カラスはかつて神の使いだった…その驚くべき知能とは?攻撃された時の対処法は?

その漆黒の翼ゆえ、またはその不気味な鳴き声ゆえに、とかく不吉な印象が付きまとうカラス。ゴミを荒らされた日には嫌悪感しか抱けないが、そんなマイナスなイメージは現代ならでは。その昔、カラスは神に近い鳥として崇められていたという。

ギリシア神話のアポロンの使いとして、またはエジプトの太陽神、ラーの使いとして…。カラスは、神々と人とをつなぐ重要なメッセンジャーと見なされていた。古代の人々にとって、太陽の位置をたよりに帰巣するカラスの群れは、あたかも沈む夕日に向かって飛んでいるように見えたために、太陽神と結びつけられたのかもしれない。

または、鳥葬によって死者を送り出していた人々にとって、肉食性であるカラスは猛禽類とならんで死者の魂を神々の元へ送る大切な役目を果たしていたために、神聖化されたのかもしれない。

人に信仰を、あるいは対照的に畏怖の念を抱かせる理由は、カラスの賢さにあった。

 

Credit: zoosnow / Pixabay

 

カラスは鳥類きっての知能派

カラス科の鳥たちは、鳥類の中で最も知能が発達していると言われている。

日本で一般的に見られるカラスは、ハシブトガラスとハシボソガラスの2種。どちらも人間の顔を覚える能力に優れ、一度顔を覚えたら少なくとも1年、一説には生涯にわたって忘れないという。顔の特徴と共に、その顔と接した時に感じた快、もしくは不快な感情をも記憶する能力は、人間の記憶力にも匹敵しているという研究結果もある。

自分では割れない固い木の実や貝がらを、車や飛行機などの乗り物に轢かせて中身にありつく行動は、他の鳥類に類を見ない。また、道具を使って餌を手に入れる工夫ができることは、多くの学術研究で証明されている。たとえば、水差しの中に浮いた餌を拾うために、小石を沈めて水位を上げるという芸当もやってのけるという。

そんなカラスたちにとって、ピクニックテーブルからお菓子の箱やタッパーウェアをくすねて、あとでくちばしと足とを器用に使ってこじ開けてしまうことぐらい、いとも簡単だろう。現に、筆者はもなかアイスの入った袋を器用に裂いて、中身を食べているカラスに遭遇したことがある。

 

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カラスには、情報を伝え合う能力もある。カラスの弔いを研究のテーマとしているワシントン大学に所属する研究員、スウィフト氏(Kaeli Swift)は、カラスが死ぬとそのまわりに仲間が集う現象を不思議に思った。悲しいからとか、その死肉を喰らうからとか、諸説が唱えられていた。しかし調査の結果、死んだカラスの死因を特定することで、仲間のカラスたちが将来危険を回避するために学習していたことが判明したのだ。

計画性、社会性、人間の個体認識、仲間同士のコミュニケーションスキル…それらに加えて、カラスにはすべり台を滑ったり、雪山でソリを楽しんだり、光物を収集するといった生存には直接関係ない遊戯や娯楽行動も見られるそうだ。賢いならではの、人生の楽しみ方を心得ているのだろうか。

 

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カラスと人間が衝突するとき

そんな賢いカラスと人間がぶつかり合う時もある。これは筆者の個人的なホラーストーリーだ。

ある春の朝、筆者は耳にイヤホンを突っ込んだまま軽快に自転車を走らせていた。ケヤキの大木のふもとを通過したときだ。突然、背後に「バサバサッ」というものすごい羽音を聞き、直後に後頭部に鋭い痛みが走った。なんと、カラスが頭に渾身の蹴りを入れてきたのだ。

4月から7月にはカラスが繁殖期を迎え、もっとも神経質になる時期だという。卵やヒナを守ろうとする本能は、時に逸脱した攻撃性を生む。

 

衝突を避けるには

カラスとの衝突を避けるためには、むやみに近づかないことだ。小樽市のホームページによれば、カラスの警戒域は約40から50メートルとある。子育ての時期にはこれ以上の距離を置き、またカラスの行動を注意深く観察して危険を回避したい。

威嚇行動は段階的になることが多く、最初は威嚇鳴きや警戒声を発する。それでも人間が立ち退かない場合、頭をかすめる低さで飛んだり、枝を折ったり、低く激しい鳴き声を発するそうだ。最終手段として背後から後頭部を攻撃してくるため、傘をさしたり、帽子やヘルメットをかぶるのも有効な防御手段だ。

WeatherNewsによれば、傘などがない場合、両腕をまっすぐ上げて「バンザイ」のポーズをとることでカラスの飛行を妨げ、バックアタックを防げるそうだ。

 

カラスと共存していくために

もともとは森や林に住んでいたカラスのすみかを人間が徐々に奪いつつある中、このような衝突が増えてきている。

最近では電柱や送電塔に営巣するカラスが増え、針金製の衣類ハンガーを巣材に使って電気系統のショートの原因を作ってしまうケースも後をたたないそうだ。

Credit: 墨田区ホームページ

 

すみかを奪われたカラスを町に呼び込んでいるのは、放置されたゴミだ。餌場がある限り、カラスは集まってくる。ゴミをきちんと管理して、餌付けさえしなければ、無用な衝突は避けられる。

カラスが神の使いと崇められていた日々は終わった。だが、現代科学がカラスの高い知能を解き明かすとともに、わたしたちも賢くなって、カラスとうまく付き合っていく術を考え出していかなければならない。

 

山田 ちとら

*Discovery認定コントリビューター

日英バイリンガルライター。主に自然科学系の記事を執筆するかたわら、幅広いテーマの取材やインタビューにも挑戦中。根っからの植物好きだが、大学ではどうしても有機化学を克服できずに植物学専攻を断念。あきらめきれず、民族植物学を志してネパールへ留学したのがきっかけとなり、文化人類学に鞍替えした。それ以来、文系の道をひた走っている。カラ類の鳥が好き。 https://chitrayamada.com/