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ネコはドブネズミ退治には無能だった…ガッカリする研究結果、明らかに

ニューヨーク市内でネズミの実地調査に踏み込むのは、なかなか勇気のいることだ。

なにしろ、コロンビア大学のアワーバック教授が2014年に行った統計調査によれば、ニューヨークの地下には少なくとも200万匹のドブネズミがうじゃうじゃ住んでいると推定されている。

しかも、ふつうのドブネズミではない。頭胴長30センチ、体重300グラムを超える巨体に育つ上に、恐ろしい繁殖力とすばらしい知恵を兼ね備えているという。

新しい物事に対して嫌悪感を示すドブネズミは、毒入りの餌や、人間がしかけた罠にはひっかからない。40~50匹の群れで行動し、人目と日の目を徹底的に避け、人間の攻撃をかわしながら160年あまりも生き延びてきた。

ドブネズミが媒介する伝染病を恐れるあまり、ニューヨーク市民はなんとか駆除したいと願っているものの、有効な手立てがないまま植民地時代から共存を余儀なくされてきた。

 

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そんな中、ドブネズミの生態について研究を重ねているフォーダム大学の客員研究員、パーソンズ博士(Michael H. Parsons)が、ニューヨーク市内でドブネズミを観察させてもらえる場所を探し始めた。当初はなかなか受け入れてくれる施設がなく、大変苦労したという。

それもそのはず、パーソンズ博士は生きているドブネズミの生態に迫りたかったのだが、土地の所有者は死んでいるドブネズミにしか興味を示さなかったのだ。

ブルックリン区内のごみ収集施設が、やっとパーソンズ博士の研究を受け入れてくれた。そこで、博士の研究チームははりきってモーションセンサーつきのカメラを施設内に設置し、ドブネズミにマイクロチップを埋め込み、さらにネズミフェロモンを蒔いて、その生態を観察しようと試みた。

ところが、である。5匹から7匹ぐらいの野良ネコがうろつくようになってしまった。パーソンズ博士いわく、おそらくネズミフェロモンに反応して集まってきてしまったとのこと。これでは、自然な状態でのドブネズミの観察はできない。

パーソンズ博士は大胆な発想のもと、研究の主旨をガラリと変えて、野生のネコたちがどのようにドブネズミを狩るかを観察してみた。その結果、カメラがとらえた映像は、見事に予想を裏切るものだった。

なにしろ、ネコたちはまったくといっていいほどドブネズミに興味を示さなかったのだ。

2017年12月27日から2018年5月28日までに2台のカメラが捉えた映像のうち、ネコとネズミが同じフレームに納まっているもの306本を分析。そのうち、ネコがネズミを見事に捕らえたケースはたったの2件しかなかった。捕らえようとしたが逃げられたケースが1件、またネズミを狙ったが殺害には至らなかったケースが20件あったという。

 

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この結果に驚かなかったのは、ドブネズミの専門家たちだ。ドブネズミは、ネコが食するにはリスクが大きすぎるため、よっぽどお腹が空いていない限りは捕食の対象にはならないらしいのだ。

むしろ、野良ネコの標的になりがちなのはもっとちいさなハツカネズミや、野鳥だという。ましてや、都会ではゴミが山のようにあるし、ネコ好きな人間もたくさん住んでいるので、餌だってもらえる。わざわざ危険をおかしてまで、巨大で狂暴なドブネズミを狙う必要はない。なんと、おなじゴミの山を、野良ネコとドブネズミが同時に漁っているなんて話もあるそうだ。

ネズミ退治にはとにかくネコが有効と考えられてきたのは、都市伝説だったか?

The Atlanticによれば、ニューヨーク同様にドブネズミの侵略に悩まされているシカゴ、ロサンゼルスやワシントンでは、ネズミ駆除のために野良猫を駆り出す政策をそれぞれ打ち出している。イギリスの首相官邸ではネコ議員のラリーくん(推定11歳、♂)が内閣府に雇われてネズミを狩る役目を仰せつかっているが、果たしてその仕事ぶりやいかに…?

Credit: Her Majesty’s Government via Wikimedia Commons

ラリーくんの首をつなぐためにも、今度はネコがネズミをやっつける武勇伝を見てみたい。

 

山田 ちとら

*Discovery認定コントリビューター

日英バイリンガルライター。主に自然科学系の記事を執筆するかたわら、幅広いテーマの取材やインタビューにも挑戦中。根っからの植物好きだが、大学ではどうしても有機化学を克服できずに植物学専攻を断念。あきらめきれず、民族植物学を志してネパールへ留学したのがきっかけとなり、文化人類学に鞍替えした。それ以来、文系の道をひた走っている。どっちかというと、犬派。 https://chitrayamada.com/

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