考古学者vs悪質なトレジャーハンター…ポンペイで後を絶たない遺跡の盗掘

貴重な考古学の遺物や美術品を抱える国は、常にセキュリティーの問題に頭を抱えている。2001年にアメリカとイタリアの政府間で、古代の遺物の輸出制限について合意がなされた。2017年には、ギリシアとイタリアとの間で、美術品や古代の遺物の取引について協定が結ばれている。

にもかかわらず、違法な取引は後を絶たない。昨今の盗掘者や強盗は、背後で美術品の取引業者と蜜に手を組んでいるためといわれている。

そして今年、盗掘者によって掘られた地下道から貴重な古代の遺物が発見されるという体たらくとなった。

 

年々プロ化する強盗たち

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3年ほど前、イタリアのヴェローナで大規模な美術作品の盗難が起こった。美術館の閉館寸前、職員や鑑賞者が減り防犯がオフになっている絶妙な時間帯を狙ったプロの犯行で、17作品が強奪されている。奪われた17作品は、幸いにしておよそ半年後にウクライナで発見された。しかし、ルーベンスやマンテーニャの傑作が、ロシアや各国の富豪たちの居間を人知れず飾る可能性はゼロではなかったのである。

イタリアのポンペイでは、2015年に19人で構成された盗掘チームが逮捕されている。盗まれたのは、なんと1500点。総額160万ユーロに昇る。

そして今年の5月、ポンペイで摘発された盗掘者による「地下道」は、日常的に発掘を行っている考古学者たちの心胆を寒からしめる技術が駆使されていたという。

 

観光客が訪れる「ポンペイ」からはかなり離れた場所で行われていた「掘削」

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年間300万人以上の訪問者がある「ポンペイ」の遺跡。

しかし摘発された盗掘チームは、ポンペイ考古学公園から3キロほど内陸に入った場所を選択、ナポリを治めていたブルボン王家が有していたという掘削技術で古代の壁に沿って地下3~4メートルあたりを掘っていたという。地下道の幅はおよそ70センチ、この地下道を目の当たりにした考古学者たちは「まるで曲芸師の技」と感嘆しきりだったのだとか。

1700年代に建設された農家から人知れず掘られたこの地下道は、昨年の5月に警察の美術遺産保護部隊によって摘発された。

 

まさに盗掘者たちの夢、お宝どっさり!

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そして、この地下道からはその後、「ポンペイ発掘史上初」というおまけまでついた馬の遺骸が発見される。この馬は、その姿から当時の「貴種」であった可能性が高い。

貴重な遺物が盗掘者に持ち去られる前に摘発ができたことについては、関係者たちは安堵の息をついている。盗掘者によって発見された付近は、「チヴィタ・ジュリアーナ」と呼ばれる古代ローマの邸宅があり、内部にはまだ発見されていないフレスコ画などが残っている可能性があるのだという。

しかし、この盗掘者の摘発がされてわずか数か月後の今年10月、今度はポンペイの考古学公園内で盗難事件が発生する。事件が起こった「レージョ5」と呼ばれる地区は、ここ数年貴重な遺物が次々に発見されていることで話題になっていた。盗掘者たちによって、人骨の一部が被害を受けている。

考古学者や発掘チームは、「ポンペイが我々に与えてくれる驚嘆はやむことがない」と語っているが、それがゆえに盗掘も後を絶たず、盗掘者たちの巧妙さにも驚嘆せざるを得ないといったところか。

 

Sachiko Izawa

*Discovery認定コントリビューター

イタリア在住ライター。執筆分野は、アート、歴史、食文化、サイエンスなどなど。装丁が気に入った本は、とりあえず手に入れないと気持ちが落ち着かない書籍マニア。最近のひとめぼれは、『ルーカ・パチョーリの算数ゲーム』。@cucciola1007