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小道具か、はたまた名優となり得るか…「AIロボット俳優」が銀幕を飾る日

人工知能を持ったロボットはこれまで映画の中で何度も描かれてきたが、その多くは人が演じたりCGに人間による声の演技を合わせたものであった。だが報道によれば、どうやら「人工知能ロボット俳優」が銀幕を飾る日も間もないようだ。

 

スター誕生?

Deadlineの報道によれば、『アメリカン・ヒストリーX』や『デタッチメント 優しい無関心』などの映画を監督したことで知られるトニー・キーが次回監督する映画『2nd Born』(原題)には人工知能ロボットが登場する。それもCGではなく、物理的に存在し、動き、演技をするロボットだという。

しかもこのロボットは、様々な演技法、演技技術を習得させられて役に挑むのだそうだ。

 

ロボットに演技はできるか?

Credit: Karl Gottlieb von Windisch, Public Domain

わざわざ冒頭で括弧付けで「人工知能ロボット俳優」としたのは、それが一般的に「AI」とか「人工知能」と呼ばれる類いのロボットとなるのは事実であろうが、現在の技術で真の意味での知能をもった人工的な存在が作られていないことから、現在企画進行中の映画にそのような真の「人工知能ロボット」が登場するのは無理であろうことからだ。

しかし、それがどれだけ計算機に毛が生えたような見せかけだけの人工知能を持ったロボットであったとしても、「演技」の定義を限定すれば、その役を上手く演じる可能性はある。演技とは、ある意味では自分自身の本当の姿では無いものを人に見せ、それを信じさせる技術である。この点において、現代のaiboやCozmoのようなロボットであれ、1700年代のオートマタ「トルコ人」や「消化するアヒル」であれ、それを見る者がそこに存在するもの以上の何かを信じるとすれば、それは成功した演技だと言えるだろう。無論、演技者に演じるという意思がないのであればそれは演技ではなくただ見る側による誤解に過ぎないと言うこともできるのだが。

加えて、幾らロボットが良い演技をしても、はたまた悪い演技をしても、映画の世界では編集という魔法の元ではそれをどうにでもごまかすことができるというのも事実である。

 

ロボットという名の小道具

『2nd Born』では全米俳優組合にもこのロボット俳優を認知してもらいたいとしている。今後多くのメディアで「AI/ロボットは役者の仕事まで奪うのか?」などといった記事が世を賑わすことだろうが、現状ではこれまで人間が行ってきた仕事を「奪う」ほどロボットが効率よくこの仕事をできるわけではなく、ロボットに演じてもらうことを念頭に置いて役が作られることだろう。そして「ロボットに演じてもらう」とは言っても、結局人間がロボットをプログラミングして指示して動かすのであればそれは俳優ではなく人の用いる道具の一部でしかない。

演劇の世界では2013年にジャパン・ソサエティーと国際交流基金プロデュースによる作品などで人間とロボットが「共演」しているが、それも結局は動き、台詞を再生するだけであり、演劇上の「見立て」の延長線上にある、キャラクター化された小道具と何ら変わりないものであった。それを俳優と呼ぶのは小道具が見立ての中で観客に露わにした人格性を指して俳優と呼ぶのと何ら変わりのない比喩的なものでしかないだろう。また視点を変えれば2012年の映画『ロボジー』が描くのはこのような映画や演劇での「ロボット」の見立ての風刺にも思える。だが、リプレゼンテーションの面においては、これまでロボットをエンターテイメント作品中で代表するのがもっぱら人間であったことを考えると、ロボットがロボットを演じるというのは興味深い進展だろう。

古くは『禁断の惑星』のロビー、最近では『A.I.』、『アンドリューNDR114』、『エクス・マキナ』などの作品でも映画の世界で知性を持ったロボットが描かれてきた。そのような作品を挙げれば切りがないが、ほとんどの作品では、人がロボットを演じたり、アニマトロニクスなどの特殊効果、更にはモーションキャプチャーなどを利用して人が演じたものをCGで置き換えたり、アニメーターによって動きをつけられたCGキャラクターに人の声を当てたりなどして表現されてきた。

Deadlineの報道が伝える「演技法を習得」という言葉からすると、映画『2nd Born』に登場するロボットはプログラムされたとおりに演じることしかできないただの機械よりは、学習から独自の「演技法」を作り上げてそれを行うものと考えられなくもない。その程度こそ「脚本家AI」Benjaminと同程度のものかもしれないが、自ら学び、その学習を生かして活躍するロボットがロボットを演じることになれば、リプレゼンテーションの点においてより正の関係に近くなるかもしれない。

…といろいろここまで書いてきたものの、『2nd Born』は今年公開される予定の『1st Born』の続編となるインディーコメディー映画であることも忘れてはならない。このことからは「人工知能ロボット」を俳優として起用するというのは、芸術/技術上の進歩を目指した作品としてのことではなく、これ自体がただのパブリシティー・スタントである可能性も十分あろう。パブリシティー・スタントとしては続編よりも未だ公開されていない1作目のための広報にも思えるが、果たしてどのようなものになるのかは気になるところである。

 

Yu Ando

*Discovery認定コントリビューター

フィンランド在住のライター。執筆分野は、エンタメ、ガジェット、サイエンスから、社会福祉やアートに文化、更にはオカルト系まで幅広い。ライター業の傍らアート活動も行っているほか、フィンランドや日本で両国の文化を紹介する講演を行うことも。
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