこに陰陽思想を合わせてできあがったのが、陰陽五行説であり、どこかで見覚えがあると思いますが、ここに陰陽を象徴する日(太陽)と月を足したもの。

これ即ち! 月火水木金土日! 1週間!!

実は属性という考え自体は日本の曜日にもなっているくらいの非常に古い設定なわけです(当時は本当にこの世の物質は5つの物質で出来てると思われていたので、当時は科学だったわけですが)。

ゲームでは、だいたいそれぞれの属性に対して強い弱いが決められており、さらに光と闇みたいな2つの独立属性を持たせ、有利不利を相殺したり、倍々の強さを出す・・・という感じに使われています。
ただ、属性を増やせばキャラの魅力は増える反面、どの属性にどの属性が強いのか分からなくなり、ほぼ全てのゲームでは「属性相関図」といったものがネットに溢れ、「XXの倒し方 属性」みたいな検索候補がいろいろ出てきますね(笑)。

個人的には核属性とか、磁属性、波属性、超伝導属性、アモルファス属性とか非ニュートン流体属性とか・・・・不毛なのでやめておきましょう。

この連載らしく、まずは最初に「火」とはなんなのご存じでしょうか?

火は固体なのか? 気体なのか? まさか液体?

この質問意外と答えられる人が少ない質問です。

●火とはなんなのか?

小学校で教えられる「物質は 液体 固体 気体の三態」があります。物質というのは絶対にこの3つの状態のいずれかなのです! という戯言を小学生のときに聞いた自分は、ゴムは? ガラスは? 水飴は? 炎は? と先生を困らせる質問をしていた気がします。

固体というのは原子や分子が密に詰まった状態で分子の振動する以外できない状態です。
液体は分子や原子が振動異常に自由に動くことができて、入れ物に応じて形が変わる状態。
気体は分子や原子間の影響はほとんど無くなっている状態で、分子・原子間の距離に制限がないということは無制限に膨張可能という状態。

さて、この文面で「振動」ってなんよ? ってなっている人が多いと思うので説明しますと。振動とは=温度 のことです。実は温度というのはこの分子や原子の振動具合であると言えるわけです。

振動具合。よりワケワカラン・・・という人もいるかと思うので、かなり雑な説明になりますが、物質というのは絶対零度の状態(ー273.15℃)0K(ゼロケルビン)で完全に静止した震えゼロの、一切ぷるぷるしない状態になり、温度という概念の始まりの点です。むしろ温度というものがここをスタート地点として決定したものであるということです。
そして温度が上がっていくと、分子や原子がぷるぷるするエネルギーが強くなるので、固体は次第に溶け出して、液体は蒸発して気体となって、それぞれの分子間原子間が離れていくわけです。
だから化学反応の大半が、AとBを混ぜた後、加熱という「エネルギー足し」をしてやることで、ぷるぷるが活発になり、それだけAとBが出会う確率が上がって、よりうまく反応する・・・みたいなことを化学の実験でやっているわけです。

さて、気体の上には実はもう1つの状態があって、プラズマというものです。
これは、エネルギーがさらに加えられたことで、さらに元素や分子がイケイケになりぷるぷるしすぎて電子を放出してイオン化した状態・・・そのときに光を放出するので目視ができるわけです。
つまり炎というのは物質がイケイケになりすぎて己の存在自体が危うくなっている、もしくは崩壊している最中という高いエネルギー状態です。故に、炭に火をつけると光をだしつつ燃えつきるわけですが、炭は空気中の酸素と反応して二酸化炭素になりやすくなるわけです。それを邪魔するために酸素をナシにして無理矢理エネルギーを与えると表面がプラズマ化して光だけが出る。それが電球なわけです。

氷(固体)、水(液体)も炎(プラズマ)も風(気体)も、化学的には「エネルギーの差」でしかないわけです。そう、このエネルギーの移り変わり・・こそ実は本当の現代の陰陽五行と言えるかもしれません。

●これが現代科学に基づく属性表だ!

はい! こちらがエネルギーを軸とした属性表です。
前作、アリエナクナイ科学ノ教科書p177にも掲載したもので、6つのエネルギーとは何かを見ていきましょう。

エネルギーとはいろいろなモノが変化するときに変化するもので、経由が多ければ多いほどエントロピーが増大し、ようするにロスが増えていきます。

・熱
多くのエネルギーの中で最も利用が難しいエネルギーの最後の形とも質の悪いエネルギーとも言われます。というのも、ほとんどのエネルギーは効率よく変換することができ、特に熱エネルギーにはほぼ100%変換可能ですが、熱となったエネルギーは回収が困難でその熱のエネルギーで元のエネルギーの元をとることは不可能だからです。また他のエネルギーが別のエネルギーに変化するときに熱としてエネルギーが逃げてしまう、例えばCPUが電気で動く演算装置ですが、トンネル効果で電子が抜けていき熱として無駄にエネルギーが逃げて仕事に使われないわけです。しかも熱はCPU自体の性能を低下させるので、冷却が必要なわけです。
・核
熱の対極に位置するエネルギーで最も効率良くエネルギーが保持された状態というものです。例えば、ウラン235は原子炉で核分裂をおこし、その物質としてのエネルギーが熱エネルギーとして放出されます質量欠損のエネルギーはほんの少しでもドチャクソ膨大で、しかも核分裂は連鎖的に起こすことができるので、一度反応させれば、次々に熱エネルギーを取り出すことができるので、それで水を湧かしてそれでタービンを廻せば電気エネルギーが得られるわけです。ただ、核分裂後の物質は放射性物質なので自然界にはほとんど存在しない物質なので、取り扱いにも難儀な点があるわけです。ただエネルギーが安く手に入れることができるという点では原子力というのは圧倒的コスパと言えるわけです(政治的なアレな話はおいといて)。

・力
チカラエネルギー。頭痛が痛いみたいになってますが、力学の力です。
要するに物質が動く力、その場にある力。例えば、無重力の空間に1kgの発泡スチロールが静止していたとします。横にいる人がそれをはたけばパコーンと飛んでいきます。しかし同じように1tの鉄球が静止していたら、はたいた程度では動かせません。これが物質自体の質量というエネルギーともいえます。
また、普通に動力としての仕事こそこのエネルギーの形で、太古から水車を作って粉をひいたり、風車で粉をひいたり(粉ばっかじゃねえか)人類は自然の力を利用してきました。現在も、太陽のまわりを廻る地球というとんでもないエネルギーの移り変わりから生まれる風や水、波といったものを電気エネルギーにして使ってますね。

・電気
現代の人類にとって最も使いやすいエネルギーの形態であり、便利な状態です。特に化学エネルギーと相性がよく、かなり効率良く行き来ができるので、電池として愛用されているのはご存じの通り。

・化学
電気エネルギーとも相性が良く、またあらゆる物質にエネルギーとして蓄えられています。その代表が石油で、何億年も前に降り注いだ太陽光、光エネルギーを吸収して植物が育ち、それが二酸化炭素を固定するという方法で炭素源となり、それが地殻に埋もれて蓄えられたものが化石燃料、石油なわけで、化学エネルギーの基本であり、火力発電のような直結のものから、逆に二次電池のように電気エネルギーで化学反応を起こして、エネルギーを蓄えるなんてこともできます。故に手に取れるエネルギーという意味でエネルギー=電池みたいな印象があるわけです。

・光
熱に次いで回収が困難で逃げやすいエネルギーの状態です。ただ逃げやすいよく飛ぶという性質のおかげで、地球は太陽という猛烈なエネルギー供給をしてもらえるおかげで生命がエネルギーを循環させることができているわけで。太陽光は177兆kWで1時間も地球にくる太陽光を電気エネルギーなんかに変えることができれば数年の人類のエネルギー全量をまかなえるとさえ言われています。そんなエネルギーは太陽の中の核融合という核エネルギーが根源です。

●音で火が消え 水で火が付く 科学の世界

さて、なんかあまりにも理科っぽい話ばかりだったので、最後はロマンのある話でも。
このエネルギーという観点から、それぞれの属性を見ると不思議なことが起こります。

例えば、音で火が消えるという現象で、気柱の固有振動という物理現象で、ビール瓶の口に唇をつけて舞い具合に息を吹き込むとボーーっという変な音がしますね。リコーダーやクラリネットといった管楽器も基本的にこの気柱の固有振動という物理現象で音として我々が波を知覚しているわけです。
音というのは、空気や液体といった流体を伝わる「波」なわけですが、この波が特定の物体と共振という現象を起こすことができ、共振した物体は何も触れていないのに高いエネルギーをうけます。

モノが燃えているというのは、燃えている火が燃料を気化させて、それに引火して、また燃えて・・その下の燃料を溶かして気化して・・という燃え尽きるまで続く連続反応です。

ここにその物体にあった共振周波数の波を送ると、着火自体を邪魔することができ、その結果、連続反応が止められることで、消火に至るわけです。アメリカのジョージメイソン大学の学生が2015年に「音」を使った消火器Youtube動画に上げて話題になっていたので覚えている人もいるかと思いますが、原理自体はそういったものとなります。

逆に共振することで物質を崩壊させたりすることも可能で、それを武器として使う設定を盛り込んだSF作品がすでにあり、1999年に放送されていた「ベターマン」では、そうした共振周波数を武器に主人公が戦っていました。

また、エネルギーの観点で、「発火」を見ると、モノの発火点に達していればよいだけなので、水蒸気も高温高圧にすることで200℃、300℃といった温度にすることも可能で、そうした水蒸気は、紙やマッチのような燃えやすいもの(発火点が低いモノ)は着火することが可能です。
水蒸気で発火するとはこれ如何に・・・と思いますが、すでにスチームオーブンレンジなどの調理器具で便利に使われている技術なのです。

そういうわけで、属性もエネルギーという軸でみれば、また別の見方ができることがおわかりいただけたでしょうか?

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<お知らせ>

本連載も10回目となり、2018年は最後の更新となり、しばらくお休みをいただきます。
次の更新は年明け1月の中頃から、再開しますので、お楽しみにしていただければ幸いです! それでは一足お先に、良いお年を!  (くられ)

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くられ

*Discovery認定コントリビューター

サイエンスライター、Youtuber、大学講師第など幅広く活躍。「アリエナクナイ科学ノ教科書」(ソシム)日本SF大会主催 49回 星雲賞ノンフィクションを受賞。近著は化学の生化学の入門を楽しいキャラで学べる「毒物ずかん」(化学同人)、アリエナイ理科ノ大事典(三才ブックス)薬理凶室名義 などがある。現在週刊少年ジャンプ連載中の「Dr.STONE」では科学監修を務める。

https://www.cl20.jp/portal/

タイトルイラスト:夢路キリコ http://www.yumejikiriko.com/