ビクトリア女王も愛した森の宝石の正体とは…モルフォ蝶の色彩原理

森の宝石と呼ばれ、その美しさから世代を超えて装飾品としても用いられてきたモルフォ蝶をご存知だろうか。

19世紀初頭、その美しさに魅了されたイギリスのヴィクトリア女王はモルフォ蝶の羽を使用したジュエリーを多くの職人に作らせており、現代でも美術館等では貴重な装飾品をみることができる。なぜモルフォ蝶はこんなにも綺麗な色を示すのだろうか。

 

色とは

アルバム『Dark side of the moon』カバー Credit: Pink Floyd

厚みのあるガラスを通る光が虹色になっているのを見たことはないだろうか。このように無色にみえる光は実は多彩な色を含んでおり、光の波長により異なる色を示す。青色の色素は青以外の光を吸収することで、青の光のみが反射され色を示しているのだ。このように我々は特定の光を色と認識しているのである。

 

モルフォ蝶の色の原理

ここでモルフォ蝶をみていただきたい。ご覧の通り単一の青色でないことがわかる。モルフォ蝶は色素とは異なりチョウの羽そのものは褐色であるにも関わらず、光が当たるとコバルトブルーに輝きを放つ。実は、羽表面の微細構造がこの輝きを作り出しているのだ。羽の表面には溝があり、溝の中にはヒダが存在する。そのヒダの間隔は、約0.0002mmと青色の波長のみを強調するのに最適な構造となっていることからこのような色が生み出されている。

Credit: Creative Commons

現代も我々を魅了すモルフォブルー

色素ではなく、羽の凹凸による光の反射により色彩を出しているため、構造に異変がない限り永遠に綺麗な色彩を楽しむことができる。この技術を応用し、モルフォテックスと呼ばれる繊維の開発も進んでいる。

さらには今年4月トヨタはレクサスの国内における累計販売台数50万台を達成を記念して、レクサスはフラッグシップ・クーペLCにStructural Blueという特別仕様車を設定している。残念ながら今年7月で販売は終了となっているが、このStructural Blueこそトヨタが15年の開発期間を得て世に送り出したモルフォ蝶の色彩原理を活用した塗料を活用した車なのだ。

モルフォ蝶だけじゃない我々を虜にする昆虫

このような色彩を放つのはモルフォ蝶だけではない。ベルギーブリュッセル宮殿にある鏡の間をご覧いただこう。2002年にベルギーの芸術家Jan Fabureにより作成された”Heaven of Delight”というこの作品。みるものの心を奪うような見事なゴバルトブルーの天井はなんと160万匹のタマムシの羽でできているのだ。
たかが昆虫、されど昆虫。自然が作り上げてきて美しさは私たちを魅了し続けるのだろう。

 

池田あやか

*Discovery認定コントリビューター

科学・アート好きの薬剤師。大学では主に超分子化学を専攻。科学の面白さを伝えようと、仕事の傍見て楽しい・触って楽しい科学イベントやサイエンスライターをしている。最近のお気に入りはモルフォ蝶の羽の構造色を利用したピアス。