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右と左がわからなくなる「左右盲」…視力テストで不利、医療事故に発展したケースも

右と左。左と右。

頭の中ではわかっていても、とっさに判断を迫られると区別がつかなくなる、または区別するのに数秒かかってしまう時はないだろうか?そんなあなたは「左右盲」かもしれない。

「左右失認」、英語では「left-right confusion」とも言われる左右盲は、病気でも発達障害でもないのに右と左を感覚的に理解できないハンデを持つ。

特に顕著なのが運転時だ。例として筆者の実体験をご紹介しよう。私は人並みの運転能力を持つゴールド免許証保有者だが、ひとたび旅行先や初めての高速道路へ遠出をしたとたん凡ミスを連発する。なぜなら、運転しながら左と右を識別することが困難なのだ。

何度ナビに「左レーンにお進みください」と言われようとも右レーンを走り続けて曲がり損ねてしまったり、高速道路の入り口で「右!」と言われながらも左に入ってしまい、延々と逆方向へ走ってしまったり…。

ハンドルを切りながらナビを確認し、同乗者の話に耳を傾け、高速を降りるべきインターチェンジの名前を念仏のように唱えながらも同時に左右を識別するのは困難…というより、むしろ不可能に近いのだ。

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左右盲の人はこのほかにも日常的に不便を感じる場面が多い。例えば日本の視力検査時によく使われるあの「ランドルト環」。環のどの部分が空いているかを即答していくわけだが、左右盲の人にとってそれは視力の問題だけではなく左右認識の問題でもある。

しっかり見えていても右を間違えて左、左を間違えて右と言ってしまったり、答えるまでに時間がかかってしまい「見えていない」と思われることもしばしばだ。ちなみに上下は感覚的に理解できるため問題ない。

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そのほか、スポーツの試合中にコーチから「左に寄れ!!」と怒号を浴びせられてもとっさに指示に従えない、ゲームなどで左右ボタンを間違える、道を尋ねられてもうまく説明できない、逆に道案内してもらう身になってみても説明を理解できないなど、やっかいなことが多い。

これらの症状に身に覚えのある方はぜひこちらの「左右盲自己判断テスト」を受けてみてほしい。米ワシントン大学のチャドラー教授が開発し、上下感覚と左右感覚のズレを検知できる仕組みになっている。左右の判断が上下よりも著しく遅かった場合は、左右盲である可能性が高い。

 

病気や障害ではない

左右盲は病気ではないため、あまり科学的な研究対象とはなっておらず原因も解明されていない。しかし統計的には生まれつき左利きの人と女性が左右盲になりやすいそうだ。

生まれつき左利きの人は、比較的左右を理解しにくいといわれている。なぜなら幼少時に左と右を覚える手段として、多くの親が「箸を持つ手が右」と教えるためだ。左利きの子どもは自然に左手に箸を持つが、この左を「右」だと教わってしまった場合はふたつを混同してしまう。

また、幼少時に利き手を矯正した人は比較的左右盲になりやすいという。生まれつき左利きだったが箸や鉛筆を持つ手だけ右手に矯正された場合、大人になると動作によって利き手を使い分ける「クロスドミナンス」になりやすい。不完全な矯正は右と左を曖昧にし、ふたつの区別がつきにくくなってしまう。

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「左右」は「上下」「前後」と比べて感覚的に理解しにくいという点もある。頭の方向が「上」、視界が開けている方向が「前」など、前後上下に関しては判断する基準が存在するものの、左右にはそれがない。

女性は男性よりも空間認識が苦手な傾向にあるので左右盲になりやすいとの見解もあるが、決定的な科学的根拠はまだない。

 

左右を取り違えた医療事故も……

道を間違えるならまだしも、左右盲が原因で医療事故に発展する場合もあるという。

The Conversationによれば、最悪なのは左右を取り違えて手術を施してしまうケース。右の腎臓を摘出すべきところ、または左脚を切断すべきところを間違えてしまった医療事故は実際あったそうだ。

医師が患者と向き合った時に鏡合わせとなるために左右が逆転することも混乱の一因という。また、オーストラリアのクイーンズ大学ベルファスト校所属のゴームリー医師は「distraction effect」、すなわち「ジャマ」が大きく医療従事者の判断を狂わすこともわかった。現場が混沌に満ちていればいるほど医師や看護師たちは集中力を欠き、左右を間違えやすくなってしまうという。

自分を左右盲と自覚している人は、右か左の決まった腕に時計をはめたり、いつも同じ手で鞄を持つなどすると多少混乱を防げるようだ。手袋の左手に「L」、右手に「R」の英字がプリントされたものも判断基準となるかもしれない。

とはいえ、手術時も運転時もいかにジャマが入らないかが的確に左右を認識するための最大のカギとなるだろう。

 

山田 ちとら

*Discovery認定コントリビューター

日英バイリンガルライター。主に自然科学系の記事を執筆するかたわら、幅広いテーマの取材やインタビューにも挑戦中。根っからの植物好き。クロスドミナンスで左右盲。ついでに方向音痴…。 https://chitrayamada.com/

 

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