魚にも、鳥にも、ビールにも、飲み水にも…私たちはすでにマイクロプラスチックに取り囲まれている

太平洋の中心に浮かぶプラスチックゴミの山、通称「ゴミベルト」の脅威は、以前もこちらでお伝えした。

ゴミベルトを調査するために、2009年に研究船『ニュー・ホライズン号』に乗船したチェルシー・ロッシュマン氏は、ゴミの量を推計するために海に浮ぶプラスチックゴミを目視で数える予定だった。ところが、いざゴミベルトにたどり着いた時、それは無理も同然だと気づいたとNPRに語っている。

あるはずだったプラスチックゴミの山が「なかった」のだ。

巨大な浮島を想像していたロッシュマン氏ら科学者たちを迎えたのは、紙吹雪のような細かいプラスチックが漂う海だった。プラスチックゴミが海に、生態系に、いかに悪影響を及ぼしているかを思い知った光景だったという。

Credit: A_Different_Perspective / Pixabay

 

マイクロプラスチックの拡散

プラスチックゴミは川から海へ、路上から土壌へと広がりつつあるが、そのほとんどは目に見えない。

1940年代以降、大量生産し続けられているプラスチックは、いままでの総生産量が80億トンに及ぶという。耐久性に優れ、化学的に不活性なため、捨てられてもそのままずっと残ってしまう。自然の力では分子レベルまで分解せず、より小さな破片に砕けていく。

直径5ミリ以下の小さな破片を「マイクロプラスチック」と呼ぶが、これらがどのぐらい食物連鎖の中に取り込まれているかはまだ充分研究されていない。

ロッシュマン氏はその後もトロント大学に所属する生態学者としてマイクロプラスチックを研究し続け、すでに10年の経歴を持つ。その間、彼女が目の当たりにしてきたマイクロプラスチックは、飲料水、ビール、海塩、鳥、魚、貝類、昆虫、毛虫…とあまりに幅広い。

「マイクロプラスチックを食べた魚を、私たちが食べているんです」とロッシュマン助教授はNPRに語っている。

 

細胞内に入りこむ極小プラスチック

腹におさまるだけではない。

軽くて暖かく、しかも安価なフリース素材を洗濯機で洗うと、その排水に抜け落ちたフリースの繊維が混ざるという。干した際には、空気中にも繊維が舞う。ロッシュマン助教授によれば、このフリース繊維は魚の細胞内からも発見されている。

プラスチックそのものは不活性だが、様々な種類のプラスチックを生成する過程で様々な種類の化学物質が使われている。マイクロプラスチックが分解するにつれて、これらの化学物質も環境に漏れ出している可能性が高い。

フリースの繊維やプラスチックからの化学物質が、動物や人間の細胞内に入り込んでしまった場合、どのような影響を及ぼすのかはまだわからないそうだ。

Credit: C. Yamada

 

百聞は一見に如かず

実際どれだけマイクロプラスチックが拡散しているのかを確かめたくなり、東京都を流れる一級河川を訪れた。

多摩川の支流である野川は、タナゴやドジョウなどの魚類のほか、カメ、カエル、ヌマエビ、タニシ、カワニナ、ザリガニなどの水生生物が棲息する豊かな水辺だ。護岸されていない部分も多いため、網を手にした子どもたちの嬌声が一年中響き渡る。

Credit: C. Yamada

そんな野川の一見清らかな流れにも、マイクロプラスチックが潜んでいるのだろうか。ガラスのビンを用意し、河原の砂利で半分まで満たして持ち帰り、ふるいにかけてみると…。

Credit: C. Yamada

意外なことに、目で確認できるだけでもたくさんのマイクロプラスチックが見つかった。

Credit: C. Yamada

浮かぶもの、沈むもの、漂うものと性質・形状もさまざま。目に見えないような極小プラスチックが含まれている可能性もある。

これらが野川の生き物の腹や細胞に入り込んでしまったとして、それらの生き物を食さない私たちにとっては関係ない…なんて思ってはいけない。自然の素晴らしく、また恐ろしいところは、すべてが巡り巡ってつながっていることなのだ。

お弁当用のプラスチックのピックはマイクロプラスチックとはいいがたいが、なんだか象徴的だと感じた。

 

山田ちとら

*Discovery認定コントリビューター

日英バイリンガルライター。主に自然科学系の記事を執筆するかたわら、幅広いテーマの取材とインタビューにも挑戦している。大学時代に断崖絶壁に咲く青いケシの花に憧れてネパールへ留学するも、ケシを見つけられないどころかトレッキング中トラブルばかりに見舞われて結局植物学から文化人類学へ転向。人間と自然の相互作用が研究テーマ。https://chitrayamada.com/