人工的な材料から作られた「人工皮膚」。昨今、世界中で研究・開発がめざましい人工皮膚は、やけどなどの医療用やスキンケアなどの美容業界にとどまらず、様々な分野での応用が期待されている。人工皮膚によってもたらされる未来には、どんなものが生まれるのだろうか?
皮膚感覚があるロボットの誕生!?
人工皮膚をベースに基盤やLEDなどを搭載しているのが、電子人工皮膚「Eスキン」と呼ばれるものだ。このEスキンを応用して、やがてロボットが触覚すら持つことが可能になると考えられている。
米スタンフォード大学が2018年11月に発表した研究で、まるで人間のような皮膚感覚を有するロボットの電子手袋が開発されたことがわかった。この電子手袋の指先はEスキンで作られており、物の強度や圧力の方向、温度といった刺激もわかり、ブルーベリーのような柔らかい物でもつぶさずに持ったり、やさしく触ったりすることができる。
この技術がさらに進めば、医療で用いられているロボットにこの皮膚感覚の技術を応用して、患部を繊細に触るといったことも可能になると考えられている。また、皮膚感覚を有する義手を医療用に開発することもできるかもしれない。
磁石人間の誕生!?
まるで肌にシールを貼るように、簡単に手の甲や腕、指先などに貼り付けられる、極薄のEスキンが開発されている。そんなEスキンに、睡眠時間や心拍数などの身体情報を計測する機能をつけてしまう技術も盛んに研究されている。今、腕時計タイプが主流のウェアラブル機器が、近い将来Eスキンになるという可能性を秘めているのだ。
そんなEスキンに、磁石の機能をプラスしたのが、ドイツのヘルムホルツ研究機構だ。長距離を移動する渡り鳥などは地球の磁場を読み取る能力があると考えられ、それによって目印もない海上などでも目的の方向に飛ぶことができると言われている。
それと同じように、人間も地球の磁場を見て方向を定めることができるようになる可能性があるのだ。コンパスも地図もいらない日がやってくるかもしれない。

人間の生活を大きく変化させる可能性を秘めた人工皮膚。今後の開発にさらなる期待が持たれる。
Makiko Sato*Discovery認定コントリビューター
雑誌編集者や広告のプランナー、コピーライターとして長年経験を積み、フリーランスのプランナー、エディターとして活動中。