鉄の錆びに凍らない液体…カイロのサイエンスと隠された秘密

寒い冬の救世主カイロ。

近年は使い捨てカイロだけではなく、繰り返し使用できるエコカイロというものも販売されている。

カイロはどうやって温かさを生み出しているのだろうか?

その化学的メカニズムをみてみよう。

 

鉄が錆びると熱ができる

“鉄は錆びるときに熱を発する”という原理を用いたのが使い捨てカイロである。

錆びるは化学的に、”鉄と酸素・水が反応し酸化鉄(水酸化第二鉄)になる”と表すことができる。この反応は熱を発することから発熱反応と呼ばれる。

しかしながら日常では、鉄は緩やかに錆びていくため、熱を感じることがない。

使い捨てカイロはこの鉄の酸化反応をコントロールすることで、効率よく熱を作り出しているのだ。

Credit:Creative Commons

使い捨てカイロの秘密

使い捨てカイロの成分は以下の5つ。

・鉄粉

・水:鉄が錆びるのを促進させる

・バーミキュライト:水を蓄える

・塩類:鉄が錆びるのを促進させる

・活性炭:鉄が錆びるのを促進させる

実は使い捨てカイロには、鉄が錆びるのを促進させるために水が含まれている。バーミキュライトは観葉植物用の土にも含くまれている保水効果のある人口用土であり、このおかげで大量の水を含むにも関わらず、開封前のカイロの中身は粉状である。

カイロを開封し、酸素が入り込むと酸素と水、さらには反応を進める塩類により鉄のサビが一度に加速され熱が産生される。反応が十分進み、鉄が錆びてしまうと熱を作り出すことができなくなりカイロは冷たく、少しザラザラとした感触になる。

液体が凍ると熱が出る

“液体が凍るときに熱を発する”という原理を用いたのがエコカイロである。

液体は凍る際に、液体自身の熱を外に放出することで自身の温度を低下させ凍る。

”氷を水にする際には温める=熱を与える必要性がある=周囲の熱を奪う現象” の反対と考えると、凍るときに熱が出るというのはイメージしやすいかも知れない。

しかしながら日常では、液体は徐々に凍っていくため熱を感じることがない。

エコカイロはこの液体を瞬時に凍らせることで、効率よく熱を作り出しているのだ。

Credit:Creative Commons

エコカイロの秘密

エコカイロの成分は”酢酸ナトリウム水溶液”のみと非常にシンプルである。

酢酸ナトリウム水溶液は60度程で凍る液体だが、徐々に温度を下げていくことで室温でも液体の状態を維持することができる。

実は水も-20℃程度までは、液体の状態を保つことが可能である。

このように、本来凍る温度以下でも液体の状態を維持する現象を”過冷却”という。

過冷却状態の液体は不安定であり、ショックを与えると一気に凍る。

エコカイロのスイッチを押すと、過冷却状態の酢酸ナトリウム水溶液が刺激され、瞬時に凍り始める。

この時、液体の持つ余分な熱が一度に放出されるため、エコカイロは暖かくなるのだ。

 

 

手のひらサイズの化学反応。

今年も恩恵にあずかる季節がやってきた。

体調を崩さぬよう温かくし、冬を楽しみたいものである。

Credit:Creative Commons

 

池田あやか

*Discovery認定コントリビューター

大学では薬学を専攻。科学の面白さを伝えようと、見て楽しい・触って楽しい科学イベントやサイエンスライターをしている。最近のお気に入りはモルフォ蝶の羽の構造色を利用したピアス。