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火山の力で誕生したワイン…「ヴォルカニック・ワイン」は新たなブランド化なるか

火山性の土壌で栽培した葡萄を原料とするワイン、通称「ヴォルカニック・ワイン」が国際的な注目を集めている。

カリフォルニアやスペイン、イタリアで知名度の高いワインの中には、こうした「火山のふもと」で生まれたものが多い。世界的に注目される「ヴォルカニック・ワイン」の特徴を探ってみよう。

 

世界的な気候の変化にも対応できるか、保水性が高い火山性の土壌

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2018年2月、フランスのボルドーにあるワイン科学研究所は、葡萄の木が想像以上に干ばつに強かったという研究結果『サイエンス・アドバンシス』を発表した。世界的な干ばつの影響により、農業のための淡水資源の確保が将来的に難しくなるといわれる昨今、とくに栽培に細心の注意が必要な葡萄の木が生き残れるのかを懸念していた関係者には朗報であった。

こうした中で注目される「ヴォルカニック・ワイン」は、火山性の土壌で栽培される葡萄を原料としているのが特徴だ。火山性の土壌は、ミクロ細孔率が高く含水量が多い。ゆっくりと水分を蓄え、時間をかけて土壌の外にその水分を放出する。つまり、降雨量が少ない時期に土壌自体が重要な貯水池の役割を果たしてくれるのである。

さらに、土壌ガスをはじめとする火山性土壌のミネラルを、葡萄の根は積極的に吸収し成長することが判明している。火山岩は、農作物の重要な栄養素であるリン酸塩の吸収率が85%から99パーセント。抜群の排水能力と自然富栄養化で、葡萄の栽培には鬼に金棒というわけだ。

もちろん、火山灰の質によってはこうしたメリットばかりではない。例えば、軽石を多く含む土壌は吸水力が低く、葡萄だけではなくあらゆる農作物の栽培に適さない。しかし、ミネラル分が通常の土地よりも豊富な火山のふもとで生まれたワインは、独特の味わいがあるといわれ人気が上昇している。

 

ナパ・ヴァレーもサントリーニ島も、そして「キリストの涙」も!

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このブームのきっかけとなったのは、マスターソムリエであるジョン・スサボが2016年に出版したその名もずばり『ヴォルカニック・ワイン(Volcanic Wines: Salt, Grit and Power)』である。2018年3月には、スサボ氏の主導で世界で初めての「ヴォルカニック・ワイン」のコンベンションがニューヨークで開催された。

火山と地震が多いイタリアやギリシアのサントリーニ島が、このブームに乗る。外国人にその意気な名前でウケる「キリストの涙(ラクリマ・クリスティ)」は、ポンペイの遺跡で有名なヴェスビオ火山のふもとが故郷である。

その他、数々の高価な銘柄を生み出すカリフォルニアのナパ・ヴァレー、ドイツのカイザーシュトゥール、スペインのリアス・バイシャス、イスラエルとシリア国境にあるゴラン高原、オーストラリアのヤラ・ヴァレー、2018年7月にユネスコの世界遺産に認定されたフランスのピュイ・ド・ドームなど、火山上の土壌を持つ葡萄の栽培地には枚挙にいとまがない。

 

活火山のふもとで生産されるというドラマ性

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トスカーナのカリスマと呼ばれる醸造家アンドレア・フランケッティは、2000年にシチリアのエトナ火山を訪問、その斜面で廃墟となっていた葡萄畑を見事によみがえらせるというドラマを起こし、ワイン界は大いに沸いた。

ヴォルカニック・ワインが生産されているのは、休火山やカルデラ湖周辺に多いのだが、まれにエトナ山のような活火山のふもとで栽培される葡萄もある。ギリシアのサントリーニ島も、この活火山の範疇にある。そのドラマ性も、魅力のひとつであろう。

その特殊性を科学的にも証明し、「ヴォルカニック・ワイン」というカテゴリーを定着させようというのが関係者が目標としているところだ。イタリアのヴォルカニック・ワイン生産者たちの中には、ローマ大学やフィレンツェ大学と協力し、栽培地の火山性土壌の検証を始めたワイナリーもある。

ヴォルカニックワイン、生産量はまだまだマイノリティながら今後もその名が注目されそうだ。

 

Sachiko Izawa

*Discovery認定コントリビューター

イタリア在住ライター。執筆分野は、アート、歴史、食文化、サイエンスなどなど。装丁が気に入った本は、とりあえず手に入れないと気持ちが落ち着かない書籍マニア。最近のひとめぼれは、『ルーカ・パチョーリの算数ゲーム』。@cucciola1007

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