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【民間の力でISSへ】第1回:国際宇宙ステーションへの新移動手段

NASAは2018年8月3日(現地時間)、9人の新たな宇宙飛行士を発表した。従来の宇宙飛行士との違いは、彼らが民間企業により開発された宇宙船に搭乗すること。

NASAとスペースX社、ボーイング社によってすすめられてきたこの取り組みは、NASAの悲願と民間宇宙開発の新たな方針を象徴するものだ。

これまですすめられてきた民間主導の宇宙船開発の概要と、予測される未来の姿を追ってみよう。

 

宇宙飛行士の輸送手段がなくなったNASA

Image Credit: NASA

これまで、NASAは宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)へと輸送する手段として「スペースシャトル」を利用してきた。ところが想定を遥かに上回る運用コスト、そしてチャレンジャー号やコロンビア号の事故など複数の要因により、2011年のミッションを持ってスペースシャトル計画は終了した。

しかし、NASAにはISSに宇宙飛行士を送り届けるなんらかの手段が必要だ。そこで、同宇宙局はロシアの「ソユーズ」宇宙船の座席を購入することになる。「ソユーズ」ロケットによって打ち上げられるこの宇宙船の座席の価格は高額で、なによりもNASAの有人宇宙開発がロシアに依存する形になることはアメリカにとって極めて不本意だろう。

そんな背景があり、NASAは民間企業の宇宙船による宇宙飛行士の輸送計画「CCDev(Commercial Crew Development)」をスタートさせることになる。この契約企業として、スペースXとボーイングが選ばれたのだ。

 

宇宙開発の民間移譲を進めるNASA

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それにしも、なぜNASAはISSへの宇宙飛行士の輸送に独自の宇宙船を利用せず、民間開発の宇宙船を利用すると決定したのだろう。

実はNASAは、宇宙開発の民間企業への移譲を徐々に進めようとしている。採算が見込める事業なら、民間企業に任せたほうが効率的に運用できるのは世の常だ。例えばISS自体も、2024年以降の具体的な運用方針が決定されておらず、その後は一部、あるいは全体の民間企業への運用の移譲が検討されている。

 

一筋縄ではいかない宇宙船開発

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しかしながら、民間企業による宇宙船開発が順調に進んでいるわけではないのが難しいところだ。スペースXは宇宙船「クルー・ドラゴン」を、そしてボーイングは宇宙船「CST-100 スターライナー」を開発しているが、どちらも当初のスケジュールから大幅に延期されている。

さらに、宇宙船開発の遅れは別の問題も引き起こしている。それは、2019年末以降にNASAとロシアとのソユーズ使用に関する契約が切れ、NASAの宇宙飛行士がISSへと移動できなくなる、というリスクだ。現在のNASAと民間企業による宇宙船開発は、かなりギリギリなスケジュール感で移行しているのである。

塚本直樹

*Discovery認定コントリビューター

IT・宇宙・ドローンジャーナリスト/翻訳ライター。フリーランスとしてドイツを中心にヨーロッパにて活動しつつ、日本でのラジオ出演やテレビ、雑誌での解説も。 @tsukamoto_naoki

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