シマウマ、キリン、ヒョウ、熱帯魚から鯖まで生物は縦縞・網目・ドットといった様々な美しいパターン模様を有する。
実は一見異なるこの3つの模様は共通の数式で説明されるのだ。
シマウマの模様を巡る論争
生物の模様については、1952年にコンピューターの原点を作り出し、第二次世界大戦の際にはドイツの暗号エニグマを読解したイギリスの天才数学者Alan Turing氏が数式を提唱している。
発表当初は生物学者からの支持もあったが、模様は波であり一定の形式を保つために次第に変化するという考えは、証明する実験が困難であること、模様が波であることや異なる模様が統一の式で示されるという昔では想像し難い理論であったこともあり、ごく一部の支持者を除き天才数学者Alan Turing氏の数式は真実ではないとされてきた。

転機はAlan Turing氏が数式を発表した40年後に訪れる。
日本の生物学者近藤滋氏(現大阪大学教授)がスイス留学中にAlan Turing氏の理論を知り興味をもったのだ。彼は研究の傍動物園や水族館にを巡り、最終的にで自宅でタテジマキンチャクダイを飼育し、模様が一定のパターンで変化すること即ちAlan Turing氏の数式が実在することを証明したのだ。

近藤滋氏が証明したAlan Turingの数式、Turingパターンは世界中を虜にし、1995年には彼の成果は世界的に有名なNatureの表紙を飾り、Turingパターンは40年もの時を超え注目を浴びるようになったのだ。
生物の模様の原理とは?
では実際にどのような原理で模様は出来ているのだろうか。
2つの色の成分は近くでは互いを排除、遠くでは増殖を促進する性質がある。そのため、黄色と黒を例にとると黄色が多くなると同じ場所で黒は少なくなるが、一つ隣のエリアの黒は増殖効果で多くなる。黒が多い場所では黄色は少なくなるが、また一つ隣のエリアでは黄色が多く黒は少なくなるという交互にピークをもつ波のようにパターンを形成する。
この時、色の成分が相手を増殖する作用が弱いと模様はドットになるが、強くなるにつれてドットが繋がり線になる。またさらに強くなると線が繋がり、逆ドットになるのだ。
白ドットと黒ドットの子供は○○○模様!?
では黒地に白ドットの魚と白地に黒ドットの魚の子供はどんな模様になるのだろうか?

答えはなんと縞模様なのだ。
先ほどの原理を思い出そう。白ドットと黒ドットは色の成分の増殖作用が弱いものと強いものの組み合わせであり、縞模様はその中間となるためである。
なんとも不思議な生物の模様の世界
私たちが見ている世界は想像以上に計算されたものなのかも知れない。それに気づくかどうかは自分次第なのだろう。
池田あやか
*Discovery認定コントリビューター
科学・アート好きの薬剤師。大学では主に超分子化学を専攻。科学の面白さを伝えようと、仕事の傍見て楽しい・触って楽しい科学イベントやサイエンスライターをしている。最近のお気に入りはモルフォ蝶の羽の構造色を利用したピアス。