ユヴェントスのユニフォームからストライプが消える?伝統とマーケティングの間で揺れ動くデザイン

ネット全盛の現代では、機密の保持は難しい。

2019年から始まるセリエAのシーズンの秘密が、早くも漏れた。それは、名門ユヴェントスのユニフォームの新企画である。

ユヴェントスのスポンサーであるスポーツ用品のブランド「カッパ」が考案した新ユニフォームは、なんとユヴェントスのシンボルともいうべきストライプが消えるのだという。

伝統とマーケティングのあいだで、ユヴェントスのユニフォームはどんな変化を遂げようとしているのであろうか。

 

ストライプの幅を増減させた過去から決別、ストライプ削除!

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1897年からの歴史を誇るユヴェントスは、当初はピンクがシンボルカラーであった。しかし、それがあまりに女性的であったために黒いネクタイをつけたという愉しい逸話がある。

現在の黒白のストライプが定番となったのは、1903年のことである。それ以来、黒と白のストライプはユヴェントスのシンボルとなり、ファンからは愛され敵からは憎悪の的になってきた。毎年変化するユニフォームではあったが、ストライプの幅が広くなったり狭くなったりあらゆるヴァージョンは登場したものの、白黒のストライプは不変であったのだ。

それが、2019年からは消えるのだという。噂によると、ユヴェントスのスポンサーとして9年間ユニフォームのデザインに携わってきた「カッパ」が、過去のユニフォームとは趣を異にすることでファンたちに新たなユニフォームを買わせるための戦略ともいわれている。来シーズンのユヴェントスのユニフォームには、前面に2本、背面に1本の黒の線が入るのだという。しかし、どう見てもそれは「ストライプ」には見えないだろう。伝統を愛する往年のファンたちが、違和感を覚えるのも当然かもしれない。

「カッパ」のマーケティング部門は、伝統的なユニフォームのデザインは変更しないに越したことはないものの、伝統と革新の境界を超えなければならない時期がある、今こそそれだ、と語る。10年前に買ったユニフォームを着続けられたら、商売あがったりというのが本音らしい。

 

過去への栄光再利用、カリアリ

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もっとも、ユニフォームの斬新なデザイン変更は、ユヴェントスだけに限らない。

セリエAの中では、サルデーニャのカリアリはユヴェントスとは逆に懐古主義である。つまり、チームが全盛で伝説的な選手が身につけていた時代のユニフォームを、再び復活させるというストラテジーである。カリアリのユニフォームの特徴は、襟の美しいデザインにある。カリアリには、1963年から在籍したジージ・リーヴァという伝説的なサッカー選手が存在する。ナショナルチームでも活躍したリーヴァは、石頭と揶揄されるほど頑固なサルデーニャ人で知られていた。高額の移籍金を提示されたにもかかわらず、ユヴェントスへの移籍をを断り終生カリアリに忠誠を誓い続けたのである。彼の時代のユニフォームは、まさにこの美しい襟元が特徴であった。

神話にちなむユニフォームを身につけることは、選手にとってもファンにとっても心構えが変わるのかもしれない。さらにカリアリはサルデーニャ島のシンボルである4つの横画を持つモーロ人の盾をデザインに使用している。中田選手が一時期在籍していたローマが、古代ローマ建国にちなむ「狼」をシンボルにしているのに状況は似ている。つまり、サッカーへの愛と郷土愛によって、ファンたちの団結感がより高まる効能があるのだろう。

 

ユニフォームデザインのハト派、ナポリ

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こうしたユニフォームのデザインの変更に我関せず、のチームも存在する。地中海の青色一色をチームカラーとするナポリである。

ナポリの青は、地中海と空の色という説のほかに、ナポリを治めていたブルボン王家とアンジュー家のロイヤルカラーにちなむという説もある。いずれにしても、ナポリのファンにとってこのユニフォームの変更は永遠にありえないとナポリのクラブ関係者は語っている。ナポリの会長コッラード・フェルライーノは、「ナポリのユニフォームは、30年前からあまり変わっていない。マーケティング的には、収益はゼロと言っていいでしょう。それでも、このユニフォームにスクデット(優勝のシンボルである盾)がつけばおつりが来ますよ」と悠々としたものだ。

 

 アウェーとサードデザインには苦労する各チーム

ユヴェントスの革新的なユニフォームの変更が話題になっているのは、ストライプが消えるユニフォームが「ホーム用」であるという点にある。ホームのユニフォームのデザインは、それこそチームの顔である。伝統的なデザインを死守するチームが多いのである。

逆に、アウェー用とサードデザインになると、選択も自由になるぶん知名度も低くなる。贔屓のチームの試合は仕事や家庭を犠牲にしてでも見る、というヨーロッパのサッカーファンはともかく、それに付き合わされる女性たちや幼い子供には、アウェーとサードのユニフォームは「識別不能」という事態も発生するのである。

 

 

Sachiko Izawa

*Discovery認定コントリビューター

イタリア在住ライター。執筆分野は、アート、歴史、食文化、サイエンスなどなど。装丁が気に入った本は、とりあえず手に入れないと気持ちが落ち着かない書籍マニア。最近のひとめぼれは、『ルーカ・パチョーリの算数ゲーム』。@cucciola1007