演劇人を刺激し続けた心優しいモンスター「フランケンシュタインの怪物」、その多様なイメージ

正確に言えば、あの四角い頭が特徴のモンスターには名前がない。「フランケンシュタイン」とは、モンスターを生み出した科学者の名前である。「フランケンシュタイン」と聞いて思い浮かべるあのモンスターは、「怪物」としか呼ばれていないのだ。

1818年2月、うら若きイギリス人女性が執筆した小説『フランケンシュタイン』から生み出された愛すべきモンスターは、その後数えきれないほどの映画やドラマになった。

 

1931年の映画で定着したイメージ

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2018年は、「フランケンシュタイン」という小説が世に出てから200年にあたる。それを記念して、ヴェローナ大学では歴史家、心理学者、演劇や映画関係者も参加し、映画の上映も含めた「学会」が行われる。

2018年も終わりも11月になぜ?という質問に対しては、まず小説自体が「11月の物寂しい夜の出来事」という設定で書かれていることが一つ。

もうひとつは、1931年11月に上映された映画『フランケンシュタイン』に敬意をこめて、という説明がされている。なぜならば、我々が「フランケンシュタイン」と聞いて頭に描くあのイメージは、この映画でボリス・カーロフが演じたモンスター(まぎらわしいので、以後「フランケンシュタイン」で統一)によって決定的になったためである。ボリス・カーロフ演じる「フランケンシュタイン」のメークアップを担当したジャック・ピアースは、のちに「ハリウッドの伝説」と呼ばれるようになる。

ボリス・カーロフは、1939年に『フランケンシュタインの花嫁』、1939年に『フランケンシュタインの復活』にも出演、ホラー俳優としての地位を確立した。彼の後、さまざまな俳優がフランケンシュタインを演じたが、初代のインパクトが与えた影響は現在まで残る。

ともかくも、「フランケンシュタイン」はドラキュラや狼男、ゾンビとともに、映画に最も登場するモンスターの定番になったのである。

 

実験室で生まれた人間の心を持つモンスター

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吸血鬼や狼男とは違い、実験室で人間の手によって生まれたフランケンシュタインには、ほかのモンスターたちとは一線を画する特異性がある。醜い容貌の下に隠された、人間の心と高い知力である。

1988年に制作された映画『ゴッド・アンド・モンスター』は、映画『フランケンシュタイン』の監督であったジェームズ・ホエールの晩年が描かれた。ホエールは、同性愛であることに苦しんだとも伝えらており、1957年に自殺した。

『ゴッド・アンド・モンスター』では、監督自身の苦悩をフランケンシュタインに託したとも解釈されているのである。

心優しく知力に恵まれ、一方で醜い顔と苦悩にさいなまされ不幸になっていくフランケンシュタインの姿は、人々の同情をつかむ要素が詰まっているといえる。

 

「フランケンシュタイン」に触発された後発の映画たち なぜかセクシュアルなテーマに

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実際に、映画や小説で目にするフランケンシュタインには、幼子のような健気さや純粋さは感じても、セクシュアリティは皆無である。

それなのに、1970年代にはなぜか、性に絡んだフランケンシュタインのパロディ映画が多いのも事実だ。70年代の自由な空気が、ホエール監督へのオマージュとなったのであろうか。

たとえば、1974年にアンディ・ウォーホルが監修した『悪魔のはらわた』は、人間を創造する博士が男女の一対を作ろうとしたにもかかわらず、作り出した男が同性愛者になってしまうという内容だ。

また、1975年の映画『ロッキー・ホラー・ショー』に登場するモンスター「ロッキー」は、同性愛者の科学者フランクン・フルターが作り出した理想的な相手としてコルセット姿で登場する。

1970年代のフランケンシュタイン物の傑作としては、メル・ブルックスが監督した『ヤング・フランケンシュタイン』がある。ピーター・ボイル演じる愛すべきモンスターと大仰な動きの博士役ジーン・ワイルダーが、この映画に罪のない笑いをちりばめている。

 

Sachiko Izawa

*Discovery認定コントリビューター

イタリア在住ライター。執筆分野は、アート、歴史、食文化、サイエンスなどなど。装丁が気に入った本は、とりあえず手に入れないと気持ちが落ち着かない書籍マニア。最近のひとめぼれは、『ルーカ・パチョーリの算数ゲーム』。@cucciola1007