アメリカに占星術ブームが到来…ストレスと不安の対処法としてデジタル世代に人気

今、アメリカで西洋占星術が空前のブームだ。

年齢でいうと20代前半から40代前半にかけてのいわゆるミレニアル世代とX世代を中心に、ネット界を揺るがす大きな反響を呼んでいるとThe Atlanticのベック記者がレポートしている。星座占いを運営するインターネットサイトのアクセス量はこの5年ほどで大幅に増えており、その人気にあやかる書籍も続々と出版されている。

1960年代~70年代に起きたニューエイジ運動の再到来とも言われ、西洋占星術とともにタロット占いやクリスタルヒーリング、クリスタルボールの共鳴を楽しむ音浴(サウンドバス)なども人気だという。

Credit: Kira auf der Heide / Unsplash

 

アメリカ心理学会の調査によれば、ミレニアル世代とX世代は、年齢が上の世代と比べてストレスを感じやすいそうだ。加えて、2016年以降の政治的な波乱もストレスの原因となっているようで、アメリカの行く末に不安を感じている人が今や過半数を超えている。

ストレスと、将来に対する不安――このふたつの要素が、星座占いを魅力的なストレス対処メカニズムに仕立て上げているようだ。検索すればなんでも答えが見つかるインターネットに飽きてしまったデジタル世代が、「星の導き」というグレーゾーンに魅かれるのはなぜか。

 

「非科学的」な占星術

そもそも西洋占星術とは?

ざっくり言えば、生まれた時間によって定められる「黄道12宮」が、太陽と月、太陽系内の惑星からどのような影響を受けるかを読み解くことで、人の過去・現在・未来にパターンを見出す方法で、古代バビロニアが発祥とされる。

地球は1日に1回自転しながら、太陽のまわりを1年かけてひとめぐりしている。しかし見かけでいうと、あたかも太陽が地球のまわりを1日に1回周回し、また地球から夜空に見える星座が一年かけてひとめぐりしているように見える。

太陽が空を横切っていく軌道を「黄道」といい、星座占いでおなじみの「うお座」や「おひつじ座」などの12の誕生星座はこの黄道沿いに位置している。黄道12宮は、これらの誕生星座から名前をとって作り出された人工的な標識で、地球を中心にそれぞれ30度ずつの方角を表しているので、厳密にいうと実際の誕生星座の位置とはズレている。

というのも、誕生星座がキレイに30度ずつ黄道沿いに並んでいるわけではないからだ。星座によってはおとめ座のように大きな面積を占めるものもあれば、さそり座のようにちょっとだけしか黄道にかかっていないものもある。さらにLive Scienceによれば、厳密にいうと黄道にかかる星座は全部で22もあるそうだ。

Credit: darkmoon1968 / Pixabay

 

かつて話題をさらった「13番目の誕生星座」へびつかい座も、ある日突然夜空に現れたのではなく、もともとずっとさそり座の側にあった。360度をキレイに分割するには、12という数がちょうどよかったので、赤々と夜空に映える一等星アンタレスを有するさそり座が選ばれ、地味なへびつかい座は含まれなかったというわけだ。

さらに、西洋占星術.comによれば、「歳差」と呼ばれる地球の自転のブレにより、黄道12宮が定められた約2000年前と比べて現在の黄道12宮とそれに対応する誕生星座の位置は星座ひとつ前にズレてしまっているそうだ。だから、現代の9月の空に輝く太陽はおとめ座ではなく、しし座付近に位置している。でも黄道12宮でいえば、9月生まれはおとめ座から由来する処女宮だ。

生まれた月に定められた12宮には、それぞれ独特の性格が備わっていると言われるものの、科学的な根拠はない。

 

星座占いと人種差別の類似点

「しし座は傲慢」、「てんびん座は優柔不断」…ネットを探せばどんどん出てくる星座にまつわるステレオタイプは、あまりにもアメリカ文化に浸透しているため、ネコの種類からフライドポテトまで、あらゆる事象を分類するのに使われたりもする。

アメリカだけではない。Live Scienceによると、中国では「さそり座とおとめ座はお断り」なる人材募集の広告が堂々と発表されたほか、オーストリアでは営業職に募集する条件として「20歳以上でいずれかの誕生星座を持つ者のみ:やぎ座、おうし座、みずがめ座、おひつじ座としし座」と指定したケースがあるそうだ。

Credit: Homestage / Pixabay

 

生まれた時刻と場所によって人の性格や気性を決めつけてしまうのは、人種差別となんら変わらない。しかし、人種、年齢や性別による差別は法で禁じられているものの、星座占いによる差別は明確に法律で定められていないため、オーストリアの一件は違法とは見なされなかったようだ。

 

信じる者は救われる

しかし占星術の本来の目的は、12宮によって性格判断するのではなく、太陽系の惑星の動きを把握し、それらがどのように12宮に影響をもたらしているかを読み解くことにある。

人間は、みな物語を紡いで生きている。宇宙という壮大なスケールの物語を通じて自分の人生を理解する試みは、少なからずも信じること、ゆだねることが必要になってくる。

幸運を呼ぶ木星の影響を受け始める12月から、運気が上昇するでしょう――と星座占いに書かれていたら、信じて善処するか、または自分に関係ないことと切り捨てるか。

非科学的だとわかっていながらも、あえて科学では証明できない、白黒がつけられない現実と向き合うために、星座占いを利用しているデジタル世代が、今のアメリカの占星術ブームの火付け役だと言えるだろう。

現実と非現実を織り交ぜた世界という点では、占星術も、インターネットも同じだ。ビッグデータ、情報システム、無限につながるSNSの世界…そういうものに疲れてしまった人にとって、星座占いはあえてうやむやが許される、ほっとする環境なのかもしれない。

 

Credit: Madara Parma / Unsplash

 

山田ちとら

*Discovery認定コントリビューター

日英バイリンガルライター。主に自然科学系の記事を執筆するかたわら、幅広いテーマの取材とインタビューにも挑戦している。大学時代に断崖絶壁に咲く青いケシの花に憧れてネパールへ留学するも、ケシを見つけられないどころかトレッキング中トラブルばかりに見舞われて結局植物学から文化人類学へ転向。人間と自然の相互作用が研究テーマ。https://chitrayamada.com/