アリエナクナイ科学ノ教科書:第4回 ストーンのサイエンス 石ころから鉱石、宝石まで

今回は石の話です。
石とか大半の人が興味の範疇外、まさに石ころに興味を持つとか相当なマニアな話かと思うことかと思います。でもそれが宝石の話となると別、特殊な能力をもった石(パワーストーンとかインチキくさい話ではなく)から、ダイヤモンド以上の堅さの宝石までいろいろな話題が尽きません。

今回はそんな石についての話をさらっとしておきます。

宝石ってなんだろう

そもそも宝石ってなんでしょう? ピカピカの綺麗な石? それとも貴重な石?

実はこれといった定義の無い言葉で、化学的にはコレは宝石、これは岩石といった区別はありません。そこら辺に落ちてるチャートや蛇紋岩だって丸く綺麗に整形すればけっこう美しい見栄えのする石になります。ただ、それじゃ誰でも手に入るということで希少性が無い。故に宝ではない、故に宝石ではないというだけの話です。

最近はパワーストーンなんぞといろいろな鉱石が売られており、種類としては約4千種とも言われています、しかしその中でダイアモンド(正確な日本語ではダイアモンド、ダイヤモンドは口語とされている)をはじめとして宝石と呼ばれるのはたった20種類程度。
ダイア、アレキサンドライト、サファイア、ルビー、キャッツアイ、エメラルド、ヒスイ、オパール、トパーズ、真珠。俗に言う世界十大宝石と呼ばれ、良く見ると真珠は石ですらありませんネ。ご存じ貝の中にできるモノですよね。要するに希少で財産性のある石であれば宝石と呼ぶわけです。

だがしかし。化学の目で見ると、ルビーとサファイアは同じ酸化アルミニウムの結晶であるコランダムにクロムが混ざってるかチタンが混ざるかで色が変わるだけなので化学組成は同じ。

宝石が宝石であるには「希少」であるというのが大前提ですが、装飾品として使われることで人類と歩んできたわけで、当然「美しい」というのは大事です。そしてなにより丈夫であるというのが大切です。どれだけ美しい結晶であっても水や油に溶けてしまう石ではいかんのです(ウラン鉱石などは実際に水に溶ける)

さらに堅さも重要です。宝石の堅さを示す指針に「モース硬度」というのがあります。地学でも使われるのですが、宝石業界と地学では若干取り扱いが違い、地学のジャンルでは修正モース硬度やヌープ硬度が使われることが多いのですが話がややこしくなるので、宝石業界で基本の「モース硬度」で話を進めます。

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モース硬度
1:チョーク程度の堅さ。黒板に字がかける程度の脆さ
2:人間の爪でキズが付けれる。ツメの硬度はギリギリ2と覚えておくといい
3:金属でこすると容易に削れる。
4:代表的なのが蛍石。綺麗な石であるがこの硬度のため宝石にはならない。カッターで削れる
5:ナイフで強くけずろうとするとかろうじてキズが付くレベル、宝石としてはギリギリ
6:カッターやナイフの歯が立たない。宝石として扱われるヒスイがこの辺
7:水晶の堅さ。ナイフにこすりつけるとナイフにキズをつけることができる合格といえる強さ
8:紙やすり等に使われるガーネット。ガーネットで削れる宝石は価値が低いものが多い。宝石としてはトパーズがあたる。
9:コランダム(ルビー・サファイア)水晶にもトパーズにも勝る硬度。故に鋼玉と呼ばれる。
10:ダイアモンド つい最近までこれ以上の堅さは無かった。ほぼ全ての宝石を削れる石としても王者の風格です。

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モース硬度はもともとダイアを最強として10基準で作ったのですが、つい最近隕石の中に含まれるダイアだと思われていたものが、結晶構造が特異なダイアモンドであることが分かり、ロンズデーライトと命名されました。このロンズデーライト、ダイアモンドの上を行く強度を誇り、モース硬度に直すと15にもなってしまうのではないかと言われています。

また窒化ホウ素の中でもウルツアイトボロンニトライトと呼ばれる鉱物もまたダイヤを超える硬度であることが判明しており、ダイヤ最強伝説はすでに過去のものとなっています。ついでにダイヤは、掘削技術が近代化したおかげでかなり大量に存在することが判明していますが、世界的なカルテルのおかげで価格が高止まりしています(笑)。

選択透過性

宝石の特徴的な性質に色があります。多くの宝石が独特の色をしているということはそこを通って出てくる光の色が変わっているということです。これは実はすごいことで全然ばらばらの光を一定の波長に変換して排出しているわけです。
これを利用してレーザーのコアにルビーなどが使われます。
典型的なルビーレーザー

ルビーレーザーの例

なので、シューティングテーム、例えば「グラディウス」ではボス敵のコアがだいたいクリスタルっぽいものでできており、そこからエネルギービームを発射しています。
弱点はその中心のクリスタル。弱点なのは破壊すると、内部で処理できないエネルギーが暴走し、ぶっ壊れるからでしょう。

平和的な話ではアレキサンドライトは紫外線を吸収するため、合成アレキサンドライトを板状にしてスペースシャトルなどの窓に使われます。

ちなみに、モンハンにでてくる灰水晶もそういった用途かもしれません、このアイテムに近いと思われるのが煙水晶でしょう。モノはゲーム中のビジュアルに近い灰色から漆黒のものまで様々。放射線によって水晶が焼けたもので、可視光線をうまいこと減らしてくれる色合いと透明度をもちます。
かつてはこの煙水晶を板状に削り、それをサングラスにしていたということで、かの昭和天皇が愛用していたそうです。

工業部品としての宝石

ファンタジー世界では様々な鉱物がアイテムとして使われていますが、現実社会でも、わりと宝石はいろいろ使われています。
その代表選手が水晶。パソコンをはじめとする電子機器には水晶振動子というチップが搭載されており、きちんと名前の通り中には透明な板が入っている。これは完璧に透明な水晶の結晶であり、結晶を2つの電極で挟み込むことによって固有の周波数を作り出している。この水晶は天然の水晶でもいいわけですが、完璧に不純物のない水晶でなくてはならないため、天然の水晶から透明部分を切り出すのは大変・・・・ということで、前回紹介したような人工水晶が合成されて使われているわけです。
他にも手巻き時計なんかに宝石(ルビー)が埋まっているのを見たことがある人も多いかと思います。

ゲーム「モンスターハンター」などでも鋼石などの鉱石が様々な強度が必要そうな装備の素材となっていることが多いですが、おそらくはそうして使われているのでしょう。
ちなみにモース硬度9であるコランダム(ルビー・サファイア)の通称が鋼玉なのでその辺がモチーフになっていると思われます。

薬効のある石?

ゲーム中では防腐効果やケガを癒やす石などが存在しますが、そんなものがあり得るのでしょうか? 乱暴な感じでは、ヒ素系化合物は防腐効果が高いため傷の腐敗を妨げたりはできそうです。ヒ素といえば猛毒ですが、細菌に対しても毒性があるので、防腐効果があります。ヒ素を含む鉱物は多く、中には宝石的な輝きを持つものもあります。

実際にヒ素化合物であるエメラルドグリーン(亜ヒ酸銅の複塩)は、ドレスの着色などに使われて、洗わずとも匂わない(雑菌が繁殖しない)染料として使われた時代もありました(当然毒性があるため、現在は衣類には当然使いません)。

また江戸時代に使われていた化粧の「おしろい」は鉛白と言われ、その名の通り鉛の化合物(酸化鉛)です。毒性が低かったとはいえ、中毒も多く、付けることの多かった女性にその中毒が多く見られたそうです。

石を読めば ロケ地がわかる?

おしまいに、石ころについても話を少し。

我々の周りの石は、地質帯によって実は全然異なります。例えば、関西地方、関東、日本海側といったザックリとした区分けでさえ、川の石や、もっといえば地面を見ると砂の構成成分の違いから地域が判別可能です。

例えば関西は真砂土という石英の多い土壌で石英を多く含む花崗岩が風化し砂となっており土壌の構成成分となっているので白っぽいのです。特に京都は顕著に白い土壌が広がっています。

関東は赤黒い関東ロームが特徴的でしかも石も玄武岩が大半という特徴があります。故にドラマのロケ地なども河原や採石場が使われていますが、石の色あいを見るだけで、どこで撮影されたかというのをこっそり知ることができたりします(笑)。

くられ

*Discovery認定コントリビューター

サイエンスライター、Youtuber、大学講師第など幅広く活躍。「アリエナクナイ科学ノ教科書」(ソシム)日本SF大会主催 49回 星雲賞ノンフィクションを受賞。近著は化学の生化学の入門を楽しいキャラで学べる「毒物ずかん」(化学同人)、アリエナイ理科ノ大事典(三才ブックス)薬理凶室名義 などがある。現在週刊少年ジャンプ連載中の「Dr.STONE」では科学監修を務める。

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