2018年10月11日(現地時間)、「ソユーズFG」ロケットが打上げに失敗した。
登場していた2名の宇宙飛行士は「ソユーズMS-10」宇宙船を分離し脱出。幸いなことに、両者に怪我はなかった。
今回のソユーズの打上げ失敗は、将来の宇宙開発にどのような影響を与えるのだろうか。
打上げ直後のトラブル

カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打上げられたソユーズは、離昇自体には問題がなさそうだった。しかし、数分後には緊急脱出を行うことになる。
ソユーズFGは3段式のロケットで、中央に第2段と第3段ロケットを配置し、その第2段を囲むようにして第1段ロケットが存在する。そして現時点での発表では、この第1段ロケットの分離に問題があったとされている。
上の画像は第1段ロケットの分離時に撮影されたものだが、白い光点がバラバラに位置していることがわかる。通常の打上げではこの光点は十字架のように綺麗に分離するので、第1段の分離に問題があったことは間違いないだろう。
なお打上げミッションの調査は現時点でも続いており、今後詳細が報告される予定だ。
宇宙船の安全性を証明

今回ソユーズに搭乗したのは、ロシアのアレクセイ・オブチニン宇宙飛行士とアメリカのニック・ヘイグ宇宙飛行士。2人は第56/57次長期滞在クルーとして、国際宇宙ステーションに滞在する予定だった。
2人を乗せたソユーズMS-10はロケットから分離後、パラシュートを使い地上に降下。降下地点には救急隊が急行し、2人の健康状態に問題がないことが確認された。
かつてソユーズは1967年に1号、1971年に11号が死亡事故を起こしており、また1975年と1980年にも打上げ関連の事故を起こしている。当時を知る宇宙関係者は、緊急脱出と効いた瞬間はヒヤリとしたことだろう。
なおロケットの打ち上げ失敗はもちろん大きな問題だが、宇宙船の脱出装置が無事に動作したことはロシア(と旧ソ連)の高い技術力が証明された形だ。
意外と早い打上げ復帰へ

現時点でソユーズロケットは宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)に送り届ける、唯一の手段だ。そのため、打上げ失敗による滞在ミッションへの影響が心配された。
しかし、ソユーズは早くも10月30日にISSへの荷物の輸送ミッションを実施。そして11月中にも2回の無人打上げミッションをおこない、打上げと調査結果に問題がなければ有人打ち上げを再開する予定だ。
さらに、NASAのチーフも「クリスマスまでには宇宙飛行士の打上げが再開されるだろう」と発言している。一時は国際宇宙ステーションの無人運用も話題になったが、なんとかそのような事態は防げそうだ。
塚本直樹
*Discovery認定コントリビューター
IT・宇宙・ドローンジャーナリスト/翻訳ライター。フリーランスとしてドイツを中心にヨーロッパにて活動しつつ、日本でのラジオ出演やテレビ、雑誌での解説も。 @tsukamoto_naoki