痛~い紙の切り傷、なかなか治らない科学的な理由とは

また、やっちゃった…。

油断している時にこそやってしまう、紙の切り傷。切った瞬間、目の覚めるような痛みが意識を貫く。

浅い傷なのになぜこんなにも痛いのか。そして完治するまでなぜ時間がかかってしまうのだろうか?テキサスA&M大学のガブリエル・ニール教授とユーチューブの「SciShow」が、この身近な不幸について詳しく解説している。

 

紙で切った傷はなぜ痛むのか

理由その①:紙で切りやすいのは指先、唇や舌(!)…など、いずれも体の中で敏感なパーツばかりだ。普段はその敏感さに頼って指や口で感じとっていることが多い分、ケガをするとそれだけ余計に痛みを感じることになる。手にケガを負った場合、脳は腕や足をケガした時より10倍も意識を向ける。意識を向けるということは、痛みがよりリアルに、より鮮明に感じられてしまう。

理由その②:指の表皮には「侵害受容器(nociceptor)」と呼ばれる特化した神経の束がたくさん張りめぐらされていて、圧力や温度などの刺激を感じとっている。紙で指の先を切ると、この侵害受容器に直接ダメージを与えることになってしまい、その刺激が痛みとなって脳に伝わる。

Credit: braetschit / Pixabay

 

理由その③:包丁などの鋭利な刃物と違い、紙の端はミクロ単位でギザギザしていてノコギリのように肌を破いてしまう。

理由その④:さらに、紙はもろいため、肌と接触すると破損して小さな破片を傷口の中に残してしまう。この破片から化学物質が溶け出して、表皮のさらに奥にある真皮を刺激するために傷が疼き続ける。

 

どうやったらなるべくはやく治せるか

なかなか治らないのは、普段の生活で指先や口を使っていることが多い分、傷が完全に癒えないうちにまた開いてしまうから。

しかも紙の傷は浅い。肌のもっとも外側にある表皮のみを傷つけ、その下にある血管までは至らない場合が多いので、出血を伴わない反面かさぶたもできにくい。傷口にふたをして守ってくれるメカニズムが働かないため雑菌も入りやすく、なかなか癒えない。

そこで、はやく治すのに欠かせないのが清潔に保つことだ。切ってしまったら、まずはせっけんを水で充分に泡立ててからやさしく傷口をすすごう。そのあとはしっかり傷口を乾かしてから、ばんそうこうを貼って保護しよう。

日常に溢れている紙でさえ、時にはケガのもとになる。どんなに慣れきった日常のタスクでも、ケガに発展するリスクを孕んでいるので油断は大敵だ。もっとも、口で直接封筒ののりを舐めるようなことはリスクが高すぎる。永遠にやめておいたほうがいいかもしれない。

 

山田ちとら

*Discovery認定コントリビューター

日英バイリンガルライター。主に自然科学系の記事を執筆するかたわら、幅広いテーマの取材とインタビューにも挑戦している。大学時代に断崖絶壁に咲く青いケシの花に憧れてネパールへ留学するも、ケシを見つけられないどころかトレッキング中トラブルばかりに見舞われて結局植物学から文化人類学へ転向。人間と自然の相互作用が研究テーマ。https://chitrayamada.com/