タックスヘイブンと環境問題の不都合な事実?研究で明らかに

税金が非常に低く機密性の高い租税回避地「タックスヘイヴン」と、環境に悪影響を与える業界との繋がりが新たな研究で指摘されている。この関連が明らかになったことで、地球環境の観点からもタックスヘイブンを考える必要性が出てきたかもしれない。

 

タックスヘイブンと環境問題

ジャーナルNature Ecology and Evolutionに8月13日に発表された研究では、タックスヘイブンと環境の関連性に光を当てている。

研究では公にされているデータベースを元にして、違法操業を行い拿捕された船舶がどこに登録されているのかが調べられている。すると、世界で登録されている全漁船25万超のうちタックスヘイブンに登録されている漁船は僅かに4%であるが、不法漁業に関わった209の漁船のうちの実に70%がタックスヘイブンに登録されていることが明らかになった。

また、ブラジルのアマゾン熱帯雨林地域では牛肉生産と大豆生産分野が森林伐採を引き起こしているが、これらの分野への海外からの投資に関しても、タックスヘイブンからの資金が使われていることが研究で明らかにされている。2000年10月から2011年8月にブラジルの牛肉と大豆関連の企業9社に行われた総額約269億ドルの海外からの投資のうち、68%である約184億ドルがタックスヘイブンを通じて行われたものであったのだ。企業によっては海外からの投資の90~100%がタックスヘイブンを通じたものであるところもあった。

不法漁業にせよ、牛肉生産にせよ、森林伐採にせよ、環境に大きな影響を与えることに変わりはない。このような不法漁業を守り、環境に害を与える業界に資金注入するというタックスヘイブンが環境に与える影響はしかし、長らく政策立案者から無視されてきたと今回の研究の主筆でありストックホルム大学の政治学者、スウェーデン王立科学アカデミーの上級学術研究員でもあるビクター・ガラズ(Victor Galaz)はNatureで語る。

 

タックスヘイブンと租税回避

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タックスヘイブンは国際的な競争に立たされている大企業にとって利用しない手はないという面もあるだろうが、その本質はやはり租税回避にあるだろう。違法である脱税とは違い、租税回避は違法ではないものの、売り上げを出した国に税金が納められないということは問題視されており、特にヨーロッパではタックスヘイブンを用いた租税回避を行っていた国際的な大企業が追徴課税を受けるケースが相次いでいる。

米Appleは2016年タックスヘイブンであるアイルランドでの税優遇を違法として最大130億ユーロの追徴課税を、米Amazonは事実上のタックスヘイブンとみなされているルクセンブルクで違法な税優遇を受けていたとして2017年10月に欧州委員会から約2億5000万ユーロの追徴課税を受けているし、米Googleもアイルランドで租税回避していることなどから、イギリスなどではこれを防止する「Google税」と呼ばれる迂回利益税が2015年より導入されている。(*これらの企業はあくまでもタックスヘイブンを利用し租税回避を行っているという例として提示しているものであり、先の研究に出てくる環境に悪影響を及ぼすタックスヘイブン利用者達がこれらの企業であるとするものではない。)

またタックスヘイブンはこのような租税回避の他にも、匿名性の高さから犯罪資金のマネーロンダリングに用いられるとの指摘があることも忘れるべきではないだろう。

 

共通するロジック

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研究から見えてくるのは、ローカル視点で利益循環の責任を持たない者は、グローバルな視点でも責任を感じていないということなのかもしれない。

ある国から利益を享受する者が、その利益を生んだ国を維持するため還元されるべき税金を、自らの利益の更なる拡大を目的に回避する…この租税回避行為を今回の研究で搾取される地球環境に重ね合わせても面白い。

地球という大きな一つの国から利益を享受する者が、利益を生んだ地球を維持するために還元することなく、私欲や利益の更なる拡大のために搾取する…少し大げさな比喩ではあるが、この還元なき一方的な搾取の結末はもちろん、搾取される側の国である地球の持続性の終焉であろう。

もちろん租税回避の場合を考えれば該当国にこそ直接利益は還元されないかもしれないが、企業の利益拡大により間接的な利益の還元がもたらされる可能性はある。しかし人間の経済活動よりもゆっくりとしたサイクルで循環する地球の自然環境において、計画性なき個の利益の追求で搾取される地球環境にそこから得た利益を循環させようとしても、果たして循環が間に合うだろうか?

環境問題の多くもこのような利己的なロジックにより生み出された、と言えば簡略化しすぎだろうが、まさに人の強欲から生み出される環境破壊と、その隠れ蓑となっているタックスヘイブンという構図が見えてきた今回の研究。このような研究がより注目を浴び、地球環境の持続性の観点からも世界的なタックスヘイブンの規制が行われるようになることが望まれる。

 

Yu Ando

*Discovery認定コントリビューター

フィンランド在住のライター。執筆分野は、エンタメ、ガジェット、サイエンスから、社会福祉やアートに文化、更にはオカルト系まで幅広い。ライター業の傍らアート活動も行っているほか、フィンランドや日本で両国の文化を紹介する講演を行うことも。
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