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平和の象徴とはうらはらな、知らざれるハトの実態

都会に暮らす人々にとって、一番身近に感じられる鳥は「ハト」ではないだろうか。

駅前の広場、公園の水たまり、マンションの屋上に至るまで、あらゆる場所に我が物顔でのさばっているごく平凡な「ハト」ではあるが、その実態は海外から日本に持ち込まれた外来種である。

国立環境研究所が管理する「侵入生物データベース」によれば、日本の侵略的外来種ワースト100に堂々ランクインしている「ハト」…その知らざれる素顔とは。

 

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同じハトでもいろいろな呼び名

上の画像のように、背から上胸にかけて金属光沢のある緑と紫の美しい羽毛が特徴のカワラバト(Columba livia)は、今からざっと1,500年も昔の大和・飛鳥時代に中国大陸から持ち込まれたと考えられている。

もともとはアフリカ北部、中近東、中央アジアなどの乾燥地帯に生息する鳥だったが、人に馴れやすいため食用とされたほか、家禽化されてブリーディングが行われ、飛鳥時代には供養の儀式などに使われた記録が残っている。

また、カワラバトが持つ強い帰巣本能が着目され、伝書鳩として大きな役割を課せられるように。そのうち、伝書鳩として大切に飼われていたカワラバトの一部が野生化し、日本の野山を住処とするようになると、「ドバト」という別の名前で呼ばれるようにもなった。

カワラバト、デンショバト、ドバト…つまりはすべてが同じハトなのである。

 

ドバトの全国制覇

さて、当のハトたちは何と呼ばれようと一向にお構いなしだ。日本で野生化したドバトは、その勢力をどんどん拡大していき、今では島しょ域を含むほぼ全国でその圧倒的な存在感を見せつけている。

もともと1回の産卵につき2つの卵を産み、年に3回以上(多い場合は7回も!)産卵する驚くべき繁殖力を持つドバトだが、他にも大繁殖につながった要因がふたつある。

ひとつは、デンショバトとして活躍していた時代の名残りで、狩猟が禁じられていること。「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」に守られているため、いかに民家に侵入しようとも一般市民が意図的に殺傷することが禁じられている。ちなみに、ドバトによく似たキジバト(下の画像を参照)は、あいにく狩猟の対象となっている。

 

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実際ドバトにベランダや軒先を乗っ取られた人にとっては、非常に歯がゆい現状だ。

ドバトの原種であるカワラバトは、もともと高い岩場に営巣していたため、今でもひさしの下、ベランダ、橋梁など、雨の当たらない高層建築物の中で営巣することを好む。最近ではソーラーパネルと屋根との隙間や、エアコンの室外機と壁との隙間、電信柱、換気扇、あげくの果てには自転車のかごやサドルにまで巣を作ってしまうことが報告されている。

一度巣を作ったら、もともと帰巣本能が強いドバトのこと。追い払ってもなかなか立ち去ってくれないどころか、何度も同じところで巣を作ろうとするそうだ。

 

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餌付けはNG

ドバトを増やしてしまっているもうひとつの理由は安易な餌付けだ。

公園などでハトにエサをまいている光景は一見ほほえましくも見えるが、じつはハトの異常な繁殖につながり、また衛生面でも大きなリスクを冒しているので絶対にやめたほうがいい。

 

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ドバトのフンはオウム病とクリプトコッカス病などを媒介する。国立感染症研究所によれば、ドバトのオウム病の保菌率は20%程度と高く、特に免疫力の弱い子どもや年配の方は充分な注意が必要だ。

 

ハトのフンにまつわる鳥ビア

ドバトのフンの脅威はまだある。日本ハト対策センターによれば、ハトのフンには酸性分が含まれているため、長い間放置しておくと金属を腐食させるそうだ。海外ではハトのフンが原因で、橋の鉄骨の腐食が進んで崩落事故を招いたという事例もあるとか…。

 

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ところで、ドバトのフンまみれになった哀れな銅像をよく見かけるが、金沢市の兼六園にあるヤマトタケルノミコト像には不思議とハトが寄りつかないそうだ。

科学者の探求心を活かし、この実態を調査した金沢大学名誉教授の廣瀬幸雄氏は、なんとヤマトタケルノミコト像に含まれるヒ素の割合いが多いためにハトが寄りつかないことを突き止め、2003年度のイグノーベル賞を受賞している。

ハトがなぜヒ素を敬遠するのかはわかっていない。ヒ素を多量に含ませた金属を使えば鳩対策にもなるのだろうが、毒物だけに、なかなか実用には至っていないそうだ。

 

山田ちとら

*Discovery認定コントリビューター

日英バイリンガルライター。主に自然科学系の記事を執筆するかたわら、幅広いテーマの取材とインタビューにも挑戦している。大学時代に断崖絶壁に咲く青いケシの花に憧れてネパールへ留学するも、ケシを見つけられないどころかトレッキング中トラブルばかりに見舞われて結局植物学から文化人類学へ転向。人間と自然の相互作用が研究テーマ。https://chitrayamada.com/

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